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次の店の定休日、弘海はショーンと一緒に彼の国に向かった。
その行程は弘海にとっては不思議なことばかりだった。
ショーンと手を繋いで歩いていると、ふいに景色が変わり、気がつけば違う場所にいる。
そしてまた歩いていくうちに景色が変わり、ま別の場所にいる。
それを繰り返していた。
時間にすると、一時間か二時間ぐらいだろうか。
そうやって歩いていくうちに、景色がそれほど変わらなくなった。
いつの間にか、周りには砂漠の景色が広がっていた。
その砂漠も数歩あるけば、オアシスのような場所に移動し、やがては街へと移動していく。
「すごい……街だ……」
「ああ、もうじき俺の国に着く」
「へええ……ショーンの国もこんな感じ?」
「もう少し活気があるかな」
「この街も十分に活気があると思うけど」
道の端々には露店が並んでいて、それを見て立ち止まる人たちの熱気もすごかった。
どこの国も、買い物となると人は熱狂してしまうものらしい。
「これ……ショーンの手を離したらどうなるの?」
弘海はふと気になって聞いてみた。
「迷子だな」
ショーンはそう言って笑う。
「こんなところで迷子になったら大変だなぁ……」
弘海は本気でそう思い、ショーンの手を強く握った。
その瞬間、また景色が変わった。
「あ……」
弘海の目の前に現れたのは、先ほどの街よりも、さらに整備されたまるで都市のような街だった。
まるで宗教建築物のような背の高い建物もいくつもあり、市場のように露店が立ち並ぶ通りも混在している。
確かに先ほどの街よりもさらに活気に満ち溢れている街だった。
「ショーンさま、弘海さん、お迎えにあがりました」
気がつくと、そこにリュウスの姿があった。
「リュウス、久しぶりだね」
見知った顔に会い、弘海は何だか嬉しくなった。
「このたびはおめでとうございます」
リュウスは丁寧に弘海にお辞儀をした。
「あ、いえ……ど、どうも……」
弘海がおめでたいということは、つまりはリュウスにとってはおめでたくない結果になってしまったわけで。
弘海はどういう顔をして良いのか解らなくなった。
「ここからは車を用意してあります。どうぞ」
リュウスが指さした先には、青い馬が二頭いて、どうやらそれは馬車のようだった。
「青い馬だ……こんな馬、初めて見る……」
ショーンが先にその車に乗り、弘海を抱えあげてくれた。
リュウスは後方の馬車に乗り込んだようだった。
「リュウス……大丈夫かな……」
弘海が呟くと、それにショーンが答えた。
「父のほうから丁寧に謝罪をしてくれたようだから、大丈夫だろう。家からも咎められることはないはずだ」
「そうじゃなくて……ショーンのこと、好きだったんだろ……その気持ち……大丈夫なのかなって……」
「リュウスは魔力を作る能力に特に優れている。婚約が解消された瞬間から、国中の名家から婚約の申し込みが殺到しているらしい」
「その中で……リュウスはちゃんと自分の好きな人を見つけることが出来るのかな……」
「さあ……それはリュウスが決めることだからな」
「そうだよね……」
弘海の中のリュウスに対する罪悪感は当分は消えそうになかった。
おそらく、リュウスがちゃんと好きな人を見つけ、結婚するまで続くに違いない。
「あれが俺の家だ」
「え……」
ショーンに言われて馬車の窓の外を見てみると、小高い丘の上のような場所に、エキゾチックな形をしたお城が建っていた。
西洋のお城などとは形が違う。
どちらかというと、中東などの建築物のような形のお城だった。
まだかなり距離があるというのに、その大きさや豪華さははっきりと解る。
「ショーンって……本当に王子様だったんだね……」
弘海はしみじみと言い、ため息をついた。
その王子様と自分が結婚するというのは、まだ実感が沸かない。
やがて丘の上のお城は間近に迫り、それは遠目で見て感じたものよりも、さらに巨大で豪華だった。
「すごい……本当にあんなところに入るの?」
「他にどこへ行くんだ?」
「…………」
ショーンは生まれて育ったお城だから気負うことはないかもしれないが、弘海にしてみれば場違いも良いところだった。
結婚式が終われば、よほどのことがない限りは特にまたここへ来る必要はなく、弘海は今までと同じような生活をして良いのだという。
そのことに弘海は心から安堵したが、やはり本当にそれで良いのかとも思ってしまう。
もちろん、あの城で暮らすことを求められても、弘海は頷くことは出来ないのだけれども。
いろんな不安を抱えながらも、馬車はどんどん城に近づいていった。



ショーンが先に馬車から降り、弘海を抱えて降ろしてくれた。
馬車を降りたところには、何人かの人が跪いて待っていた。
一人だけ立って待っている人がいる。
ひときわ豪華な衣装を着たその人が、たぶんショーンの父親なのだろう。
豊かな髭をたたえたその顔は、ショーンとはほとんど似ていなかったが、優しそうな顔をしていた。
「父上、これが俺の伴侶の弘海だ」
ショーンがすぐに弘海を紹介してくれた。
「ほぉ、これは素晴らしく美人な伴侶だな。お前が異国まで行ってつれてきただけのことはある」
「あ、あの……どうも……」
「不肖の息子じゃが、弘海……ショーンをよろしく頼むぞ」
「は、はい……頑張ります!」
何だか自分を家族の一員として認めてもらえた気がして、弘海は嬉しくなった。
「式は明日じゃ。今宵は弘海を歓迎するための宴を設ける故、それまでの間、ショーンに城の中の案内でもしてもらうと良い」
「は、はい!」
ショーンの父は弘海に優しく微笑みかけると、たくさんの家来を引き連れて城の中に入っていった。
「はぁ……緊張したぁ……」
ショーンの父親一行が完全に城の中に入ったのを見届けて、弘海は大きく息を吐いた。
「2,3日の辛抱だ。多少、窮屈な思いはさせるかもしれないが」
「慣れないと疲れるよね、この空気……」
「実を言うと、俺も弘海の部屋にいるのが一番居心地が良い……」
「うん、すごく解るような気がするよ」
弘海は心からショーンに同情した。



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