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沈黙がしばらくの間、続いてしまった。
話の接ぎ穂を探しながら、弘海は曖昧なことを言うのではなく、この際はっきりと三芳の気持ちを確かめてみたいと思った。
それぐらいの爆弾をしかけてみなければ、三芳の本当の気持ちを知ることは難しいかもしれない。
そう決心してショーンを見てみると、彼もそれが良いと言っているような顔をして弘海を見上げていた。
弘海は勇気を振り絞るようにして顔を上げた。
「あの……俺の勘違いだったらすみません……三芳さんは……その……」
「何だ?」
問い返してくる三芳の声も表情も優しく、弘海は次の言葉を吐き出すのにさらに相当の勇気が必要だった。
「その……三芳さんは……ひょっとして橘さんのことを好き……なんじゃないですか? 友達としてではなく……その……恋人にしたいという感じで……」
三芳は少し困ったような顔で、弘海の顔を見返してきた。
そして、少し笑うと、
「そうか、弘海にはそう見えるんだな」
何となく言い訳をするような調子で言った。
「え、えっと……俺が男と結婚してるからとか……そういうことじゃなく……人が人を愛することって、本当に素敵なことだと思うんです。そういう相手がいるっていうことが、本当にすごく素晴らしいことだと思うんです。たとえそれが異性でも、同性でも……」
「そうだな……」
三芳は微笑んではいるものの、多くを語るつもりはなさそうだった。
二人の間の言葉が途切れてしまい、弘海は少し焦り始めた。
「すみません……俺……えらそうなことを言える立場ではないんですが……この間言っていた三芳さんの好きな相手って……橘さんのこと……ですよね?」
三芳は何も答えなかった。
「本当に差し出がましいことを言ってすみません。もう怒られたり嫌われたりするのも覚悟のうえで……あえて言いたいんです。店を辞めないでください。橘さんを……見放さないでください……」
「俺は別に健介を見放したりは……」
「でもきっと、橘さんはそう思っていると思います。もうこれ以上、三芳さんに無理を言うことは出来ないって……だから引き止めなかったって言ってました……」
三芳は再び黙り込んでしまった。
「本当に……『ル・レーヴ』は三芳さんがいないと成り立たない店だと思うんです。三芳さんがいなくなることを、他のスタッフも不安に思っています。三芳さんがどれだけ店にとって大切な存在だったのか……みんな解っています。でも……一番それを感じているのは、俺は橘さんだと思うんです」
年下の弘海が言うようなことでないことは重々に承知していたが、このままでは橘と三芳は二度と取り返しのつかない別れをしてしまいそうだった。
大好きな二人だから、そんな別れをして欲しくない。
出来れば今までと同じように、いや、それ以上に仲良くして欲しいと思った。
そして、もしも可能ならば、三芳の思いが遂げられれば良いのにと弘海は思う。
「三芳さん……辞めないでください……」
三芳は答えなかった。
沈黙だけが長く続いてしまい、弘海はどうしていいか解らなくなった。
腕の中のショーンを見てみたけれども、何を言うでもなく、じっと弘海のことを見返してきた。
「すみません、俺……帰ります。店のこと……もう一度考えてみてください。橘さんも……本当は絶対に三芳さんに辞めてもらいたくないと思っているはずです」
三芳はやはり何も言わなかった。
弘海は三芳に頭を下げ、逃げるようにして部屋から出ていった。



「あーあ……失敗しちゃったかなぁ……」
ショーンを腕に抱きながら、弘海は家路をとぼとぼと歩く。
ものすごく後味の悪い気分だった。
何かをしたいと思っても何も出来なくて、何とか自分に出来そうなことを見つけてしようとしてみても、上手く行かない。
こういうのを空回りというのだろうか。
「空回り……空回り……だよね……」
ショーンに話しかけてみても、首を傾げたように見つめてくるだけだ。
「もういいよ。元に戻っても」
弘海はそっと黒猫を地面におろした。
いつの間にか小さな黒猫は姿を消し、ショーンの顔が弘海を見下ろしていた。
「ね……どう思う?」
「弘海は出来ることをした。後は二人で解決するしかないだろうな……」
「でも、あの調子だと……難しそうだよね……」
「かもしれないな」
ショーンの言葉に、弘海は何だか追い詰められたような気持ちになる。
「何とか……すること出来ないかな……」
弘海が泣きそうな顔で訴えると、ショーンは少し考えるような仕草をする。
難しそうな顔をしているので、やはりショーンの魔法を駆使しても無理なのかもしれないと弘海は諦めかけたそのとき。
ショーンはふと思いついたように口を開いた。
「夢の中で二人を合わせてみるか……」
「夢の中!?」
弘海が驚いたような声を上げると、ショーンは微かに笑う。
「厳密に言うと、夢ではないんだが……半分眠っているような状態にして、現実では行くことの出来ない場所へ連れて行く。そうすれば、おそらく二人は夢の中で会っているような気持ちになるだろう。現実では話さないことも、話すことがあるかもしれない」
「そんなことできるの!?」
「二人ともそれほど猜疑心が強いほうではないみたいだし……まあ、何とかなるだろう」
「猜疑心か……でも、三芳さんのほうはけっこう冷静だと思うよ。橘さんも、意外に冷静だなって思うときがあるし……大丈夫かな?」
「それでも、好きな相手をずっと信じて待ってきたんだ。大丈夫だと思う」
「そうか……そうだよね……」
「魔法を使って催眠にかかったような状態にするんだ。あまりにも猜疑心が強すぎる相手には、まったく役に立たない方法だが……まあ、上手く行くように祈ってくれ」
「うん、解った」
「失敗したら……ちょっと厄介なことになる」
「厄介なこと?」
「魔法の存在がバレてしまう」
「そうか……魔法を使わないと行けないところに行くもんね」
「騒ぎ立てられたりすると、余計なものまで呼んでしまうかもしれない。それなりにリスクのある方法だが……試してみてもいいか?」
「うん。ショーンを信じてるよ」
弘海が生真面目な顔をして頷くと、ショーンは笑いながら弘海の頭を撫でてくれた。



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