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 放課後、いつものように陸は彰彦と一緒に学校を出た。
 のろのろと後ろを歩く陸を、彰彦が振り返る。
「どうしたんだよ、陸?」
「あ……うん……」
「何か今日は元気がないな。今日こそラーメン行くか?」
 珍しく彰彦が陸に気遣ってくれる。よほど陸の様子が気になったのだろう。
 今日は一日、授業にも身が入らなかった。
 動くたびに腰の奥のほうが鈍い痛みを訴え、そのたびにアマツのことを思い出したりしてしまう。
(これじゃあまるで……恋……みたいな……)
 そう思いかけて、陸は慌てて首を横に振る。二度と会うことのない相手に恋をするなんて、不毛にもほどがある。しかも相手は男なのだ。たった一度男に抱かれたぐらいで、自分の嗜好がそっちに向かってしまうことは絶対に避けたかった。
 昨夜のことはいろんな事情から仕方なくああいうことになっただけで、決して陸の嗜好に影響を及ぼすものであってはいけない。
「おい、陸って。聞いてるのか?」
「あ、ご、ごめん……」
「本当に今日はどうしようもないな。昨日のことがよっぽど良かったのか? っていうか、どんな女の子? 可愛かった?」
「いや、本当にそういうのじゃないし……」
 彰彦はすっかり勘違いをしている。昨日のことだって、彰彦の前から姿を消した陸は可愛い女の子を追いかけ、そのまま良い雰囲気になってしまったと思っているらしい。
 今日はもう何度も昨夜のことを教えろと言われ、少しうんざりとしていた。
 けれども、彰彦を置き去りにしていなくなったことは事実だったので、あまり強く出ることもできない。
「まったく……イイコトがあったならあったで、素直に認めればいいのに」
 昨日のことをまったく話そうとしない陸に、彰彦はしびれを切らしたみたいに言う。
「だから……本当に何もないって。まあ、あるにはあったけど、もう二度と会わないよ」
「え……? そうなのか?」
 彰彦は驚いたように目を見開いた。
「うん……最初からそういう約束だったし」
「一晩限りってこと?」
「そう……」
「なんつーか……ドライだな。相手はどう考えてるの?」
「相手も同じ。たぶんもう俺のことなんて忘れてると思う」
「うわー……」
 自分で言いながら、とても傷ついてしまった。そう……きっともうアマツは陸のことなんて忘れてしまっているだろう。
 八岐大蛇だって倒してしまっただろうし、そうなったらもう陸には用もないのだし。
「お前ってそういう恋愛するやつだと思わなかったけど……意外と大人だったんだな」
「いや、ま……恋愛っていうか、必要に迫られてというか……」
「必要に迫られてか……」
 何だか彰彦がとんでもないことを考えている気がして、陸は慌てて否定する。
「あ、ち、違うからっ、俺じゃなくて相手のほうが必要だったみたいで……俺はその……たまたまめぐり合わせでそういう役割になっただけで……」
「まあ……要するにお前は弄ばれたってことか?」
 グサッと胸に何かが刺さったような音がした気がした。確かに彰彦の言葉は陸の状態を正確に言い当てているかもしれない。
「そ、そうだな……も、弄ばれ……たのかな……」
「げ、元気出せよ……」
「うん……」
 陸が寂しそうに答えたので、彰彦はようやく陸の元気がない理由が分かったようだった。
「本当にいろいろ複雑だな……」
「うん……。どうやら俺のほうが惚れてしまったみたいだから、余計に複雑だな……」
「そうか……悪かったな。知らなかったからさ、何か俺、今日一日、お前の傷口をえぐるようなことばかり言ってたかもな……」
「気にしなくていいよ。もう大丈夫だし。二度と会えないのにこれ以上考えても仕方がないから、考えないようにする」
「そうだな。それがいい。そんな女のことは早く忘れて、新しい彼女を作れよ。可愛くて性格もピカイチの彼女を作って見返してやるんだ」
 彰彦が相手を女の子だと勘違いしたままなのが、せめてもの救いかもしれなかった。
(やっぱり俺……惚れてしまったんだな……)
 声に出して認めてしまうと、余計に悲しかった。声に出さなければ良かったと後悔した。
 相手には愛情も何もないのに、あまりにも大切に扱ってくれるものだから、勘違いしてしまう。そしてその勘違いが今もまだ続いているのだ。
 もっと乱暴に扱われていたなら、こんな気持ちを抱くこともなかったのに。
(だからアマツは義務でヤッただけなんだって。そうしないと、八岐大蛇を倒せなかったから……)
 無理にそう思い込もうとしているうちに、陸はまた何だか悲しくなってきて、深いため息をついた。

 主の姿を探していたトミビコは、露台の傍の長椅子にその姿を見つけた。
 日頃はどちらかというと活動的で、誰彼となく宮の者に声をかけたりして賑やかに過ごすのが好きなはずのアマツが、たったひとりで外の風景を眺めている。
 トミビコは言いようのない不安を感じて、主に近づいた。
「アマツさま、どうなされたのですか?」
 声をかけると、アマツはようやくその存在に気づいたようにトミビコを見た。
「外の景色を眺めていたのだ」
「そうですか……八岐大蛇も無事に退治することが出来ました。まだ何か気がかりなことでも?」
「いや……そういうことではない」
 そういうことではないと言いつつも、アマツはどこか浮かない表情をしている。
 八岐大蛇は陸との交わりによって力を取り戻したアマツによって無事に退治された。それ以降は八岐大蛇が村を襲うことはなくなった。
 あの日の夜、行為を終えた陸を速やかに元の世界に返してやるようにと命じたのはアマツだった。
 トミビコはそのアマツの命令に従い、予定よりも早く陸を元の世界に戻したのだ。
 おそらく陸は目覚めて驚いただろう。この高天原で起こった出来事は夢だと思ったかもしれない。
「では、何故……そのように浮かない顔をされておられるのですか?」
 トミビコの問いかけには、少し時間をおいてから返答があった。
「陸の住む国は、遠いのか?」
「え、ええと……それは分かりかねます。私はただ彼を呼び、そして帰しただけですので……」
「そうか……」
「ひょっとして陸さまのことを考えておられるのですか?」
「……そうだな」
 素直に認めたアマツの言葉に、トミビコはきゅっと唇を噛み締める。
「ひょっとして、陸さまをお返しになったことを後悔しておいでですか?」
「そういうわけではないが……もう少しいろんな話をしたかったなと考えているだけだ」
「そうですか……」
「俺がその陸の国へ行くのはお前の力を使っても無理か?」
「それは……できかねます。というより、アマツさまが高天原からお離れになるのは良くないことだと思います」
「確かに、そうだな」
 アマツらしからぬ言動に、トミビコは不安そうな顔をする。
「アマツさまがこの高天原からおられなくなれば、皆が困ってしまいます」
「分かってる。そんなことをするはずがない」
「はい……」
 再びぼんやりと外を眺め始めたアマツの横顔を見て、トミビコはやはり不安そうにため息をついた。



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EDIT [2012/10/08 08:30] 高天原で恋に落ちた Comment:0
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