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城の中に入った弘海は、また目を丸くすることになった。
ありとあらゆる場所が色とりどりの花で飾られ、廊下には綺麗な衣装を来た人たちが並んで、弘海たちが通るたびに丁寧にお辞儀をするのだ。
どうやら迎えてくれているようなのだが、慣れない弘海にとっては気を使うばかりだった。
いったい何人の人が出迎えてくれているのだろう。
廊下はずっと先の先まで続いていて、その両脇に整列した人の姿もずっと先まで見える。
「とりあえず、お部屋で着替えをなさってください」
リュウスが前に立って道案内をしてくれるようだった。
リュウスもこうした状況には慣れているようで、堂々としていて、弘海から見てみると、何だか少しかっこ良くも見える。
弘海はショーンの手をしっかりと握り締めながら、遅れないように歩いていく。
やがてようやく、大きな扉のようなものの前に立った。
どうやらこの向こうが部屋になっているようだった。
部屋の前に二人の兵士のような格好をした人がいて、その二人が扉を開いた。
扉の向こうには花で彩られた部屋があって、その向こうには庭園のようなものが見えた。
「すごい……」
まるでリゾートホテルの部屋か何かのようなしつらえだった。
「弘海さん、こちらへ。着替えをお手伝いします」
「あ、う、うん……」
カーテンのようなもので仕切られた場所でリュウスが待っていた。
ショーンはまた別の仕切りの向こうに姿を消した。
「この衣装は、ショーンさまが作るように指示を出されたものなんですよ」
「へえ……そうなんだ」
「この衣装のほかにも、明日の結婚式で着るものも、すべてショーンさまの指示で作られたものです」
リュウスが今手にしている衣装は、絹を使ったもののようで、色は淡いブルーとグリーン、そして紫が綺麗に入り混じったものだった。
裾の長い異国の衣装は、着てみると何だか少しくすぐったいような感じがした。
「よくお似合いですよ」
リュウスはにっこりと微笑んだ。
「あ、ありがとう」
弘海が戸惑いながらも礼を言うと、リュウスは何か言いたげな顔をして見つめてきた。
「どうしたの?」
弘海は首をかしげる。
「いろいろとすみませんでした……弘海さんが本当にショーンさまのことを好きだったなんて思いもしなかったものですから……意地悪なことを言ったり、失礼なこともたくさん言ったと思います」
確かにいろんなことを言われて、傷ついたこともあった。
特に、祐一と付き合っているふりをするように言われた時は辛かった。
けれども、そうやってリュウスに追い詰められなければ、弘海は自分の気持ちをちゃんと見極めることが出来なかったに違いない。
「リュウスには感謝してるよ。リュウスがいなかったら俺……ちゃんと自分の気持ちに気づけなかったと思うから……」
弘海の言葉を聞きながら、リュウスは目を伏せた。
きっとまだ、ショーンに対する気持ちの整理も出来ていないのだろう。
「ショーンさまのこと……よろしくお願いします」
そう言って少し寂しそうに微笑んだリュウスに、弘海はしっかりと頷いた。



「綺麗だけどさ……歩きにくくて仕方がないんだけど……」
着替えを終えた弘海は、城の中をショーンに案内してもらうことにした。
けれども、歩くのが大変だった。
裾の長い衣装といえば、昔に浴衣を着たことがあるぐらいだから、弘海は歩こうとして何度も裾を踏んでつまづきかけたりした。
そのたびに、ショーンが支えてくれ、何とか転んだりはしないで済んではいるけれども。
ショーンの衣装も同じように裾の長いものだが、やはり慣れているせいもあるのだろう、ショーンは弘海のように躓いたりするようなことはまったくなかった。
せっかくショーンが選んでくれた衣装だから、あまり文句を言うのも悪いと思い、弘海は出来るだけ我慢した。
歩きにくいことを除けば、城の中をショーンと一緒に見て回るのは楽しかった。
見るものすべてが珍しいものばかりだったし、弘海が興味を持ったものを、ショーンは面倒くさがらずにいちいち説明してくれた。
特に弘海が興奮したのは、魔法を使ったイリュージョンのようなものを見せてくれるショーで、弘海たちが広間のようなところに着いた瞬間から始まったので、すべて弘海たちだけのために行なわれたショーだったのかもしれない。
屋内にあるはずの広間が、いきなり空の上のようになったり、星空の中に漂っているようになったり。
そこに竜のような生き物が現れたり、小さな妖精たちが光の粉を撒き散らしながら空中を浮遊したり。
魔法でなければ見れないような素晴らしいショーだった。
弘海はこのショーにとても感激したが、夜の宴や明日の結婚式ではもっとすごいパフォーマンスが行なわれるとショーンに聞いて、眩暈がしそうだった。
興奮しすぎて疲れ気味になった弘海を、ショーンは自分が一番好きだという場所へ連れて行ってくれた。
そこは城の一番高いところにある展望台のようなところだった。
歩くのは大変だということで、そこまでは魔法で一気に移動した。
ここでは魔法があまりにも日常的に使われているので、弘海ももう驚いたりすることは少なくなっていた。
小さな展望台のような城の頂上に着くと、その眼下に街や砂漠が広がっていて、驚くほどの絶景だった。
「すごい……綺麗……」
眼下の街全体や風景が黄昏の色に見える。
こんな景色は日本では絶対に見ることが出来ないだろう。
広くて綺麗で、いつまで眺めていても飽きそうになかった。
それにこの場所は狭いから、どこへ行ってもついてくる家来のような人たちもここまではついて来なかった。
ようやく人の目から解放されて、弘海は心からホッとした。
「ずっと誰かが見てるのって……本当に疲れるね」
「城の中だから安全とは限らないからな。ついて回る気持ちは解る」
「そうなんだ」
「以前にも余所の者が紛れ込んでいて、城内で父が襲われかけたことがあった」
「ええ?」
「だから父も伴侶を城に住まわせないのだろう」
「いろいろ大変なんだね……王様も王子様も……」
「ここだけは魔法学者が綿密に結界を張り巡らせているから安全なんだ。入れるのは二人までと決まっているし」
「へえええ……」
目を丸くする弘海に微笑んで、ショーンは唇を重ねてきた。
弘海は素直に瞳を閉じ、ショーンの背中を抱きしめた。



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