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「弘海も来てたんだ」
「はい。今来たところだったんですけど、ここで三芳さんとばったり会って……」
橘は微笑んで、ショーンに目を向ける。
「大晦日に熱を出した彼も元気そうだね」
「はい。おかげさまで熱も下がりました」
三芳には頭を下げる仕草をしたショーンだったが、橘には相変わらず警戒している様子が伺えた。
弘海にはそれが気に入らない。
さんざん世話になったのだから、少しぐらい愛想を見せればいいのにと思う。
「せっかくここで会ったんだし、一緒に行こうか」
橘の提案は、この状況では当然のような提案だったので、弘海は迷うことなく頷いた。
「そうですね。大勢のほうが楽しいですし!」



五人でゆっくりと境内の奥の拝殿に向かう。
人ごみがすごかったので、とてもすぐには拝殿まで行けそうになかった。
ゆっくりと周りのスピードに合わせるように歩いていく。
けれどもそのほうが、いろいろと見て回るには都合が良かった。
「あれは何ですか?」
「ああ、あれは狛犬って言って、神社を守ってる犬なんだ」
「でも、石ですよね?」
「石だけど……そういう守り神みたいな役目があるみたいだよ」
「そうなんですか……変わってますね……」
リュウスやショーンの質問に答えたりしながら歩いていると、自然と歩く速度は遅くなってしまう。
橘と三芳も、それに合わせてくれた。
「そっちの彼がショーンだっけ?」
橘が言ったので、弘海は目を見開いた。
「そうです。よく覚えてますね」
「だって……猫の名前もショーンだっただろう? 身近な人の名前を猫につけるなんて、変な話だなと思ってたんだ」
「あ、そ、それは……はは、そ、そうですね……」
「ショーンは家族みたいな感じって聞いたけど、そっちの彼は?」
「あ、ええと……友達……みたいな感じ?」
「ひょっとして……二人とも外国の人?」
「ええと……そ、そうですね……はい……外国の人です……」
「同じ国?」
「そう……みたい……ですね……」
二人のことについて追求されると、弘海はつい、しどろもどろになってしまう。
実は魔法が使えるとか、猫になれるとか、男どうしで婚約したりする国なんだとか……そんなことを言ったら、きっと橘も三芳も目を回してしまうに違いない。
けれども、橘も三芳も、ショーンとリュウスのことに興味津々のようだった。
弘海がしどろもどろになっているので、二人は少し不思議そうな顔をしている。
「ショーンとリュウスは、どういう関係? 親戚か何か? 友達?」
三芳が聞くと、リュウスはショーンの腕にしがみついて微笑んだ。
「僕はショーンさまの許婚なんです」
一瞬、二人の空気が凍ったようだった。
「あ、あのさ……リュウス……」
弘海がたしなめようとしたが、三芳が先に口を開いた。
「許婚って……二人とも男だよね?」
「はい。でも、どちらの親も認める正式な許婚です」
「へえ……そんな国もあるんだなぁ」
感心したように三芳は言う。
「え、ええと……ショーンたちの国は日本とはぜんぜん違う国なので……あまり真に受けないでください……」
「確かに、ずいぶんと違うようだね」
そう言ったのは橘だった。
「あ、あのね……リュウス……ここは日本で文化も道徳も何もかも違うから、ほどほどのとことで止めておいて……」
弘海が小声で言うと、リュウスはにっこりと微笑んだ。
「日本には男性同士が結婚するという風習はないのですか?」
「うーん……外国なんかではあるみたいだけど、日本ではまだそういう法律はないかな……」
困ったような顔をしながらも、橘が親切に答えてくれた。
「そうですか、それは残念ですね、弘海さん」
「え? な、何で俺が残念?」
「実は弘海さんは、いつも家で橘さんのお話ばかりしているんです。きっと、弘海さんは橘さんのことが好きなんだと思います」
「ちょ……!!!」
「橘さんは弘海さんのことをどう思ってるんですか?」
「あ、あのね、リュウス……」
弘海が大慌てでリュウスを止めようとしたのだが、それを遮るように橘が言った。
「俺も弘海のこと好きだよ」
「え……」
「弘海は何事にも一生懸命だし、俺は弘海が男でも女でも、たぶん好きになったと思うよ」
「あ、ありがとうございます……」
橘の『好き』がどういう好きなのか、今の言葉だけでは弘海には判断がつかなかった。
だからとりあえず礼を言っておいたのだが、それが正しい判断だったのかどうなのか、弘海は混乱しすぎていてわからなかった。
ただ、リュウスの言葉で、橘が大きな誤解をしていなければ良いのにと思う。
弘海はショーンのほうをチラリと見てみる。
不機嫌そうな顔をしているが、橘や三芳がいる手前、我慢しているようにも見える。
実際にここでショーンが怒ったり、何かを言ったりしたら、弘海はますます困り果ててしまう事態になるだろう。
弘海はこの事態をどう収拾しようかと頭を悩ませていたのだが、ふいに背後から誰かに突き飛ばされるような衝撃を受けた。
「わわっ……!」
ショーンが手を伸ばそうとするのが見えたが、それよりも先に橘の腕が伸びてきた。
あわや転びそうになった弘海の体は、橘の腕によって支えられた。
「大丈夫?」
「は、はい……大丈夫です。ありがとうございます。おかげで転ばずに済みました」
橘に抱きしめられるような形になった弘海は、慌ててその体から離れた。
「ほ、本当にすみません……俺、いつもおっちょこちょいで……」
見上げた橘は、何となく狐につままれたような顔をしている。
「ど、どうかしたんですか、橘さん?」
「何か今……手が勝手に動いたみたいな感じだったんだ」
「えええ?」
「誰かに手を導かれた……みたいな……」
「な、何ですか、そのオカルティックな現象は……」
「うん、俺もそう思う。でも、まあ……気のせいかな」
そう言った橘の言葉に、三芳も笑った。
「そりゃ気のせいだろう。弘海の体を支えようと思って自分で動いたのを、誰かが手を引っ張ったように感じただけなんじゃないか?」
「そうかな……まあ、そのほうが納得できるね」
二人の会話を聞きながら、弘海は心当たりを感じて、リュウスに視線を向けた。
目があったリュウスは、ショーンの腕にしっかりとしがみつきながら、弘海ににっこりと微笑みかけてきた。



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EDIT [2012/01/31 08:45] 猫目石のコンパス Comment:0
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