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あっという間にクリスマスも過ぎ、明日は大晦日というところまで年の瀬は押し迫っていた。
「今日も彼……待ってるみたいだぞ」
そう言ってきたのは、三芳だった。
三芳はショーンの顔を知っている。
だから、いつの間にか日課のように外で弘海の仕事が終わるショーンのことに気づいていたようだった。
「残業気にしなくていいぞ。寒いのに外で待たせるのも悪いだろう?」
「いいんです、別に。それに今日は橘さんもいないし……」
「どうせ今日は人気の商品は出せないし。開店休業状態だ。後は俺一人でも大丈夫だぞ?」
橘は今日はテレビの仕事で外出していた。
人気の女性アイドルグループにイケメンのブランジェがパン作りを教えるという企画らしい。
橘の手が必要なパンは、今日は売切れ次第終了ということになっている。
もうすでに店の棚には売り切れのものが多くあった。
三芳が言うように、確かに今日は客の入りがいつもに比べて悪い。
とりあえず弘海と三芳の二人で厨房を任され、橘が戻ってくるまでは二人が作れるものだけを並べることになっている。
「橘さん、遅いですよね。出かけたのは昼前だったのに」
「まあ、テレビの収録とか時間がかかるんだろ。相手は人気のアイドルグループだし。そっちのスケジュールが押してて遅れてるって可能性もあるだろうし」
「そっか……」
「そういや、弘海は明日の予定はどうなんだ?」
「明日ですか……特に何も考えてないです」
「それなら明日店を閉めた後に健介のマンションでカウントダウンパーティでもやろうかって話になってるんだけど、弘海も来るか?」
「あ……どうしようかな……」
「ま、返事は明日でもいいし。暇だったらどうぞって程度の気軽な誘いだから」
「解りました。じゃあ、明日返事しますね」
「祐一が帰省してなかったら誘うつもりだったんだが……他のスタッフも帰省組が多いみたいだし……ああ、そうだ。あの同居人の彼を連れてきても構わないぞ」
「い、いえ……それは大丈夫です……」
弘海は引きつった笑みを浮かべながら断った。
明日の大晦日は店を夕方に閉め、大掃除をしていつもより早い時間に終わることになっている。
きっと、その後に橘のマンションで集まるということなのだろう。
(ショーンとリュウスを二人きりにするチャンスになるかな……)
弘海は思った。
二人の話し合いは相変わらず進展している様子はなく、ショーンはいつも弘海を店の前で待っているし、リュウスは戻ると料理を作って待っている。
あからさまに喧嘩をしたりするというような様子がない分、長引きそうな気配があった。
正直に言って、弘海などよりも数倍リュウスのほうが料理は上手かった。
(料理も上手で、顔もかわいくて、性格も良くて……おまけにショーンのことが大好きで……両親も認めてくれている……完璧な伴侶じゃないか……)
弘海はため息をつく。
(俺だって……もしもリュウスが女の子だったら、あんな子と付き合いたいなって思うぐらいだし……)
いったいショーンは何の不満があるのだろうと思う。
弘海としては、早くショーンに国へ帰ってもらいたいという気持ちが日に日に強まっていた。
このままこうして一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、別れは辛いものになるに決まっている。
弘海は何度もそうした別れを経験してきたのだ。
ショーンがいて当たり前という日常がこれ以上続く前に終わらせて欲しかった。
「雪が降ってきたな……弘海、今日はもう終わっていいぞ。外で待ってる彼にも悪いだろ?」
「あ、でも……」
「いいから。早く行ってやれ」
「すみません……」
三芳に頭を下げ、弘海は厨房を出た。
二人では確かに少し余裕があるかもしれないが、一人でこなすには決して楽ではない量の仕事が残っているのに、何だか申し訳ない気分だった。
けれども雪が降り出した外の様子は確かにいかにも寒そうで、これ以上ショーンを待たせるのはかわいそうだと弘海も思った。
毎日迎えに来るのが解っていたので、父親が使っていたコートとマフラーをショーンに渡してあったけど、ずっと外で立っていれば、それだけで寒さがしのげるはずもない。
着替えを終えて外に出ると、ショーンが少しホッとしたような顔をした。
「早かったんだな」
「ショーンがかわいそうだから、三芳さんに早くあがっていいって言われたんだ」
ちょっと抗議の気持ちもこめて言うと、ショーンは肩をすくめた。
「仕方がない。リュウスを追い出せないから」
マンションに向かって歩き出しながら、弘海は軽く息を吐く。
白い息が、今夜の寒さを物語っているようだった。
「だからさ……何でリュウスとちゃんと話をしないわけ? いつまでも逃げてちゃ駄目だと思うよ」
「話はしている」
「どうせ俺の伴侶は弘海だからとか何とかいってそれで終わりじゃないの?」
「何故わかる?」
「やっぱりか……」
弘海は大げさなほどのため息をついた。
「もっとリュウスの話もちゃんと聞いてやれよ。リュウスは単にショーンの親から言われたっていうだけで、ここまで探しに来たわけじゃないと思う。本当にショーンのことが好きなんだよ。そういう気持ち、ショーンはちゃんと聞いてあげたことあるの?」
「……ない」
「それって酷いよ。リュウスとはすることもちゃんとしてるんだろ? それなのに、ちゃんと話も聞いてもらえなくて、俺みたいなののために、ショーンがここにとどまってるから国に帰ることも出来なくて……」
弘海が言うと、ショーンは複雑そうな顔をした。
「そういう弘海はどうなんだ? 俺の気持ちを真面目に考えてくれたことがあるのか?」
「お、俺は……」
「俺は何度も自分の気持ちを伝えた。でも、いつもはぐらかされてばかりだ」
「だって……俺は男と恋愛なんて考えられないから……」
「男だからという理由で、弘海は俺の気持ちをまったく理解しようとしてくれない」
「そりゃそうだよ……男を好きになれないんだから、どうしようもないだろ……」
「じゃあ、俺がリュウスを伴侶として見ることが出来ない理由も、弘海には解るんじゃないのか?」
「それとこれとは……」
言いかけて弘海は言葉に詰まった。
確かに、ショーンの言うことにも一理はあると思うのだが……。
「でも……俺の気持ちが変わるまで待ってもらっても、俺自身、気持ちが変わる自信がまったくない……だから……」
「だから?」
「いい加減に諦めてもらえると嬉しい……」
我ながら、酷いことを言っているのだろうと思う。
好きな相手にこんなことを言われたら、弘海なら二、三日は立ち直れないだろう。
「弘海は俺のことを好きになるはずだ」
「な、何だよ、その根拠のない自信は……」
「俺以上に弘海にふさわしい男はいないから」
「…………」
あまりの自信過剰っぷりに、弘海はもう言葉が出てこなかった。
「あ、あのさ……明日、俺は橘さんのところに泊まるから。だから明日はリュウスをちゃんと話し合えよ。リュウスの話もちゃんと聞いてやれ。俺は今、ものすごい辛抱をしてお前の話を聞いたんだぞ?」
「駄目だ、泊まるのは」
「そんなに怖い顔しなくても……三芳さんもいるから。橘さんと二人きりっていうわけじゃない。三人でカウントダウンパーティをしようっていう誘いなんだ。俺は明日それに行って来るから、お前はリュウスと話し合え」
弘海はそれきり口をつぐんだ。
もう明日の予定を変えるつもりはなかったし、明日は何が何でも二人にちゃんと話をさせたかった。



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EDIT [2012/01/24 08:27] 猫目石のコンパス Comment:2
>リュウスとはすることもちゃんとしてるんだろ?
>それなのに、ちゃんと話も聞いてもらえなくて、

弘海と出会う前の事なら許せますが、
弘海を思いつつ、リュウスとHだけしてるんですか?
それって、ショーン最低です!
(魔力補充の為に、キスまでは可ですが・・・)

ショーンにムカついたので、
弘海のお初は橘さんに美味しく頂いて貰って、
ショーンを懲らしめてやりたいです!
[2012/01/24 19:39] EDIT
>すももさん

> >リュウスとはすることもちゃんとしてるんだろ?
> >それなのに、ちゃんと話も聞いてもらえなくて、

すみません、これはちょっと言葉足らずだったかもしれません。
設定がややこしくて申し訳ないのですが、
彼の国で、成人するまでの相手ということでリュウスが相手をしていたということで、
弘海のマンションに来てからは、キスもしてないと思います(たぶん)
手も繋いでないと思います(たぶん)
国でのことについても、ショーン自身はまだ性に対する意識がちゃんと芽生える前の話であったこともあり、
彼にとって本意ではない部分があったのだと思います。
弘海の言葉にちゃんと答えてない(これも悪い)のも、誤解を招く原因になっていると思います。
リュウスに対する罪悪感も感じているから、答えれないという複雑な心境があったものと思われます。

もしもこっちに来てリュウスと何かをしていたら、私もショーンは最低だと思います(笑)
ともあれ、私の説明不足の表現で、困惑させてしまってすみませんでした。
どこかで誤解が解けるよう、ちゃんと状況の描写をさせていただきたいと思います。
[2012/01/24 20:04] EDIT
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