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「ショーンさま!? どうなさったんですか!?」
玄関の扉を開けると、まるで帰ってくるのが解っていたみたいに、リュウスが待っていた。
「熱が出たみたい……ちょっと寝かせるから……」
心配そうに見守るリュウスの横を通り抜け、ベッドにショーンを寝かせる。
ここへ来るまでに、かなり熱は高くなってしまったようだった。
幸い、明日から3日間は店が休みだから、何かあればすぐに病院に連れて行くことはできそうだが。
「とりあえず熱はかってみよう」
体温計を何とか口に咥えさせ、救急箱から解熱剤を取り出した。
「ショーンさまが熱を出すなんて……小さい頃から丈夫が取り得の人だったんですけど……」
「そうだろうなぁ……」
体格も立派だし、とても病気とは無縁そうだ。
ショーンの小さい頃を知らない弘海でも、彼が丈夫だというのは素直に理解できた。
「やはり……魔力が少なくなっていることが影響しているのかもしれません……」
リュウスの言葉に弘海は首をかしげた。
「魔力って……魔法を使えなくなるだけじゃないの? 少なくなると、他にも何か良くないことがあるの?」
「僕たちは魔力が十分に満たされ、体力気力も健康というのが普通の健康状態なんです。魔力がここまで減ってしまうまで放っておくということがまず考えられません。体力や気力の面での健康にも影響が出てきていると考えても不思議ではないと思います」
「じゃあ……これだけ熱が出たのも、魔力が影響してるってこと?」
「だと思います……」
「そっか……」
弘海は汗で濡れたショーンの顔や首筋をタオルで拭いながら、ふと思いついたことをリュウスに聞いてみた。
「え……えっと、ショーンとリュウスはその……ここへ来てからは何も? その補給とか……」
「はい……何もしてもらえません……ショーンさまは僕に触れようともしません……」
「そうなんだ……」
「僕が話をしようとしても、すぐに出かけてしまわれるし……一度、見るに見かねてせめて接吻をと思ったんですけど、それも拒絶されました……」
リュウスはもう泣き出しそうな顔になっている。
「国ではあんなに優しくしてくださったのに……」
リュウスのその言葉に、弘海はちょっと複雑な気分になった。
弘海の知らない二人の世界がある……それは解っていたことだけれども。
弘海は気を取り直すように、体温計を見た。
「うわ、酷いな……三十九度五分だって……明日病院に行ったほうがいいかもな……」
「ショーンさま……」
「病院とか……連れて行っても大丈夫かな?」
「大丈夫だと……思います。基本的な治療方法はそれほど変わらないと思いますから……」
「そうか……じゃあ、明日になっても熱が下がらなかったら病院に行ってみよう……」
弘海はキッチンで氷嚢を作り、ショーンの額に乗せた。
「薬飲ませたいけど……何も食べてないだろうしなぁ……」
解熱薬の説明書にも、必ず何かを胃に入れてから飲むようにと書いてある。
「あの……僕に看病させてもらえませんか?」
「え?」
リュウスの言葉に、弘海は顔を上げた。
「もう嫌だとか相手が違うとか言ってる場合ではないと思います。ショーンさまの魔力を少し回復させてみようと思います」
ショーンの体のことを考えれば、確かにリュウスに任せるのが一番だと思う。
なのに弘海は咄嗟にその場をリュウスに譲ることが出来なかった。
「弘海さんにはショーンさまを回復させることは出来ないでしょう? 代わって下さい」
「あ、ああ……」
「弘海さんは……少し離れていてもらえませんか?」
リュウスはそう言って、戸惑う弘海を押しのけるようにしてショーンの傍らに寄り添った。
弘海は見ているのも悪いと思ったので、リュウスが言った通り、二人から少し距離を取る形で離れた。
けれども、同じ部屋の中だから距離を取るといっても限界があるし、目はどうしても二人のほうを見てしまう。
「ショーンさま……」
いとおしそうにその名を呼び、リュウスはゆっくりと唇を重ねようとしたのだが……。
「……やめろ」
掠れた声で言って、ショーンは手でリュウスの顔を押し止めた。
寝ているとばかり思っていたショーンが目を開けたので、リュウスはもちろん、弘海も驚いた。
「ショーンさま……今はもう綺麗事を言っているような場合ではありません。どうか……僕に任せてください……」
「……必要ない」
「でも……」
「……余計なことをするな」
「ショーンさま……」
ショーンはまた苦しげに吐息を喘がせ、目を閉じた。
リュウスは体を震わせていた。
泣いているようだった。
好きで仕方がない相手に、ここまであからさまな拒絶を受ければショックを受けるのは当然のことだろう。
弘海はどうしていいか解らなかった。
リュウスは立ち上がり、玄関のほうに向かう。
「リュウス……どこ行くの?」
「すみません……ちょっと頭を冷やしてきます」
「でも、外は雪が降ってるよ……寒いし……それにこんな時間に外を歩いたりしたら危ないよ……」
「僕の心配はいりません。僕は魔力を自分で作ることが出来るので……寒いのも、危険なのもどうにか出来ます」
「そうなんだ?」
弘海は驚いたように目を見開く。
ショーンは頻繁に魔力を補給しないといけないし、かなり燃費だって悪いように弘海は思う。
けれども、リュウスは自給自足が出来るというのだろうか……。
「僕の家系は代々そうなんです。ただ、有り余る魔力を有効に国のために使うことは出来ません。だから、王家や貴族の方の魔力を安定させるために仕えてきたんです。僕は小さい頃からショーンさまの相手をするように育てられてきました」
「そっか……」
「ショーンさまが成人を向かえる前に、僕の役割は終わるはずでした……国でショーンさまがご自分に相応しい相手を見つければ……。けれども、ショーンさまは成人を前にしても、伴侶を見つけることが出来ませんでした……」
「それで……リュウスに伴侶になるように命令が?」
「はい……でも、僕はとても嬉しかった。本当はもっと長くショーンさまのお傍にいたいと思っていたので……。家にとっても名誉なことです。国王陛下のお言葉は絶対なので、いくらご子息のショーンさまとはいえ、本来なら従わなくてはなりません……でも……」
リュウスは言葉を途切れさせる。
ショーンは国を出て追いかけてきたリュウスを拒み続けているのだ。
「いったい僕の何が悪いのか……さっぱり解りません。でも、きっと何かが違うんでしょう……」
リュウスは寂しそうに微笑むと、そのまま部屋を出て行った。
複雑な気持ちでリュウスが出て行った扉を弘海は見つめていたが、ショーンのことを思い出して部屋に戻った。
「ショーン……大丈夫?」
弘海が名前を呼んでも、ショーンはもう目を覚まさなかった。
顔色は悪く、やはり苦しそうな様子だ。
弘海はベッドの傍らでショーンの看病を続けた。



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