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ようやく拝殿にたどり着くと、弘海は賽銭を投げ入れ、拍手を打って手を合わせた。
(どうか今年も、健康で楽しく毎日を過ごせますように! パン作りが上達しますように!)
ありきたりの願いをこめてしばらく真剣に手を合わせた。
こんな時ぐらいしか真剣に神社に参拝することはないから、何だか少し神聖な気持ちになった。
ようやく参拝を終えて振り返ると、ショーンとリュウスは少し離れたところで何かを話していた。
確かに男同士ではあるが、恋人です、と言われれば素直に納得してしまいそうな雰囲気だ。
(もうややこしいこと言ってないで、くっついちゃえばいいのに……)
弘海はそう思いながらも、心のどこかに引っかかりを覚えていた。
ショーンがリュウスと一緒に国に戻って結婚する……それがもっとも平和的で、誰にとっても幸せな道だというのは、あまりにも明らかだった。
だから弘海としても、二人の仲むつまじい姿を見れば、祝福したいような気持ちになるのが当然のはずなのに。
いったい何が心の中で引っかかっているのだろう……。
「弘海? どうしたの?」
気がつくと、橘が心配そうに弘海を見つめていた。
「あ、いえ……何でもないです。今年も良い年になるといいなぁって思って……」
弘海はそう答えたが、橘はまだ心配顔をしている。
「何か心配事でもあるの?」
「い、いえ……大丈夫です! あ、あの、じゃあ、そろそろ俺たち帰りますね……今日はご一緒してくれてありがとうございました!」
「でも、二人は邪魔しづらい雰囲気みたいだけど……」
言われてショーンとリュウスのほうを見てみると、仲良く並んで神社の建物を眺めたりしている。
確かに、寄り添いながら建物を眺めている絵はまるでデートのようで、邪魔をするのは申し訳ない雰囲気だ。
「あ、だ、大丈夫です! もう連れて帰りますから!」
とりあえず初詣という用事は終えたのだから、後はもうさっさと帰るのみだった。
リュウスを残してこれ以上また余計なことをされてしまっても困るし。
「ショーン、リュウス……帰るよ!」
弘海が声をかけると、二人は振り返った。
「あ、僕たちもう少し神社を見学してから帰ります。弘海さんはどうぞお先にお帰りください」
リュウスのその言い方に、弘海は思わずむっとした。
別に愛想悪く言われたわけでもないし、嫌味のような感じで言われたわけでもない。
何が原因でむっとしたのか、弘海は自分ではよく解らなかった。
ただ、感情だけが先走りしてしまう。
「あ、そう。じゃあ、俺は先に帰る」
弘海は思わずつっけんどんに言い返し、二人に背を向けた。
歩き始めると、いきなり強く腕を引かれた。
振り返ると、ショーンだった。
「俺も帰る」
「ショーン……でも、リュウスはまだ神社を見たいみたいだし、もう少し付き合ってあげれば?」
「もう十分に付き合った」
「だけど……」
弘海は今になって自分の態度を反省した。
もっとにこやかに二人に話しかけたほうが良かったかもしれない。
「ショーン君、弘海は俺たちが借りていくから、君はもう少し婚約者と見学していったら? 珍しいものばかりだろうし」
声がして振り返ると、いつの間にか、橘と三芳が傍にいた。
助け舟が来たと思い、弘海も橘の提案に乗った。
「あ、あの……じゃあ、俺、橘さんたちと一緒に帰ろうかな……だからショーンはリュウスと帰って来たらいいよ。合鍵持ってるよね?」
「俺も弘海と一緒に帰る」
「ショーンはリュウスの相手をしてあげればいいじゃん」
思わず苛立って言い放った弘海の言葉に、傍らにいた橘も三芳も驚いたような顔をした。
普段の弘海は、そうした不機嫌な言葉を吐くようなことはしないからだ。
「とにかく……俺は行くから。ショーンはリュウスの相手をしてあげて。許婚なんだしさ!」
「許婚じゃない」
「ちょ……!!」
「え?」
「ええ?」
ショーンの言葉に、橘と三芳が困惑したような声を上げた。
「リュウスは許婚じゃない。俺の伴侶はお前だけだ。お前以外の伴侶など、望むつもりはない」
「…………」
橘と三芳は目が点になり、リュウスはまた泣き出しそうな顔をした。



「もう、どうするんだよ。橘さんと三芳さんの前であんなことを言って……」
いろんな言い訳やら弁解をして、何とか橘たちと別れてマンションに戻ってきた弘海だが、まさに頭を抱えたい状況だった。
最後まで橘と三芳は混乱しているようだったが、その混乱も当然のことだと弘海は思う。
リュウスがショーンのことを許婚だと紹介して度肝を抜かれたはずなのに、二人は何とか異国の風習を理解し、温かいまなざしで見守ってくれていたのだ。
しかし、今度はそのショーンが弘海を伴侶だと言い出した。
さすがにこの展開についていくのは、誰であっても難しいだろう。
「お前が一人で帰ろうとするからだ」
「だって……リュウスはまだ神社にいたそうだったし……」
「お前が帰るのに、俺が神社に残る理由なんてないだろう?」
「でも……だからって、あんなデタラメなこと言わなくていいのに……伴侶だなんて言って……休み明けに橘さんや三芳さんとどんな顔して会えばいいんだよ……」
本当に弘海は泣きたい気分だった。
「ショーンさま、弘海さんは嫌がっているのですから、いい加減に諦めてあげてはいかがですか? 弘海さんには、橘さんや三芳さんというお相手の候補もいらっしゃることですし」
リュウスは毅然とした口調で言ったが、その言葉にも、弘海はまたため息をつきたい気分だった。
(どっちも男じゃん……何でそういう話になるんだよ……)
どうしても、リュウスは弘海を男とくっつけたいようだった。
「それに弘海さんは、三芳さんからもらった手袋を、今日も大切にはめていらっしゃいましたし」
「なに?」
リュウスの言葉に真っ先に反応したのはショーンだった。
「な、何でそれを知ってるんだよ!?」
弘海が言うと、リュウスは微笑んだ。
「魔法でお三方の会話に聞き耳を立てていました」
「もらったものはちゃんと使わないと申し訳ないからっていうことだから、別にリュウスが考えているような理由じゃないよ!」
弘海は思い切り否定した。
これ以上、弘海を男とくっつけようとするような真似をして欲しくなかったからだ。
「何だ、そういうことか」
弘海が思い切り否定したことで、ショーンのほうは安心したようだった。
「だからね、ショーン。別に橘さんと三芳さんのことを何とも思ってないからって、ショーンのことを好きになるとか、そういうこともないからね!!!」
弘海は念を押すように言った。



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EDIT [2012/02/02 08:22] 猫目石のコンパス Comment:0
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