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「お前が指摘したように、リュウスは俺の魔力を回復させる役目を担っていてくれた。伴侶が見つかるまでの間の役目だと聞いた。王室の人間や貴族の一部は、国のために魔力を消耗する。魔力の補充は必要不可欠なことだった」
ショーンは弘海にも解るように、国のシステムを教えてくれた。
弘海が住んでいる世界とは、道徳観も違えば、魔法があるという時点で価値観も何もかもが違う。
そんなまったく違う国の話でも、丁寧に話してくれれば弘海でも何となくは理解できた。
「やがて俺は、魔力の補充のためにしていることは、本来なら自分が愛する伴侶とするものだと俺は知った。伴侶を見つけなければならないのだということは、幼い頃から聞かされていたから意識はしていたが……」
ショーンにとって性的なことは魔力の補充という必要不可欠な事情から始まった。
それが実は、愛情を伝え合うための手段であることを知ったとき、ショーンはきっと戸惑ったに違いないと弘海は思った。
「ある日、リュウスは魔力の補給をしている最中に、俺のことを好きだと言った。俺はその意味を考えた……俺はリュウスのことを好きなのか? 彼は伴侶となる相手なのか……答えは違った」
リュウスが聞いたら、また泣き出してしまいそうだと思うぐらいに、容赦のない言葉だった。
けれども、それがショーンの本心なのだろう。
「だったら何故、俺はリュウスとそういうことをしているのだろうかと疑問に思った。そんな時に父はそろそろ伴侶を探すように言った。貴族の子女や友好国の王室の息女などと会い、俺は真剣に伴侶を探した。けれども、それは見つからなかった……」
「それで……国を出たんだっけ?」
「そうだ。本当の伴侶に会いたい……その気持ちだけで、俺は各国を放浪した。気がつけば、まるで導かれるようにこの国にやって来ていた」
その相手が弘海なのだとショーンは言いたいのだろう。
けれども、弘海はショーンから目をそらせた。
「お前しかいないと思った。俺がこれまでそう思った相手は、お前しかいない」
「ショーン……でも俺は……」
弘海は言葉を選んだ。
ショーンがここまで真剣に話してくれたのだから、これまでのようにただ断るだけではいけないということは解っていた。
でも、なかなか言葉が出てこない。
さんざん迷った挙句に出てきた言葉は、やはりいつもと同じようなものだった。
「話は聞いたよ……でも、やっぱり俺は無理だ。ショーンの伴侶にはなれない……」
「理由を聞いてもいいか?」
詰め寄られて、弘海はさらに困ってしまう。
理由と言われても……。
弘海は少し考えて、ともかく頭の中に浮かんできた理由を口にした。
「だ、だって……ショーンは男だし……男との恋愛は……俺にはないと思ってるし……それに、ショーンには家族も認めた婚約者もいるわけだし……」
「どれもこれも、理由になってないな」
あっさりと否定され、弘海は思わずむっとする。
「ど、どうして!? 立派な理由だろ……どんな理由ったら満足してくれるんだよ?」
弘海が不機嫌に言い放っても、ショーンは特に顔色も変えず、じっと弘海の顔をのぞきこんできた。
「弘海は俺のことをどう思ってるんだ?」
「どうって……言われても……」
「男だとか、婚約者がいるとか、そんなことを理由にせずに、弘海の本当の気持ちが知りたい」
「俺は……」
弘海は言葉に詰まってしまった。
自分の気持ちが解らない。
ショーンがもし男でなかったら?
もしくは自分が男でなかったら?
ショーンに許婚がいなかったら?
弘海はショーンのことをどう思うのだろう……。
返事に時間をかければかけるほど、弘海はショーンのことを否定できなくなってしまう。
それは解っているのに、弘海は言葉が出てこなかった。
言葉が出てこない代わりに、涙が溢れてきた。
自分でも何故泣いているのか、理由がよく解らなかった。
「弘海……」
「ごめん……とにかく俺は駄目なんだ……ショーンは絶対にリュウスと一緒になったほうがいいと思う……いろんなことが違うし、俺には解らないこともたくさんあるし……俺には出来ないこともリュウスには出来るし……」
それではショーンが求めている答えにはならないことは解っていたが、他に言葉が出てこなかった。
「泣くのは卑怯だぞ」
笑い含みに言って、ショーンは弘海の体を抱きしめた。
「俺も少し焦っていた……悪かった」
何故だかショーンは謝り、弘海の背を優しく撫でてくる。
ともかくそれ以上の追求をされなかったので、弘海はホッとした。



リュウスが戻ってきたのは翌日、つまり元旦の昼前だった。
その頃にはもうショーンの熱もかなり下がり、弘海が作ったお粥を食べれるほどにまで回復していた。
久しぶりの弘海の料理を、ショーンは嬉しそうな様子で食べた。
病人用の薄味のお粥だから、それほど美味しいものではないだろうし、まだ熱も完全には下がっていないから、余計に味は感じられないはずなのに。
でも、そうやってショーンが自分の作ったものを美味しそうに食べてくれる様子は、弘海にとっては嬉しいことだった。
「おかえり、リュウス」
「ただいま……」
戻ってきたリュウスには、まだ笑顔が戻ってはいなかった。
とりあえず戻ってきたものの、まだ気持ちの整理はついていない状態なのかもしれない。
弘海自身も、ショーンからリュウスとの関係を打ち明けられ、どうリュウスと接していいのか解らなくなっていた。
ともかくつとめて普通に接するようには努力する。
「大丈夫? 外は寒かったんじゃない?」
「ええ……そうですね……雪が降ってました」
「そっか……あ、そうだ! 今日は元旦っていって、日本ではお正月なんだ。後で買い物に行ってくるから、俺が日本の正月料理を二人のために作るよ」
「ありがとうございます……買い物には僕もついていっていいですか?」
「あ、う、うん、もちろん……!」
ショーンと二人きりになりたくないのかな……と弘海は何となく思った。
ただ、リュウスと弘海が二人きりになることもこれまではなかったから、それはそれで少し不安だった。
(俺……ちゃんと話できるかな……)
一抹の不安を感じながらも、弘海は出かける支度をした。



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EDIT [2012/01/28 08:42] 猫目石のコンパス Comment:0
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