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カテゴリ[猫目石のコンパス]の記事
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  • 2011/12/25(19:06) 『『猫目石のコンパス』 第一話』
    春坂弘海(はるさかひろみ)は、バイトの帰り道だった。いつもよりも少し遅くなったこともあって、ただでさえあまり人の通らないマンションへの道は、不気味なぐらいに薄暗く、静まり返っていた。昨日は隣の町で通り魔の騒ぎがあったらしいという噂を、つい先ほど店のオーナーから聞いたばかりだから、弘海は何となく急ぎ足になった。近頃は何かと物騒だから、男だからといって危険が目減りするというようなこともないだろう。特に...
  • 2011/12/27(08:02) 『『猫目石のコンパス』 第二話』
    近所のスーパーで猫用のドライフードを買って来た弘海は、自分のスープ用の皿にそのドライフードを盛り付けた。「ほら、カリカリだ。ちょっと奮発したんだぞ」ちょっと恩を押し付けるように弘海は言い、黒猫の前に皿を差し出した。黒猫は少し匂いを嗅ぐと、そのまま皿に顔を突っ込むと、カリカリと音を立ててドライフードを食べ始めた。「腹減ってたんだな」弘海は微笑んで、黒猫が食事をするのを見守った。時折、手を伸ばして額の...
  • 2011/12/28(08:16) 『『猫目石のコンパス』 第三話』
    「おはよう!」声をかけながら店に入ってきたのは、この店の店長でもある三芳宗助(みよしそうすけ)だった。オーナーの橘とは同級生で、ほとんど二人三脚でこのベーカリーショップ『ル・レーヴ』を経営してきたらしい。橘とはまた違ったタイプのイケメンで、橘が美しいタイプのイケメンとすると、三芳はどちらかというと精悍なタイプのイケメンだった。この店の人気の秘密は、このイケメンの双璧ともいえる二人に起因するところも...
  • 2011/12/29(11:00) 『『猫目石のコンパス』 第四話』
    再び男を部屋に招きいれると、男はまるで自分の家のように、片足を投げ出し、背を壁にゆったりともたれかけ、くつろいだ様子になった。(猫……どう見ても人間だろ……どこが猫なんだよ!?)弘海は思いながらも、自分のためと相手の男のために熱いミルクティーを作った。相手に好みを聞こうかとも思ったが、そこまでする必要はないと思いなおし、とりあえず自分が飲みたいものを一緒に作って出すことにしたのだ。「これ、熱いから気を...
  • 2011/12/30(11:32) 『『猫目石のコンパス』 第五話』
    「お父さん……」弘海はもう一度呟いた。父は微笑んでいる。「お父さん……会いたかった……」弘海が言うと、父は頷いた。「父さんも……弘海に会いたかったよ」間違いなく、父の声でそう言った。「お父さん……!」弘海はたまらなくなって、父に抱きついた。その体の感触はしっかりとあって、幻でも何でもなかった。死の寸前のやせ細った父とは違い、痩身ではあるが、不健康なほどではない……父が元気だった頃の体の感触だった。父のほうも弘...
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日生桔梗

Author:日生桔梗
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