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(やっっぱり……リュウスの魔法かな……さっきの……)
弘海が抱いているのと同じ疑惑を、ショーンも抱いているようだった。
今にも何か言い出しそうなぐらいに、不機嫌な顔をしている。
弘海はその表情に危機感をつのらせつつ、何も言わないで欲しいと願うような気持ちで両手を合わせた。
それがショーンに通じたのかどうかは疑問だが……とりあえず、今のところショーンはおとなしくしてくれているようだった。
ともかくこうなってしまった以上、さっさと初詣を終わらせ、橘たちと別れなければと弘海は思った。
そうしなければ、またリュウスがとんでもないことを仕掛けてきそうな嫌な予感がした。
「なかなか進みませんねえ……」
弘海は思わずため息をつく。
こうなってくると、人ごみが最大の敵だと弘海は思った。
さっさと初詣を終わらせるには、さっさと拝殿にたどり着き、さっさとお参りを終わらせなければならない。
焦る弘海とは対照的に、リュウスは実に楽しそうな様子だ。
「日本の初詣って楽しいものですね~。あ、ショーンさま、あそこに何か珍しいものがありますよ」
リュウスはすっかり恋人気取りで、ショーンの腕に手を絡ませて体もピッタリと寄り添っている。
そんなリュウスが気になったのは、お面を売っている露店のようだった。
ショーンの腕を引っ張って、店のほうに歩いていく。
「二人は仲がいいねえ」
「ラブラブだな」
橘と三芳が二人の様子を微笑ましく眺めている。
弘海は少し嫌な気持ちになった。
ショーンが何も言わずにおとなしくしていてくれるのは、正直に言って今の状況ではありがたいことなのだが。
それにしても、もう少し嫌そうな顔をするとか、せめて腕を外すとかそれぐらいのことはしても良さそうなのに。
それをしないということは、ショーンは何だかんだ言いながら、リュウスのことを許容してるんじゃないだろうか……。
(何で俺……こんなにイライラしてるんだ……?)
自分でもよく解らなかった。
弘海は軽くかぶりを振り、気を取り直して二人の傍に近づいていった。
「リュウス、このお面が欲しいの? 一個ぐらいなら買ってあげようか?」
「あ、大丈夫です。こうしてショーンさまと一緒に珍しいものを見て歩くだけで楽しいですから」
「そ、そうか……」
満面の笑みを浮かべるリュウスに、弘海は思わず引きつった笑みを返してしまった。
「それにしてもすごい人ごみだな……」
「お参りできるまでにまだかかりそうですか?」
「ん~、どうだろ……」
身長の高い橘と三芳が前方を確認してくれたが、拝殿まではまだかなりありそうだった。
「弘海、どうしたんだ? 人ごみで気分でも悪くなったか?」
心配そうに聞いてきたのは三芳だった。
険しい顔をしているから、体調が悪くなったと思って気遣ってくれたのだろう。
「い、いえ、大丈夫です。それにしても、すごい人ですよねえ……早くお参りしたいんだけど……」
「まあ、初詣はこれぐらい人がいるほうが活気があっていいよね」
橘は人ごみに辟易するような様子も見せず、爽やかに微笑んでいる。
「あーでも、確かに閑散としている神社だと、初詣って感じがしないですよね」
「こらぐらい人がいれば、神様もたくさん集まってそうな気になるしな」
三芳の言葉に、弘海も納得して頷いた。
「そうですよね。そう考えると、何だか人ごみもありがたく思いますよね~。神様たくさん集まってるのかなぁ」
少し不機嫌になりかけていた気分も、橘や三芳と話をしていると和んだ気持ちになることが出来た。
二人は常にマイナスイオンを発しているような存在だ。
「あ、弘海、その手袋してくれてるんだ?」
三芳に言われて、弘海は手袋をはめた両手をかざしてみせる。
「今頃気づいたんですか? 最初からしてましたよ。ありがたく使わせていただいています」
「手袋?」
「そそ。これさ、俺が弘海にクリスマスプレゼントしたの」
三芳が弘海の手を指さしながら言うと、橘がちょっと真面目な顔になった。
「そんなことしてたんだ……」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてないけど……」
先ほどまで和やかだった二人の間の空気が、どことなく気まずい感じになって、弘海はちょっと焦った。
(あ……あれ? 何か……橘さんと三芳さんの間の空気が微妙に……?)
つい先ほどまでは和やかに会話をしていたのに、弘海の手袋の話題からどうもおかしな方向に向かっているようだった。
(ショーンとリュウスのところにも行けないし、橘さんと三芳さんの間にも入りにくい感じになったし……俺、どうしたらいいの……)
とりあえず、会話に入りやすくなったほうについて行こうと思ったが、どちらも入りにくいまま、人ごみの道を進むことになった。
弘海はチラチラと橘と三芳の双方を見比べたが、先ほどまでの和やかな空気は、なかなか復活しそうになかった。
前方を諦め、後方のショーンとリュウスのほうに目を向けてみる。
相変わらずリュウスがべったりとショーンにくっつき、とても間に割って入れるような雰囲気ではなかった。
「…………」
ショーンと目があったので、弘海は慌てて目をそらした。
どちらかというと、前方の二人の雰囲気が緩和するのを待つほうが早そうな気がした。
会話がほとんどなくなってしまった二人に、弘海は思いきって話しかけてみた。
「あ、あの……橘さんと三芳さんは、いつも年末年始は一緒に過ごしているんですか?」
「あ……ええと……そうだな。最近はだいたいいつも、年末飲んで、その後は初詣に行ってって感じかな」
少しぎこちないながらも先に答えてくれたのは三芳だった。
「今年は宗助が二日酔いだったから、初詣が二日になったんだ」
抗議するように橘が言うと、三芳は肩をすくませた。
「今年は何か酒のまわりが早かったんだよ。たぶん、気苦労が多かったからだろうな」
「バイトの入れ替わりも激しかったですし……俺も年末の忙しい時期に休んだりしたし……」
弘海が申し訳なさそうに言うと、橘が笑った。
「ま、弘海も春には正社員だし、しっかり働いてもらうから大丈夫だよ」
「そっかぁ……今年は正社員かぁ……」
「今年は弘海にもうちの看板商品をいくつか任せたいし。期待してるよ」
「弘海ががんばってくれたら、俺も頑張って営業して、新規開拓してくるよ」
「ありがとうございます! 頑張ります!」
先ほどまでの嫌な雰囲気は、いつの間にか消えていた。
弘海自身も、橘や三芳に期待してもらっているのだと思うと、少し嬉しい気持ちになれた。



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