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その日から、リュウスは仕事からの帰り道のたびに弘海の説得にかかった。
もしも成人までにショーンが伴侶を決めることが出来なければ国がどうなってしまうのか。
たとえ何かの間違いがあって弘海がその伴侶になることがあったとしても、日本とはあまりにも文化や習慣の違う国のことだから、苦労が多いだけかもしれないということ。
半年でショーンの気持ちを変えるためには、一時的にでも良いから弘海に別の恋人が出来ることがもっとも効果的だということ。
これまでにも聞かされてきたことがほとんどだったが、毎日のように諭されれば、弘海も自分がこうして存在しているだけで、何か悪いことをしているような気になってしまう。
(俺は自分の気持ちに正直にいきたいだけなんだけど……嘘をつきたくないっていうだけなんだけど……それって、そんなに悪いことなのかな……)
今日も店の帰り道に同じような話をリュウスにされ、弘海はうんざりとした気持ちでため息をついた。
「リュウスってさ……」
「はい?」
「俺にこの話をするために、店でバイトをすることにしたの?」
「それもありますが……僕が家にいると、ショーンさまは必ず弘海さんを迎えにいくという口実で外に出てしまいます。ショーンさまの体力や魔力の問題もありますが、また追っ手がやって来ないとも限らないですし……」
「ああ、そうか……今はリュウスが追い払ったから、おとなしいんだっけ……?」
「しばらくの間は安全だと思います。けれども、いつまで続くか解りません」
「そっか……」
弘海はリュウスが来る前のことを思い出した。
確かに、かなり頻繁にマンションの部屋の外まで追っ手が来ていたし、そのたびにショーンは黒猫になったりしていた。
そうしたことがまた起こらないとも限らないのだ。
「僕としては、できるだけ早く、ショーンさまに魔力の補給をしていただきたいのですが……」
補給といえば、おそらく何日か前に弘海と交わしたキスが最後だろう。
けれども、とても軽いキスだったから、それほど補給されたとも思えない。
本来ならば、リュウスに補給をしてもらうのが一番良いと思うのだが、ショーンはリュウスは伴侶にはなり得ないという理由で一切手を出さないのだという。
「…………」
弘海はもう一度ため息をつく。
自分がどういう行動を取ればいいのか解らない。
「あれえ? 弘海じゃん」
「あ……祐一……」
呼ばれた声に振り返ると、弘海を見つけた祐一が駆け寄ってくるところだった。
そういえば帰省組の祐一と会うのは久しぶりだ。
「今バイトの帰り?」
祐一に聞かれて、弘海は頷いた。
「うん。祐一は?」
「俺はようやく実家から帰ったところ。明日から大学だしさ」
「そっか。お帰り」
「バイトも明日から行くぜ。長い間休んじゃったから、今月は懐が厳しいなぁ」
「実家はどうだった?」
「どうだったって言われても、親戚の子供の遊び相手だよ。子供って何であんなに元気なんだろうな……おんぶしてくれ、肩車してくれ、ゲームしようって……本当に俺、毎日ぐったりしてたよ……」
本気で苦笑して肩をすくめる祐一に、弘海は思わず笑った。
面倒見の良さが、いかにも祐一らしい。
「そっちは? 友達?」
祐一はようやくリュウスの存在に気づいたようだった。
「リュウスっていうんだ。今、店でバイトしてる」
「へええ、リュウスって名前なんだ? 変わった名前だなぁ」
「ええと、日本人じゃないんだ。だから……」
弘海が言うと、祐一はこだわりなく笑った。
「なるほど。よろしく、リュウス。販売? それとも製造?」
「よろしくお願いします。今は製造も販売も、どちらも勉強させていただいています」
リュウスは愛想良く笑ってぺこりと頭を下げる。
「じゃ、俺はスーパー寄って帰るわ。明日バイト先で、かな?」
「うん。また明日」
「リュウスもまたな」
軽く手を挙げて、祐一は駅のほうに向かって歩いていった。
「今の方は……?」
「うん? 店のバイトで販売担当してる。内海祐一っていうんだ。本業は大学生だよ」
弘海の言葉に、リュウスは少し考えるような仕草をした。
そして、何かを思いついたかのように顔をあげる。
「弘海さん……あの人に協力を頼むという案はいかがですか?」
「は?」
「祐一さんに、一時的に恋人のふりをしてもらう……そういう案です」
リュウスの提案に、弘海は慌てて首を横に振った。
「ちょ……祐一も男だって……恋人とかあり得ないから……」
「でも、そんなことを言っていては、いつまで経っても話は進みません」
「それは……そうだろうけど……」
「橘さんや三芳さんでは、頼みづらいところもあるかもしれませんが、祐一さんの場合なら、事情を説明すれば気軽に協力してくれるのではないでしょうか?」
「そりゃ……祐一は事情を話せば協力してくれるだろうけど……」
「僕が明日、上手く話してみますから。弘海さんも協力してもらえませんか?」
「でも……」
弘海が渋っていると、リュウスは咎めるような視線を向けてくる。
「何か協力したくない理由でもあるのですか?」
容赦なく問い詰めてくるリュウスに、弘海は思わず肩をすくめた。
「別に……理由っていうか……嘘をつくのが嫌だし、その嘘に祐一を巻き込むのも嫌だ……」
それが自分の本心かどうか弘海は解らなかったが、とりあえずもっともらしいことを言った。
けれども、当然のことながらリュウスがそれで納得してくれる様子はなかった。
「たった一度の嘘で、ショーンさまも……そして国にいるたくさんの人々も救われるんです。祐一さんには僕が上手く話して、弘海さんには迷惑をかけないようにします」
「迷惑とか……そんなことは別にいいけど……」
「じゃあお願いします。いいですよね?」
「解った……」
リュウスに押し切られる形で弘海は頷いたが、心の中は納得できない気持ちでいっぱいだった。



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EDIT [2012/02/06 11:19] 猫目石のコンパス Comment:0
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