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「申し訳……ありません……」
 トミビコは、力なくアマツに謝罪した。
 突然、唇を重ねてきたトミビコを、さすがにアマツは乱暴に引き剥がすことはしなかったが。それでも、きっぱりと拒絶を示すように、アマツは自分からすぐに離れた。
 ほんの数秒……唇が触れていた間、アマツがその行為を歓迎していないことは、すぐにトミビコにも伝わってきた。
 アマツのことを好きなだけに、拒絶されたのだというその事実にトミビコの胸はズキズキと痛んだ。
「トミビコ……二度とこういうことはするな」
 アマツの言葉は静かだったが、厳しかった。
「本当に……申し訳ありませんでした……」
 謝りながら、トミビコの目からはポロポロと涙がこぼれ落ちる。これではまるで子供のようだと思いながらも、ただただ悲しくて仕方がなかった。
「お前のことは、本当の家族のように大切な存在だ」
 涙に濡れた顔を上げると、アマツは穏やかな顔でトミビコのことを見つめていた。
「アマツさま……」
「お前は俺にとって、本当に大切な存在だ」
 アマツはもう一度言った。
「けれども、先ほどのようなことをする関係を、お前に求めることはない」
「はい……」
 態度だけではなく、直接的な言葉でも、アマツはトミビコに一線を引いた。そこまではっきりとした意思表示をされた以上、トミビコはもうアマツへの好意を態度に示すことは二度と出来ないだろう。
 自分の気持ちを抑えることが出来ず、ほとんど衝動的にアマツに唇を重ねていた。いつも優しいアマツの気持ちに甘えてしまっていたこともあるだろう。また、陸の不在によって出来たアマツの心の空洞に、ほんの少しでも付け入る隙があるかもしれないという期待もあった。
 けれども、アマツの心の中には陸しかいないのだ。どんな隙もありはしなかった。
 トミビコのことは大切に思い、大切に扱ってはくれるけれども、陸のように思ってくれることはないのだ。
 トミビコは初めて、陸のことを憎いと思った。
 陸を根の国にやってしまったことを後悔したこともあったが。
 今は根の国でヒルコに八つ裂きにでもされ、トミビコが味わった苦しみ以上の苦しみを味わい、二度とアマツに会うことなく消滅してしまえと思っていた。



 トミビコが望んだ通り……陸は苦痛の海の底にいた。
 あれからいったいどれぐらいの時間が経ったのだろう。身の裡に妙な薬をねじ込まれ、そのまま放置された。薬は以前に使用された香よりもさらに効き目があるとヒルコは言っていた。
 確かにその通りなのだろう。
 時間とともにその異変は陸の体に顕著に現れ始めた。
 その異変は慣れるどころか、時間が経つにつれ、さらに辛いものになっていく。
 陸の意識は朦朧としていて、時折苦痛のあまり、気を失いかけることすらあった。
 最初のうちは薬を埋め込まれたその部分にだけ異変を感じた。中の薬が溶け出すに従い、そこが熱くなり、疼き始めたのだ。
 時間が経つにつれ、異変は全身に及び始めた。
「う……う……く……んんっ……」
 陸を自分のものにすると言い放ったくせに、アハシマはずっと傍にいながらまったく手を出そうとはしなかった。
 おそらく陸が自分から求めてくるのを待っているのだろう。
 薬が完全に溶け切ったところで、両手の拘束は解かれた。けれども、もっとも疼いているその場所は、自分で慰めたところでおそらく満足は出来ないだろう。
 陸の体が今求めているのは、入口をこじ開けなければ入らないほど大きくて太く、そして硬いものだ。
 確かに効き目は香とは違うが、それは陸にとってはさらに辛い衝動をもたらしていた。
 この衝動を抑えるためには、陸の体が求めていることをしなければならない。そのためには、相手が必要だった。しかし、ここにアマツはいない。今ここで陸を満足させることが出来る人間は、アハシマしかいなかった。
「……ぅ、くう……っ……はぁ、はぁ……っ……」
 まるで高熱にでもうなされているかのように、陸は酷い汗をかいている。アハシマはその汗を時折拭う以外には、陸に触れようとしなかった。
(もう誰でもいい……この疼きを鎮めて欲しい……)
 一向に収まる気配のない苦痛に、陸は音を上げそうになる。
「……っ……く……っ……」
(駄目だ……我慢しないと……薬なんて一過性のものだから……耐えれば絶対に収まるはず……)
 呼吸をすることも困難なほどに、陸は追い詰められていた。
 もしもこの苦痛に耐えることが出来なければ、アマツに不実を働くことになってしまう。たとえそれが仕方のないことだったとしても、たとえアマツが許してくれたとしても。陸自身が自分を許せなくなりそうだった。
「普通ならもうとっくに音を上げる頃なのだがな……」
 まるで呆れたようなアハシマの声が聞こえてくる。
 ぎゅっと握りこんだままの陸の手のひらは、あまりにもきつく握り込み続けたために血が滲んでいた。アハシマが見かねてその手に布を巻いてくれたが、今はその布も血が滲んで赤くなってしまっている。
「その薬……欲望を解放しなければ死んでしまうとしたら……どうする?」
「べ、別に……どうもしない……」
「二度とアマツにも会えなくなるぞ?」
「お前に体を許したりなんかしたら……それこそ二度と会えなくなる……」
「そこまでアマツのことが好きか?」
「好きとか……そんな言葉じゃ……表現できない……。アマツは俺にとって……この世の何よりも大切な存在なんだ……」
「お前はきっと裏切られる」
「他人の言葉なんて信じない……。俺が信じるのはアマツだけだ……」
 陸はすべての息を吐き切るように言うと、また意識を失った。それでも数分後には苦痛で目を覚ますのだが。
 ほんの僅かな休息を迎え、深く目を閉じる陸の姿を、アハシマは苦いものを噛み締めるような表情で見つめた。



長い間更新できず、すみませんでしたm( __ __ )m
仕事の忙しさの上にしつこい風邪をひいてしまい、バタンキュー状態でした……。
最初は秋花粉かと思っていたら、あれよあれよという間に喉がおかしくなって、熱が出ました。
皆様も気をつけてください。
まだしばらく更新が滞りがちになるかと思いますが、懲りずに読みに来ていただけると嬉しいです。


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EDIT [2012/11/14 08:51] 高天原で恋に落ちた Comment:2
更新もうしてくれないかと思ってヒヤヒヤしちゃいましたよ。
この作品すごい好きなんで、頑張ってください^^
[2012/11/15 23:49] EDIT
>risakiさま

嬉しいお言葉をありがとうございます!
また、心配をおかけして申し訳ないです。
まとまって書ける時間が取れないので、しばらくは更新が滞りがちになるとは思いますが……。
最後までちゃんと書ききっていきたいと思ってますので、よろしくお願いします((ゝ∇・**))ゞ
[2012/11/17 21:01] EDIT
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