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 その日は一日、アマツとべったりして過ごすことができ、陸は幸せな気持ちだった。自分のことをアマツにいろいろ知ってもらったり、アマツの知らなかったところを教えてもらったり。
 丸一日じっくりと話をしたことで、何だか順番は逆のような気はするけれども、体の距離と同じぐらいに心の距離も縮まったような気はする。
(っていうか……俺、いつの間にかすっかりホモになってしまってるし……)
 他の男との恋愛は考えられないが、陸にとってアマツは別だった。だから厳密にいうと、ホモというわけではないのだろうが、陸はちょっと複雑な気分だ。
 アマツは今、会議があるとかで広間のほうに行っている。陸は会議に出ても邪魔になりそうだからと、宮殿の中をうろうろしていた。
 アマツに案内してもらったりして、ずいぶんと内部には詳しくなったけれども、やはり広すぎるということもあって、細い廊下に入ったりすると迷子になってしまいそうだ。
「広間のほうに戻ろう……えっと、確か方角的にはこっちのはず……」
 自分の勘だけを頼りに元の場所へ戻ろうとする。何となく見覚えのある廊下に出ると、陸はちょっとほっとする。
「良かった……今日は迷子にならなくてすみそうだ」
 ようやく陸のテリトリー内ともいえる場所まで戻ってきたところで、思わず足を止めた。
「あ、アマツ……それにトミビコだ……」
 会議が終わったのかと思い、足を早めて二人に近づこうとして、陸は目を見張った。
(え……どういうこと……?)
 アマツがトミビコのことを抱きしめているのだ。トミビコもまた、アマツの背中に手を回している。
 二人のもとに駆け寄ることもできず、陸はその場に立ち尽くしてしまう。
(なんで……二人は抱き合ってるんだ……?)
 陸は少しむかむかした気分になる。アマツは誰とでもあんなことをするんだろうか……。
 そのうちにアマツのほうが陸のことに気づいた。
「陸」
 アマツはトミビコの背を優しくなでると、その体から離れる。特に悪びれるような様子も何もない。逆にトミビコのほうが少し戸惑うような視線を陸に向けてくる。
「待たせたな。さっき会議が終わったところだ」
「あ、うん……」
 陸は曖昧に頷いて、視線をうつむかせる。
「どうした?」
 アマツの手が陸の肩に触れる。さっきまでトミビコの体を抱きしめていたその手だと思うと、陸は我慢できずにその手を振りほどいた。
「あ、ごめん……」
 気がつくとアマツが驚いたような顔をして陸を見ていた。
「ごめん……ちょっと俺、疲れてたみたい……」
「部屋に戻るか?」
「うん……」
 トミビコが何か言いたそうな顔をして陸のことを見ている。
 部屋に戻って二人きりになればさらに気まずくなる気もしたけれど、今は一刻も早くこの場から立ち去りたかった。

「いったい何があったんだ?」
 部屋に戻ってからも口数の少ない陸を心配するかのようにアマツが聞いてくる。
「別に……アマツには関係ないじゃん……」
 自分が完全に拗ねているということは自覚していたが、陸は感情をコントロールできなかった。自分の性格はそれほど何かに執着するものではないと思っていたのだが、今はこのアマツという男に想像もしなかったほどに執着してしまっていることが分かる。
(別に俺はアマツの恋人ってわけでもないし、それにあの時は何か事情があってアマツがトミビコを慰めていただけかもしれないし……)
 いろんなことを頭の中で考えながら、陸は何とか自分の気持ちを落ち着かせようとしていた。それでもいらだちが消えないのは、アマツが陸の様子がおかしい理由にまったく気づいていないこともあった。
(普通は恋人とかに抱き合ってるところを見られたら、言い訳ぐらいするよな……それもしないってことは、ああいうことが日常茶飯事なのか? それとも、俺が別に特別じゃなかったってこと?)
 考えれば考えるほどに、陸の思考はネガティブになっていく。
 陸の態度に、アマツも戸惑うように黙り込んでしまった。
 何とか軌道修正をしなければと思いつつも、いったん沈んでしまった気持ちはなかなか浮上してくることができない。
 こういう時に逃げ込める場所があれば良いのだけど、生憎陸はこの部屋以外の部屋を与えられていないので、ここから逃げ出すこともできない。
 もしもそういう場所があれば、気持ちが落ち着いてから改めてアマツと向き合うという方法も取れたかもしれないが。
 その場の空気は、最悪なほどに嫌なものになっていた。
「陸……」
 たまりかねたように伸びてきたアマツの手が、陸の頬に触れる。
「いったい何があったんだ? いい加減に話す気にはならないか?」
 改めて聞かれると、陸は少しだけ自分の気持ちが落ち着いてきていることに気づいた。
「俺……何なのかなって思って……」
「何、とは?」
「必要があって呼ばれてアマツと寝てるけど……アマツにとって俺ってどんな立ち位置なのかなって思ってさ。さっきみたいにトミビコを抱きしめてるところなんか見てしまうと……」
「陸?」
「別に俺って特別でもなんでもなくて……アマツは実は誰とだって寝るんじゃないかとか考えてしまって……」
 いったん話し始めると、言葉が止まらなくなってしまう。次から次へとこれまで不安に思っていたことが口をついて出てきてしまう。
「俺はたぶん……ものすごくアマツのことを好きになってしまったと思う。アマツに抱かれれば抱かれるほど、そういう気持ちが強くなってる。でも、アマツはどうなんだろうって……」
「俺も陸のことが好きだ」
「分かってる……それは分かってるんだ。でも、俺にとってアマツは一番だけど、アマツにとってはどうなんだ? アマツには他にも大切なものがたくさんあるんじゃないの?」
 我ながら独占欲丸出しの言葉に嫌気がさしてしまう。でも、いったん口をついて出てきた言葉は止められなかった。
 そんな自分が嫌で情けなくて、陸の目からは涙が溢れ出してしまう。
 きっとアマツには軽蔑されただろう。
 たった二回寝ただけで、こんなにアマツを独り占めしたいと考えてしまうなんて。
 アマツの指が、陸の瞳からあふれる涙を拭う。
「アマツ……?」
 濡れたままの瞳を向けると、アマツは驚くほど優しい顔で微笑んでいた。
「陸と出会うまでは、大切なものがいくつもあった。でも、今一番大切なものが何かと聞かれたら、迷わず陸と答えるだろう」
「え……」
「そんなに俺の言うことが信じられないか?」
「そ、そんな……ことは……」
「俺にとって陸は、この世の何よりも大切な存在だ。お前以上に大切なものなどない」
「アマツ……」
「トミビコは俺にとっては本当の弟のような存在だ。さっきの会議で少しトミビコに風当たりの強い意見があって落ち込んでいた。だから慰めたいと思った」
「弟のような存在?」
「そうだ。トミビコはまだ生まれて間もない頃から俺の近くにいた。そういう存在は他にはいない。たとえていうなら、血は繋がっていないが弟のような存在だと思う」
「そうか……」
 確かに自分の弟が辛い立場に立たされるようなことがあれば、抱きしめて慰めることもするだろう。陸は自分の見たものが誤解であったことを理解した。



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EDIT [2012/10/16 08:01] 高天原で恋に落ちた Comment:0
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