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宴の前にはもう一度着替えることになり、リュウスが手伝いに来てくれた。
着替えをするのに手伝ってもらうというのは申し訳ない気がするけれど、弘海一人ではどの紐をどこで結べばいいのか、どれをどの順番で着ればいいのかさっぱり解らなかった。
用意されていた衣装は、昼間に着ていたものとはまた違う雰囲気のもので、宴にふさわしい金の刺繍が入ったものだった。
ベースの生地は少し濃い藍色に近い青だった。
全体的にオリエンタルな雰囲気がするのは、刺繍の模様がどことなくアジアを思わせるような模様だからかもしれない。
衣装が変わっても歩きにくさは相変わらずで、弘海は着替えを終えたショーンの腕に縋るようにして、宴の会場に向かった。
会場は昼間に案内してもらった時には準備中で見ることが出来なかった大広間で、恐ろしいほどの広さがあった。
宴会の少し豪華なものぐらいの予想をしていた弘海は、途方もないそのスケールに、思わずため息をついた。
そこに楽器を持った楽団のような人たちや、踊り子のような衣装を着た人たち、見たこともないような色をした動物や、目が回りそうなご馳走があった。
前方の中央にはいくつかの豪華な椅子とテーブルが置かれてあって、そこがどうやら弘海たちの座る場所らしかった。
弘海は少しうんざりとした気分になりながらも、今日と明日だけの辛抱だと自分に言い聞かせた。
宴で披露される音楽や踊りや、魔法のショーなどは楽しめそうだし、ご馳走だって楽しみだ。
確かに気が重いこともたくさんあるけれど、ちゃんと目を開いてみてみれば、楽しい事だってたくさんある。
それに、たった二日の間のことだし、弘海が暗い顔をしているよりは、楽しそうにしているほうが、ショーンだって嬉しいだろう。
予想通り、弘海とショーンが座らされたのは、観覧席のような場所の中央の椅子で、ふたつの椅子がぴったりとくっついている。
二人が主役だと言わんばかりの配置だった。
きっと大勢の人が、弘海とショーンに視線を集中させるのだろう。
「疲れたらすぐに部屋に戻ってもいいぞ」
「うん……大丈夫。こんな経験、滅多に出来ないと思うし」
弘海が言うと、ショーンは笑った。
ショーンの父である王様は、弘海たちよりも少し後ろの席に着いた。
弘海たちが座っているものよりも豪華で大きな椅子がふたつ寄り添うように配置されている。
「ね……お父さんの伴侶の人も来るの?」
「さあ……どうだろう。俺も相手を見たことがあるのは二度ほどだから……ただ、父の伴侶が来ても来なくても、席はああいう配置になるんだ」
「そうなんだ……本当にほとんどお城にいないんだね」
「それで構わないと言うことになっているから、問題はない」
まるで弘海を安心させるみたいにショーンは言った。
正直に言って、弘海はその狙い通りにホッとした。
いくらお城に住まなくて良いと言われても、年に一度は挨拶に来ないといけないんじゃないかとか、こういう行事があれば呼ばれるんじゃないかとか、そういう覚悟はしていたけれども、どうやらそこまで神経質になることもなさそうだった。
やがて宴が始まると、目の前に目まぐるしくいろんなものが登場した。
見たこともないような弦楽器や打楽器を使った楽団の演奏は、聴いたこともないような不思議な音楽を奏でた。
そこへ踊り子たちが登場し、ゆったりとした曲にあわせて踊りだす。
男と男が結婚するような国だから、女性は少ないのかと思ってみたりもしたけれど。
踊り子の半数は女性だった。
曲調が少しリズムのあるものに変わると、今度は曲芸師のような人たちが出てきた。
玉に乗って出てきたかと思えば、その口から雲のような煙を出して、その煙の上に玉ごと飛び乗って、煙で出来た橋を渡るというような見世物を披露した。
確かに、昨日お城を案内してもらう最中に見たショーとは、人数的な規模も、見世物の規模もまったく違っていた。
弘海にとっては、やはり魔法のショーが珍しかった。
中でも興奮したのは、互いに不思議な幻獣のような生き物を出し、それに戦わせるという見世物だった。
口から炎を噴出す竜のような獣や、首が三つある神話に出てくるケルベロスを思わせるような獣など、とても日本では見ることの出来ない珍しい獣がたくさん出てきた。
体躯の大きな獣が出てくると、広間の大きさが倍以上になり、その空間を使って戦いが繰り広げられた。
「すごいねえ……」
弘海が感嘆のため息をつくと、ショーンが説明をしてくれた。
「あれは幻獣師と呼ばれる職業の者たちだ。ああやって空想上の生き物を実際に現し、それを自在に動かす魔法を使う。有事の際には、貴重な戦力として召集されることもある」
「へええ……見世物としてだけじゃなくて、実用的なんだね~」
「こうして成果を折々に披露する機会があることで、幻獣師たちはその時のために鍛錬を怠ることなく続けることが出来る」
弘海はただ物珍しく、楽しんでショーを見ていただけだけど、そこにそんな深い意味があるとは思わなかった。



宴は夜半過ぎまで続き、ようやくショーンと二人で部屋に戻った時には、弘海はぐったりと疲れてきっていた。
夜着に着替え、自分の家のものとは比べ物にならないほど大きなベッドに入ると、ショーンは自分の腕の中に弘海を抱いた。
「無理をさせて悪いな」
「ううん……すごく楽しかったよ……珍しいものばかりたくさん見れたし……やっぱり魔法がすごいね……」
「弘海の国には魔法がないのが不思議だな。便利なものなのに」
「そうだね……でも、魔法がないのが当たり前だったら、それほど不便でもないよ」
「そうか」
弘海の言葉にショーンは笑った。
「今日はもうゆっくり寝るといい。明日はまた明日で疲れるだろうから」
「うん……」
ショーンの体温が温かいこともあって、弘海は目を閉じるとすぐに寝息を立て始めた。



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EDIT [2012/02/17 08:39] 猫目石のコンパス Comment:0
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