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「リュウス……まだ戻ってこないな……」
魔法が使えるから心配はいらないと言っていたけれども、やはり少し心配になる。
時刻はもう日付が変わろうとしている。
今日は大晦日だから、今年が終わろうとしていることになる。
そんな日に高熱で倒れたショーンはかわいそうだなと弘海は思った。
(そういえば……ショーンと二人でこの部屋にいるのって久しぶりかも……)
リュウスが来てからは、店からマンションに戻るまでの間だけが、ショーンと二人きりの時間だった。
その間も取り立てて何か話をするわけでもなく、ただ一緒にいるだけだった。
ショーンは何故、毎日のように弘海を迎えに来ていたのだろう。
寒さは苦手のようだったし、いつも定時で帰れるとは限らない弘海だから、店から出てくる時間だってまちまちだ。
いったい何時間待つことになるのかも解らないのに、どうして毎日寒い思いをしてまで待っていてくれたのだろう……。
弘海は初めてショーンの気持ちを考えた。
リュウスの気持ちを考えろと、ショーンに対して何度も何度も言ってきたけれども。
そういう自分は、ショーンの気持ちを真面目に考えたことはあっただろうか……。
「ごめん……」
弘海は布団の中のショーンの手を取った。
体の中心や額は熱のせいで熱くなっているのに、驚くほどその手は冷たかった。
その手を温めるように、弘海は自分の両手で握り締めた。
「魔力が回復すれば……少しは楽になるのかな……」
弘海はそう思い、ショーンに顔を近づけようとしてためらった。
先ほど拒絶されていたリュウスのことを思い出したからだ。
自分も拒絶されるのかと思うと、少し怖くなった。
けれども解熱剤を飲ませることも出来ない以上、今の弘海に出来ることはそれしかないと思いなおした。
リュウスが勇気を出したように、弘海も勇気を出してみる。
ゆっくりと顔を近づけていっても、ショーンが起きるような気配はなかった。
弘海はそっと唇を重ねてみる。
唇も手と同じで冷たかった。
一度唇を離し、もう一度重ねた。
ショーンとキスをするのも、久しぶりのことだった。
唇の感触がとても懐かしく感じられる。
しばらく唇を重ねていると、ショーンの手が弘海の髪を撫でていた。
「起きてたの?」
「今……目が覚めた」
「具合はどう?」
「あまり良くないな……まだ頭がくらくらする」
「熱が下がらないからね……」
「この国の寒さは脅威だな……」
しみじみと言うので、弘海は思わず笑った。
「ショーンの国は寒くないの?」
「砂漠のある国だからな……夜は冷えるが雪が降ったりはしない……」
「へえ……」
砂漠のある国といえば、もう少し肌の色が濃い人が多いような気がしていたのだが。
ショーンもリュウスも、肌の色は透き通るように白い。
気がつけば氷嚢は氷がほとんど溶け出してしまっていた。
「ちょっと氷変えてくる」
新しい氷を入れて、それをショーンの額の上に乗せた。
「あ、あのさ……もう少し……キスしたら少しは良くなる?」
「ああ……なるのかな。さっきも少し楽になった」
「もう少し……する?」
「……いいのか?」
「うん……」
リュウスには少し悪い気がしたけれども、今はそうすることが治療になると信じるしかなかった。
ショーンに導かれるままに再び唇を重ねた。
ショーンに髪や首筋や頬を撫でられながらするキスは、何かにとても満たされていくような感じだった。
やがて唇を離した弘海は、ショーンの顔色が少しマシになったのを見て聞いてみた。
「あ、あのさ……少し……リュウスに回復してもらうっていうのは駄目なの?」
「それはしたくない」
「でも……リュウスは協力してくれると思うよ」
「リュウスが気の毒だ」
「でも……二人は婚約者なんだし……」
今は緊急事態だから仕方がないが、本来なら弘海とショーンがキスをしていることのほうが大問題のはずだ。
「俺は……リュウスの気持ちに応えてやることが出来ない。それが解っているのに、そういうことだけ利用するような真似はしたくない……」
「そ、それは……俺のことが好きだから……っていう理由?」
「ずっとそう言ってるだろう?」
「いや、でも俺は……俺のほうこそ、応えられないから……それに、俺は出来ることに限りがありすぎるよ……」
弘海は泣きたい気持ちになった。
どうしてこうも気持ちを伝えるということは難しいのだろう。
誰の幸せを考えても、弘海とショーンが結ばれるよりは、リュウスとショーンが結ばれるほうが絶対に良いはずなのに……。
「弘海……もう少しだけいいか?」
「キス? いいよ……」
ショーンを回復させるためだからと弘海は自分に言い聞かせる。
顔を引き寄せられ、弘海はまた唇を重ねた。
先ほどまでよりも少し深いキスだった。
開いた唇から、ショーンの舌が入り込んでくる。
その感覚も懐かしかった。
「ん……んん……っ……く……っ……」
ショーンの長い舌で口腔の中を撫でるようにされると、体の奥からざわめくようだった。
何か必死に留めていたものがあふれ出しそうで、弘海は少し怖くなる。
けれども、ショーンのキスはさらに深く激しくなっていくばかりだった。
「ん……ぅっ、んんっ……っ……」
弘海の中の恐怖はどんどん大きくなって、ショーンの体を押しのけようとした。
けれども、病人とは思えないほどの力で抱き寄せられ、結局弘海は逃げるのを諦めた。
いつの間にか弘海の体はベッドの上のショーンに抱きしめられ、その腕の中で彼のキスを受け止める。
熱があるショーンの体は、ビックリするほど熱かった。
「ん……くっ、んんっ……ふ……っ……」
やがて、ようやくショーンが唇を解放した時には、弘海のほうの吐息が乱れていた。
自分の瞳が潤んでしまっているのも解った。
まるで労わるように髪を撫でられ、弘海はショーンの胸に顔を埋めた。
「こ……こんなキスをするの……久しぶりだったね……」
「そうだな……お前がさせてくれないから……」
「だって……ショーンにはリュウスが……」
「そのことを、一度お前とちゃんと話したかった……」
「で、でも……話してもらっても……俺は……」
「そう言っていつもお前は俺の話を聞いてくれない」
「だ、だって……」
「今日はちゃんと聞いてくれるか?」
弘海は何かを言おうとして、結局それを飲み込んだ。
意思を確認するように見つめてくるショーンに、弘海はただ頷いた。



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EDIT [2012/01/27 08:21] 猫目石のコンパス Comment:0
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