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城の中を見て回った後は、夜まで部屋で休憩することになった。
広い部屋の中央にある豪奢なテーブルの上には、たくさんの果物や食べ物、飲み物などが置かれてある。
弘海は少し果物をつまんだものの、それほど食欲はなかった。
考えてみれば、朝からほとんど何も食べていないのに、お腹がすく気配がない。
部屋にいる間はショーンと二人きりだったので、それだけが救いのような気がした。
「疲れたか?」
「うん……少し……」
勢いで結婚することを了承してしまったものの、国や文化が違うということが、これほど疲れるものだと思わなかった。
最初は物珍しかったりで楽しかったのだが、だんだんお腹いっぱいの状態になってしまったのだ。
ショーンが腕で弘海の頭を抱え込むようにして抱き寄せてきたので、そのままショーンの体に体重を預けた。
「疲れているなら、無理に夜の宴に出る必要はないぞ」
「でも……せっかく俺たちのためにしてくれてることなんだし。出ないわけにはいかないよ……」
「お前が疲れてしまったら意味がない」
「ん……大丈夫……しばらく休んでたら復活すると思うから」
目を閉じると、まぶたの裏がチカチカしている。
あまりにも豪華なものばかり見すぎてしまって、完全に目が疲れきってしまっているようだった。
ショーンが髪を撫でてくれる。
その手の動きは優しくて、手の感触はとても温かい。
ショーンが好きだという気持ちに偽りはないけれども、結婚するというのはまた違う労力が必要なのだと思った。
「結婚……しないと駄目かな……」
「え……」
「何か……本当に身分違いっていうか、住む世界が違いすぎるっていうか……」
ひょっとすると、こういうのをマリッジブルーというのだろうか。
ショーンを嫌いになったということでは決してないけれども、唐突に結婚したくないという気持ちが強くなってきた。
ショーンが聞いてくれる体勢に入っているから、もう喉元まで出てきた言葉を止めることが出来なかった。
「何か勢いだけでここまで来てしまった気がして……こんな大事なこと、勢いで決めてよかったかなって思って……」
「俺と結婚したくない?」
「したくないっていうか……もうちょっと……考えてから返事をしたら良かったかなって……ちょっと後悔してる……」
すべて言ってしまってから、弘海はそのことにまた後悔した。
自分の気持ちがよく解らなくなってきた。
泣きたい気持ちになって、それでも泣くのを堪えていると、ショーンが顔をのぞきこんできた。
「延期するか?」
「え?」
「結婚式」
ショーンは怒っているような様子はまったくなく、本気で弘海のことを心配しているようだった。
弘海は少し焦った。
「でも……もう明日なんだよ? 夜には宴だってあるんだし……今は夕方だから、夜はもうすぐだし……」
「お前に無理はさせたくない」
ショーンが本気で言っていることを理解して、弘海は慌てて首を横に振った。
少し目が覚めたような気分だった。
「ごめん……自分で決めたことなのに……何かあまりにもいろいろ違いすぎてちょっと混乱してたみたい……」
「弘海……本当に無理はしなくていい。別に結婚式が伸びたところで、誰も困りはしない」
「ううん……本当にごめん。もう大丈夫。自分で決めたことなのに、俺がどうかしてたみたい……」
「弘海……」
「でも、ショーンが結婚式を中止にしてもいいって言ってくれたことは嬉しかった。本当に俺のことを思ってくれてるってことだから……」
「俺は弘海のことを誰よりも愛しているからな」
あまりにも面と向かってそんなことを言われたので、弘海は思わず顔をそらせた。
ストレートに愛を語られることにも、なかなか慣れることが出来ない。
「それに、お前が珍しく正直に自分の思っていることを話してくれたことが嬉しかった」
確かに、自分の気持ちをストレートに気持ちを伝えることは、弘海は苦手だ。
ショーンは以前から、そのことに気づいていたのだろうか。
「弘海……俺のことを愛してるか?」
「うん……」
ショーンに促されて頷くのがやっとだった。
でも、それだけではショーンは不満のようだ。
「もっと、ちゃんとはっきり言って欲しい」
「言ったじゃん……」
「うん……だけじゃ解らない」
まるで意地悪をされているような気分になって、弘海は瞳を潤ませる。
でも、ショーンは弘海の言葉を待っているようだった。
「愛……してる……ショーンのこと……」
必死に声を震わせながら言うと、まるでご褒美みたいに優しく抱きしめられた。
「その言葉が聞けただけでいい」
「ショーン……」
抱きしめられながら、弘海はふと思った。
ショーンも不安を感じていたのではないかと。
お互いに、今までとは違うところへ踏み出すのだから、何も弘海一人が不安を感じているというわけではないだろう。
ショーンだって、弘海ほどではないにしても、何某かの不安を感じていても不思議ではないはずだ。
「ショーンも……不安になったりするの?」
「いつも不安だらけだ」
「嘘ばっかり……」
ショーンが不安らだけなんて、弘海には信じられなかった。
弘海にはないものをたくさん持ってるし、いつも自信たっぷりに見えるのに。
そんな弘海の気持ちが通じたのか、ショーンは苦笑した。
「本当だ……お前はあまり自分の気持ちをちゃんと言ってくれないし……だから、いちいち確認するんだ。不安だから」
「そう……だったの?」
「そうに決まってるだろう。不安じゃなければ、確認する必要なんてない」
「そうか……ごめん……」
弘海が謝ると、ショーンは抱きしめる腕に力を込めてきた。
「良いことも、悪いことも、もっと言葉に出して伝えて欲しい。そうでないと、俺はいつも不安になる」
「うん……気をつける……」
「無理はしない程度でいいから……」
「うん……」
ショーンも不安を感じていたということが解って、弘海は何だかとてもホッとした。
自分だけが不安にさせられているのではないかと弘海は思っていたが、そうじゃなかった。
弘海自身も、ショーンを不安にさせないように努力をしようと思った。
自分の気持ちを伝えることは、弘海にとっては苦手なことだけど。
それを克服していくことで、財産も何もない弘海がショーンを少しでも幸せにすることが出来るんじゃないかと思った。



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EDIT [2012/02/16 08:20] 猫目石のコンパス Comment:0
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