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翌日、目を覚ますともう漣の姿はなかった。
ベッド脇のサイドテーブルの上に、部屋の鍵が置いてある。
どうやらこれは悠樹のための合鍵のようだった。
ベッドから起き上がろうとして、体がふわふわしているのに気づく。
どうやら熱を出してしまったみたいだった。
もともとそれほど丈夫な体ではないのに加え、昨日の行為が体に負担をかけてしまったのだろう。
このままこのベッドで眠ってしまいたい気もしたが、夜になれば漣が戻ってくることを考えると、早く家に帰っておきたい気持ちになる。
このまま部屋に居座っていれば、昨日のようなことをまたしなくてはいけないかもしれない。
大学の講義もあったが、とても大学にはいけそうになかった。
昔の漣はとても優しくて、悠樹のことも気遣ってくれたりしたものだが。
あの夏の日のキス以外には、悠樹が嫌がるようなことはいっさいしなかったはずだ。
昨日は悠樹が何度も「もう許して欲しい」と訴えたにも関わらず、聞いてはもらえなかった。
「アメリカに行って、性格が変わってしまったのかな……」
ふと、そんなことを考える。もちろん、それだけではないだろう。この10年の間に、漣は両親の離婚ということも経験している。
さらには破格のスピードで大学を卒業し、大学院まで卒業し、事業に成功して、自分の父親よりに救いの手を差し伸べることが出来るほどの金も手に入れた。
これで変わらないほうがおかしいのだろう。
いずれにしても、昔の……悠樹が大好きだった漣と今の漣が同じ人物だと思ってはならないということだった。
「帰ろう……」
ふらつく体を引きずるようにして、漣が着せてくれたパジャマを脱ぎ、丁寧にたたんでベッドの上に置く。自分の着替えはベッドのそばにおいてあったので、何とかそれに着替えた。
着替えをするだけで、ものすごく体力を消耗したような気分になる。
体のあちこちには漣が触れたり舌を這わせてきた感覚がまだ残っていて、特に尻の辺りには、まだ彼が中にいるような異物感が残っていた。
何とか立ち上がり、悠樹は着替えの横においてあったバッグを肩からかける。
そして合鍵を握り締め、漣の部屋を出た。



「ただいま……」
そう言って玄関を開けると、今日は明らかに血色の良い篠原がにこやかに悠樹を迎えてくれた。
「おかえりなさい、坊っちゃん」
「漣兄さんから連絡あった?」
「はい。ご融資くださるそうで。今日お話し合いがあるそうですよ。坊っちゃんも漣さんにお会いになったのですよね?」
「うん……」
「坊っちゃん?お顔の色が悪いみたいですけど……」
篠原が気遣わしげに悠樹の顔を覗き込んでくる。
「ちょっと風邪引いたみたい。部屋で寝てるから、母さんには後で伝えておいて」
そう言って、悠樹は部屋への階段を上る。
階段をのぼる足取りもふらついていて、背後から篠原が心配そうに見ているのが解った。
今日はあまり家族と一緒にいたくない。昨日あったことを気取られるのが嫌だったからだ。熱があって体がだるいというのもあった。
まるで逃げるように部屋に滑り込み、自分のベッドに身を投げ出した。



すごく寝苦しくて、顔は熱いのに寒気がする。
ベッドに倒れこんだ後の記憶はほとんどなかった。
篠原と母親が何度か部屋に来て、水や薬を持ってきてくれたが、それ以外はずっと、うつらうつらとしていた。
薬が効いてきたからかもしれない。
何度目かに目を覚ますと、外はもう真っ暗だった。いつの間にか夜になっていたみたいだ。
悠樹はふと思いついて、バッグの中から携帯を取り出した。
マナーモードにしていたから気づかなかったが、漣から何度も着信があったみたいだ。
さすがにこれはかけ直したほうが良いかもしれない。
漣との取引は、「恋人になる」ということだった。たった一晩の関係で終わるはずもないというのは、悠樹もわかっている。
自分の気持ちも体も、すべてはもう自分の自由にはならないのだった。
悠樹は自分の自由と引き換えに、父親の会社を救ったのだ。
薬のおかげで少しだけ冴えてきた頭で、何とか漣の携帯に電話をかけてみる。
ほとんどかけた瞬間ぐらいに、相手が出た。
「ごめん……何回もかけてもらってたみたいで……」
「具合……悪いのか?」
声音で察したのだろう。漣が気遣うように聞いてくる。
「うん……ちょっと熱が……」
「昨日無理させすぎたからだな。悪い……制御がきかなくて……」
「でももう……薬が効いてだいぶ良くなったから……」
「看病にいきたいけど、今日は仕事の手が離せない。お前の親父さんの件もあるから……」
漣はどこか申し訳なさそうに言う。
悠樹としては、見舞いや看病に来られるほうが気を使うし、休めないから、漣が忙しいのは内心ありがたいことだった。
「……気にしないで。一日寝ていれば治ると思う」
「会いたいな……」
そう呟く漣に、悠樹は思わず苦笑する。
「今日は無理……休ませて……漣兄さんも仕事……あるだろ……?」
「そうだな……」
「じゃあ……もう寝ていい……?」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
電話を切ると、少しホッとする。
いちおう何だか義務のようなものを果たした気がしたからだ。
恋人としての義務。
いったいいつまで、恋人の義務を続ければいいのだろう。
漣の気が済むまで?
きっとこんなことは漣の気まぐれだ。
いつか悠樹にも飽きて、新しい恋人を見つけるときが来るだろう。
その時まで我慢すればいい……。
有り余るほどの金を持ち、恵まれた体格と容姿を持った漣を、女性や……男性だってほうっておくはずがない。
いつか自分は捨てられる。そして解放される。
それを忘れてはいけないと思う。
万が一にも気持ちまでのめり込んでしまったら……。
そう考えかけて、悠樹は思わず首を振る。
そんなことはない。
自分はきっと、漣を心から恋人として思うことは出来ない気がする。
熱のせいか、確信を持ってそう言い切ることは出来なかったが。
ややこしいことは全部、熱が下がってから考えよう。
そう思って目を閉じると、悠樹はすぐに眠りに落ちていった。



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EDIT [2011/06/27 09:17] Breath <1> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/06/27 20:39] EDIT
>シークレットさん

コメントありがとうございます!
すごく励みになります!
更新は速いときもあれば、ちょっと時間がかかるときもあると思いますが、
頑張って更新しますので、また読んでくださると嬉しいです♪

二人の関係はある意味どっちもドSだなと思いつつも、
気持ちが自然に流れていくように描ければ良いなぁと思っています(笑)。
[2011/06/27 22:09] EDIT
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