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二人をそれぞれの自宅に送り届け、弘海とショーンも自分のマンションに戻ってきた。
「う~……」
「どうした?」
「橘さんと三芳さん……本当にあのまま終わっちゃうのかな……」
「それはもう二人で決めるしかないだろう」
「それはそうなんだけど……もっと出来ることないかな? 本当にもうこれで終わり?」
出来ることは、いちおうやったのだとは思う。
でも、達成感はなく、かえってもどかしさが増しただけだった。
ショーンは弘海を抱き寄せ、労わるように髪を撫でてくれる。
「後は二人の気持ちに任せるしかない」
「そう……だよね……」
ショーンに言われると、本当にそうだという気がして、弘海は何とかして自分の気持ちを納得させようとした。
「弘海と俺の時もそうだったが……恋愛というのは、そう思い通りにいくものじゃないだろう?」
「うん……確かに……そうだよね……」
弘海とショーンの時でさえ、結ばれるまでにいろんな葛藤がお互いにあったのだ。
橘と三芳だって、きっとさまざまに葛藤があるだろう。
「橘さんはどう思っているんだろうね……」
「さあ……どうだろうな。この間まで弘海のことを好きだった人だしな……」
「うーん……俺なんかより、三芳さんのほうがお似合いだと思うんだけどな……カッコいいし、仕事もできるし……橘さんのフォローをさせたら三芳さん以上の人なんていないとおもうし……」
弘海の言葉に、ショーンは苦笑するだけだった。
弘海は思わずため息をつく。
「俺……少しは二人のために何か出来たかな……?」
「出来たんじゃないかな。少なくとも、お互いの素直な気持ちを伝えることが出来た。夢の中で……という意識の中ではあるが」
「そうだよね……」
自己満足かもしれないが、そう思うしかない。
後はもう、二人の気持ちがどう消化されるのか……それを待つことしか出来ないだろう。
そういうふうに弘海の気持ちが落ち着くと、急激に眠気が襲ってきた。
考えてみれば、早朝から仕事に出て今は夜明けだから、完全に徹夜だ。
確かに定休日の前にしてもらって良かったと弘海は思った。
「眠い……ちょっと寝てもいい?」
「ああ……」
半分、目が閉じかけている弘海の体をショーンは抱き上げ、ベッドまで連れて行ってくれる。
そしてそのまま一緒に布団にもぐりこんできた。
「腕枕……してくれるの?」
弘海の問いかけに、ショーンは微笑んだ。
「ゆっくり寝るといい」
「うん……」
ショーンの腕の感触を頬に感じながら、弘海は目を閉じた。
眠気はすぐにやって来た。



「ん……っ……」
弘海が目を覚ますと、すでにもう朝ではなく、昼の時間帯のようだった。
顔の下にショーンの腕があって、隣からショーンの静かな寝息が聞こえてきた。
(ショーンだって徹夜だったんだし……疲れてるよね……)
弘海はショーンを起こさないように、そっとベッドから抜け出した。
明日、店に行くのが少し怖い。
昨夜の夢は弘海たちの仕業だとは気づいていないだろうが、あの夢のせいで、二人の別れが決定的になってしまったのだとしたら……。
ひと晩経って冷静に考えてみると、悪い結果ばかりが思い浮かんでしまう。
「はぁ……」
ため息をつきつつも、顔を洗い、歯を磨いて寝起きの体を覚ましていく。
ショーンはまだぐっすりと眠っているようだった。
国のほうでも忙しかったのかもしれない。
その上に、弘海との約束に間に合うように帰ってきてくれたのだから、昨日だって本当はけっこう疲れていたのかも……。
そんなことを思い、弘海は何となくショーンがかわいそうになった。
いつも自分に振り回されてばかりで、何だか気の毒だ……。
三芳は橘と弘海が似ていると言っていたけれども、確かに相手を振り回してしまっている点では、似ているといえるのかもしれない。
弘海は何だか申し訳ない気持ちになって、キッチンに立った。
朝食――もう昼食だが――は、ショーンが好きなパンケーキにしよう。
夕食はもちろん、オムライスの予定だ。
いつもの慌しい朝とは違って、今日は仕事が休みだ。
だから、美味しいご飯をたっぷりとショーンに食べさせてあげようと弘海は考えた。
「そうだ、オムレツも作ろう……それから、久しぶりにバーニャカウダソースをつくろうかな。野菜スティックと……」
いろいろと考えながら料理をするのは楽しい。
そして、それを食べてくれる相手がいるというのが嬉しい。
一人で食べるよりもずっと美味しいものにしようと思うし。盛り付けもきれいにしようと思う。
ウキウキするような気持ちで食事を作っていると、いつの間にかショーンが起きだしてきた。
「おはよう、今ご飯作ってるよ」
「ああ……」
少し眠そうな顔のショーンは、ちょっと幼く見えて何だか可愛い。
こういうのは、一緒に朝を迎えたものだけが見れる特権だ。
「何か手伝うことはあるか?」
「大丈夫だよ。顔洗ってきたら?」
「そうだな……」
眠そうな目を擦りながら、ショーンが洗面台に向かう。
その間にオムレツが焼きあがった。
隣のコンロで焼いていたパンケーキも、続々と焼きあがっている。
バーニャカウダソースに合わせる野菜も、もう切ってあるので、それを綺麗な透明のグラスの中に盛り付けていく。
ショーンが顔を洗って戻ってくる頃には、もうすっかり朝食の準備が出来ていた。
「あ、ちょうど良かった。これ運んで」
弘海が盛り付けの終わった皿を渡すと、ショーンがそれを運んでくれる。
後を追うように、残りの皿やコーヒーを運んで、弘海は言った。
「お腹すいたんじゃない? さあ、食べよう」
「すごいな……今日は豪華だ……」
ショーンが驚いたようにテーブルを見つめる。
「うん、頑張ったんだ。ショーンが昨日は頑張ってくれたし」
弘海の言葉にショーンは嬉しそうに笑い、パンケーキにバターをぬりはじめる。
一人だと自分で運んで、一人で食べて、一人で片付けるような味気ない朝食だけど。
二人だと、メニューも豪華になるし、ゆっくりと食べながら話をしたり出来て楽しい。
そんな当たり前の日常を弘海は一度失っているだけに、とても素晴らしいことだと思う。
こういうときに弘海は、勇気を出してショーンの気持ちを受け入れて良かったと心から思うのだ。



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