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「まだ熱下がらないなぁ……」
熱は二日目になってもまだ下がらなかった。
上がる気配はないものの、微熱より少し高い熱が続いている。
結局、今日も大学の講義を休んでしまったのだが、朝からおとなしく寝ていたというのに、まだ完治しそうにない。
体温計をサイドテーブルに置いてため息をついたとき、部屋の扉をノックする音がした。
「はい?」
扉の向こうに向かって声をかけると、お手伝いの篠原の声が返ってきた。
「坊っちゃん、真咲くんが来られてますけど」
「ああ……」
真咲淳平……大学の同級生った。
「入ってもらっていいよ」
はい、と返事をして篠原が立ち去ってから数分後、淳平が部屋に顔をのぞかせた。
すらりと高い身長は、漣にはとても及ばないけれど、全体のバランスがアイドル並みに良い。ついでに顔も、下手に街を歩いていれば、スカウトされてしまいそうなぐらいに良かったから、大学の女子学生たちは、いつも淳平を目で追っている。
「熱出したんだって?」
「うん……もうだいぶ下がったけど」
淳平とは小学校からの付き合いだ。
いわば、幼馴染といってもいい。
同じエスカレーター式の私立校で小学校から大学までずっと一緒でもある。
淳平の父親は国内でも有名な酒造会社のオーナー一族で、次男ではあるが、いずれはその会社で取締役クラスになるのだろう。
大学にはそうした未来の社長や重役候補がたくさんいた。
他には家系がとても高貴な人や、政治家や有名人の子女などだ。
悠樹だってもちろんその一人だった。悠樹も大学を卒業したら父親の会社に入り(ひょっとすると最初は関連会社へ修行のような形で入社するかもしれないが)いずれは父親の後をついで会社の経営を引き継がなくてはならなかった。
だから授業の内容はけっこう難易度が高いし、休んでしまえば遅れを取り戻すのはけっこう大変だった。
「ほら、ノート」
「あ、ありがとう」
「俺が写しておこうかと思ったんだけど、どうせそれじゃ頭に入らないだろうと思ってさ」
「これ、今日借りてていい?」
「ああ。テストまでに返してくれたらいいよ」
「ありがとう。助かる」
淳平はちょっとジャニーズ系なんて女の子たちから騒がれている顔に人懐っこい笑みを浮かべた。
「淳平のノートってわかりやすいよなぁ」
ノートをぺらぺらとめくりながら、感心したように言う。ぱっと見ただけで要点がすぐにわかるし、何より字が綺麗だった。
「習字は小さい頃からやらされてたからなぁ」
「なるほどな」
「明日は出て来れそう?」
「うーん……たぶん大丈夫。熱が下がってれば」
「熱が下がらなかったら、またノートを持ってくるよ」
「うん、ありがとう」
押し付けがましくない淳平の言葉に、悠樹はいつものように居心地の良さを感じる。こういう人間だから、小学校からずっと親友のような関係を続けてこれているのだと思う。
「じゃ、そろそろ俺帰るわ」
「うん」
「治って出てきたら、『ING』いこうぜ」
「ああ、いいな。そうしよう」
『ING』というのは大学の近くにあるカフェの名前で、そこのランチが安い上に味も大学のカフェテリアなんかよりずっと美味しいのだ。
お互いに安いランチを選ばなければならないほど金に困っているわけではなかったが、それでもやはり、安くて美味いというのは何だかとても貴重なものに感じるのだ。
ランチの時間は並ぶのが必須だが、そこで昼食を食べるのが悠樹たちの楽しみのひとつだった。
じゃあ……と言って淳平が部屋を出ようとすると、また部屋の扉をノックする音がした。
「坊っちゃん、漣さんが来られてますけど」
「え……」
一瞬にして曇った表情を、淳平が少し心配そうに見ていた。
悠樹は慌てて愛想笑いをする。
「ああ、従兄弟なんだ。淳平、今日は本当にありがとう」
「ああ……じゃあ、また大学で」
「うん」
淳平が開けた扉から、篠原が顔をのぞかせた。
「漣さん、お通ししても大丈夫ですか?」
「うん……」
「じゃあ、お連れしますね」
そう言って背を向けた篠原の後を追うようにして、淳平も立ち去っていった。



「友達が遊びに来るぐらいなら、だいぶ良くなったんだな」
部屋に入るなり、まるで決め付けるように言った漣は、どことなく不機嫌な様子だった。
何となく、やきもちでも焼いているのかなと思ったが、曖昧に頷くだけの返事をしておいた。
触らぬ神に祟りなし、だ。
「仕事、忙しいんじゃないの?」
気遣うように言ったつもりの言葉は、さらに漣を不機嫌にさせたようだった。
「忙しくて来れない方が良かったか?」
「そういう意味じゃないよ……ごめん。何か心配かけちゃったみたいで……」
「思ったより元気そうだしな」
皮肉たっぷりの言葉は、淳平を部屋に入れていたことに対するあてつけだろう。
悠樹は苦笑交じりに反論する。
「まだ熱……下がってないよ」
「でも、友達を連れ込むぐらいには良くなってるんだろ?」
言い放つ言葉はとことん不機嫌で、悠樹はまた熱が上がりそうだと思った。
漣が口を閉ざしたので、悠樹も何も喋らなかった。
もともと、どちらもそれほどお喋りというわけじゃないから、沈黙は10分ぐらいは続いていたと思う。
先にその沈黙を破ったのは、漣のほうだった。
「さっきのあれ……誰なんだ?」
そう言うなり、漣は悠樹の顔を強引に引き寄せた。何をするでもなく、そのままじっと悠樹の目を見つめてくる。
「大学の友達。講義のノートを貸してくれたんだ」
「それだけ?」
「うん、それだけ。まだ熱も下がってないし、話もちょっとしただけだよ」
「あぁ……確かにまだ熱いな……」
そう囁くように言って、漣は唇を重ねてくる。
「んっ……」
すぐに舌が割り込んでこようとしたので、悠樹は仕方なく唇を開いた。
キスにしても、愛撫の受け方にしても、慣れないながらもどうすればいいのかもう何となくわかっていた。
たった一晩であれだけ執拗に、しかも巧みに体を弄ばれたのだから、漣によって覚えこまされたといってもいいだろう。
そういう自分の変化に、悠樹は戸惑いを感じつつも、もう慣れるしかないと開き直った。
慣れてしまえば、もっと体も……そして気持ちも楽になるかもしれない。
「ん……んふ……ッ……」
漣の舌は遠慮なく悠樹の唇を割って入ってくると、その舌を絡めとり、まるで所有者を覚えこませるように執拗に口腔を蠢きまわる。
お互いの唾液が口の端から溢れ出しても、漣は構うことなく舌を絡ませ続けてくる。
熱がどんどん上がっていきそうだ……。
そう思ったが、とりあえずは漣の気の済むまで好きにさせることにした。



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EDIT [2011/06/28 07:45] Breath <1> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/06/28 15:57] EDIT
>シークレットさん

ブログ村の新着から来てくれたんですね!
ありがとうございます!
感想も、とても嬉しいです、ありがとうございます!
二人の心境をとてもよく理解してくださっていて、心理描写はこれからもしっかり力を入れていこうと改めて思わせていただきました^^
またぜひ読みに来ていただけると嬉しいです♪
[2011/06/28 17:08] EDIT
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