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鬱々とした気分で悠樹が日々を過ごしていても、世間は陽気なクリスマスソングで溢れていた。
今日はクリスマスイブのイブ。
大学は今日から冬休みに入っていた。
漣の携帯に電話が繋がらなかったあの日以来、悠樹は気落ちすることが多くなった。
気がつけば、いつも漣のことを考えている。
すべては自分が決めたことなのだと思ってみても、それでもやはり、街で漣を探してしまうことをやめることは出来なかった。
もう連絡をつけることも出来ないのだからと自分を納得させようとしても、漣の顔ばかりが浮かんでしまう。
だけど、今日は久しぶりに少し気分転換が出来そうだった。
斉藤が日本にやってくるのだ。
定期的なカウンセリングの時期だったのだが、今回は斉藤のほうが日本に来てくれるのだという。
本当は冬休みを利用して、悠樹のほうからニューヨークに出向く予定だったのだが。
斉藤のほうから日本へ行くと連絡があったのは、一週間ほど前だった。
今日は待ち合わせをして、一緒に食事をする約束をしている。
久しぶりに斉藤に会えることも嬉しかったし、一人でいるよりは誰かといるほうが、その時間だけでも漣のことを思い出さずに済みそうだった。
けれども、悠樹の憂鬱な気分なんて、斉藤にはすぐにばれてしまいそうだ。
隠し通せるようなことでもないので、いっそのことすべて話してしまおうか……などとも考えてみる。
漣との関係に関しては、一貫して自分で考えるようにと言っていた斉藤だから、今回もそういう答えが返ってきそうな気はするけれど。
待ち合わせ場所で斉藤を待っていると、白いものがちらちらと落ちてきた。
「雪かぁ……」
時間を確認しようと思って携帯を取り出してみると、メールが一通届いていた。斉藤からだった。
「待ち合わせ場所変更?」
斉藤が指定してきたのは、都内にあるホテルの一室で、どうやらそこで食事をしながら、近況を聞きたいということだった。
急な変更に少し戸惑いながらも、悠樹は指定されたホテルに向かった。



ホテルの部屋はセミスイートの部屋だったが、わりと広めのタイプで、リビングもゆったりとしたしつらえだった。
「こんな時期に、よくこんな部屋が空いてたよな……」
悠樹はちょっと驚いた。
クリスマスイブイブとはいえ、外もホテルの中もカップルだらけだ。
こういう洒落た部屋は、予約で埋まっているものとばかり思っていた。
「斉藤さん……まだ来てないのかな……」
斉藤がすでにいるものと思ってやって来たがその姿はなく、悠樹はとりあえずソファに腰を下ろした。
部屋の家具を眺めたり、外の風景に目を向けたりしていると、部屋の扉がノックされる音がした。
「あ、今開けます」
斉藤だと思った悠樹は、ソファから立ち上がって出迎えようとしたのだが。
「え……」
そこに入ってきた人物を見て、悠樹は一瞬、心臓が止まりそうになった。
「漣……兄さん?」
そう呼ばれた漣のほうも、驚いたような顔をしている。
「どうして……お前が……?」
「えっと……斉藤さんが……」
「斉藤か……」
漣はそう言って、困ったように息を吐く。
「あ、ご、ごめん……間違いかな……ちょっと斉藤さんに電話をかけてみる」
悠樹はそう言って慌てて携帯を取り出してみると、また新着のメールが届いていた。斉藤からのメールだった。
『Merry Christmas&GOOD LUCK!!』
メールにはそれだけが書かれてあった。とても医者のやることとは思えなかった。
悠樹はしばらくそれを唖然として見つめていたが、漣のほうもどうしていいか解らずにしばらく立ち尽くしていた。
どうしよう……。
悠樹は携帯を握り締める。
その窮状を察したのか、漣のほうが口を開いた。
「……何かの手違いだったみたいだな。俺のほうはテツヤからここへ来るように言われた」
「そ、そう……」
何だか二人が今頃どこかでワイングラスを合わせて乾杯してそうな気がした。
「ともかく、すぐに斉藤を呼ぶから、お前はここに……」
そう言って漣は悠樹に背を向けた。
悠樹は無意識のうちに漣を追いかけ、手を伸ばしていた。
そして、その大きな背中を抱きしめるようにして腕を絡めた。
「行かないで……」
そう言ったとたんに、涙が溢れ出してきた。
やっと、自分の本当の気持ちが、口をついて出てきたような気がした。
「悠樹……」
「行かないで……」
もう一度悠樹がそう言うと、漣は悠樹に向き直り、正面からその体を強く抱きしめた。
「本当の……ことを言うね……」
悠樹は漣の胸に顔を埋めたまま言った。
「俺……漣兄さんのこと……好きだったみたい……」
「悠樹……」
「自分でも自分の気持ちがずっとよく解らなくて……ただ縋る人が欲しかっただけなんじゃないかって思ったこともあって……」
だから漣に別れを告げた。
そのはずだったけれども。
実際には漣のことが好きで苦しかったのだ。
「でも、やっと解った……俺、漣兄さんのこと、好きなんだ……」
もう一度、自分の気持ちを確かめるように言うと、漣はいっそう強く悠樹を抱きしめた。
「俺もだ……というか……俺はずっとお前のことが好きだったぞ?」
「今も……?」
不安そうに顔を見上げた悠樹に、漣はちょっと照れくさそうに笑った。
「今も、だ。もっと正確に言うなら、この先もずっと……だな」
「俺も……漣兄さん以外の人なんて……考えられないよ……」
「悠樹……」
漣は悠樹の唇に自分の唇を重ねてくる。
久しぶりの漣の唇の感触に、悠樹はまた涙が溢れてしまいそうになる。
漣は大きな手で悠樹の頭や頬を撫でながら、何度も何度も唇を重ねてきた。
まるで離れていた間の時間を埋めるかのように、長いキスをした後、漣はそっと悠樹の体を離した。
「これ以上は……やめておこう。止まらなくなりそうだ……」
漣はそう言って苦笑いをする。
これ以上……の意味は、すぐに解った。
おそらく、悠樹のことを気遣ってくれたのだろう。
悠樹自身も、この先の行為を考えると、少し足がすくむような気持ちになる。
だけど……。
「やめなくていい……」
そう言って、悠樹は自分から漣の体に抱きついた。
「悠樹……」
「続けて……」
「いや……やめておこう……」
「嫌だ……」
「大丈夫だ……離れない。傍にはずっとついているから……」
悠樹は漣の体に抱きついたまま、首を横に振る。
「怖くなったら言うから……だから……」
悠樹はそう言って漣を促した。
漣は戸惑った様子を見せながらも、再び悠樹を抱きしめた。
「辛くなったら、すぐに言え」
「うん……大丈夫……」



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EDIT [2011/08/07 07:05] Breath <2> Comment:0
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