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「そっちはどうだった?」
淳平に聞かれて、テツヤは首を横に振る。
「いません。そろそろ一時間が経つ……もう東京にはいない可能性もあるかも……」
「くそ……どこに行ったんだ……」
主要な駅で車を停めてはその姿を探したが、悠樹は一向に見つからなかった。
とりあえず動ける人間は全員が動いて探しているものの、まだ見つかったという連絡は入ってこない。
テツヤは時計で時刻を確認すると、頷いた。
「レンの会議が終わったな……ちょっと連絡を入れてきます」
そう断って、テツヤは淳平から離れ、携帯電話を取り出した。
会話は英語で行なわれているようだった。
淳平は気になってテツヤの会話に聞き耳を立ててみる。
テツヤは必死に漣を落ち着かせようとしているようだった。
あの落ち着き払った男が、取り乱すようなことがあるのだろうか……。
淳平はそんな漣の姿を想像することは出来なかった。
たとえ悠樹に関わることとはいえ、冷静に報告を受けているような印象があったのだが。
テツヤの言葉を聞いていると、何度も落ち着くように戒めているのが解る。
まだ危険に晒されていると決まったわけでもないし、手を尽くして探しているとテツヤは訴えていた。
電話を切ったテツヤは思わずため息を吐いた。
「とりあえず、レンも合流するらしい。出来ればレンには安全な場所にいてもらいたかったんだけど……」
「普通はそうだろ。恋人が危険かもしれないのに、自分だけ安全な場所にいる男のほうが俺はサイテーだと思うぞ」
「でも、冷静に考えてみてよ。レンが来たら結局探す人の何人かをレンの護衛に回さなきゃいけない。つまり悠樹を探す人数が減るんだよ……」
「まあ、それはそうだろうが……」
「それを必死に説明したのに、とにかく行くの一点張りだし……ユウキもレンも、自分たちが危険に晒されてるって自覚がなさすぎる……」
事情を聞いて納得したのか、淳平はちょっと気の毒そうな顔をした。
「苦労するな……」
「まったくだよ……聞き分けの良い雇い主に恵まれなかった僕の不運だ……とりあえず、もう一度体勢を立て直すしかないな」
テツヤはため息混じりに言って、方々散らばる仲間たちに電話をかけはじめた。



「お客さん……どの辺りまで行きますか?」
横浜に入り、居留地を通り過ぎた辺りで、タクシーの運転手が聞いてきた。
「あ、この辺りでいいです。遠くまでありがとうございました」
カードで支払いを済ませ、悠樹はタクシーを降りた。
見覚えがあるような……初めて来るような……曖昧な感触だった。
観光地となっている居留地付近はずいぶん昔に遊びに来たこともあるし、学校の課外授業で訪れたこともあった。
けれども、そこを通り過ぎた住宅街まで来ると、とたんに記憶があやふやになる。
何となく気の向くままに歩き始める。
にぎやかな場所でなかったことは覚えている。
閑静な住宅地だった。
しかも、わりと敷地の広い家が並んでいたような気がする。
つまり、豪邸が立ち並ぶ地域だったはずなのだ。
ちょうど悠樹が歩いている辺りは、まさにそのような場所だった。
一般的な住居よりも遥かに大きく、高い門扉に囲まれる邸宅が並んでいる。
文礼に連れていかれたあの邸宅を思い起こそうとすると、足が前に進むのを嫌がってしまう。
そうやって嫌がる足を急かしながら、悠樹はあの邸宅を探した。
「思い出せ……」
そう自分に言い聞かせながら、あの日の記憶を必死に手繰り寄せる。
「こっちじゃないな……」
この先に広がる風景にはみ覚えがない。
先に進むのはやめて戻ろうとしたとき、背後に人の気配を感じた。



「ええ?レンがいなくなった!?」
携帯電話の相手を怒鳴りつけるようにしてテツヤは事情を聞きだす。
電話を切ったテツヤは相当に怒っているようだった。
悠樹がいなくなって、そろそろ3時間が経とうとしている頃だった。
「いなくなったって?」
淳平の問いかけに、テツヤは忌々しげにうなずいた。
「そうらしい。ちょっと目を離した隙に……だそうです」
「どこ行ったんだろうな……」
「心当たりを思いついたのかもしれないけれど……それにしても、何のために僕たちが必死になって警護しているのか、まったく理解してくれない」
「それだけ必死だということか……」
「たとえ必死だとしても、馬鹿です、馬鹿。どうして二人とも、自ら危険の海に飛び込むような真似をする……」
そう言って、テツヤは大きなため息を吐いた。
「手がかりは何もないのか?」
淳平の言葉に、テツヤは大きく首を横に振った。
「スタッフの車を奪って行ったそうなので、探すのにはちょっと時間がかかりそうだ……案の定というか、持たせておいたGPSも携帯も切っているし……」
「厄介だな……」
「ともかく二人を探すしかありません。ジュンペイも何か心当たりを思い出したら、すぐに教えてください」
「ああ、解った」



漣は車をある場所に向けて走らせていた。
文礼の件があった後、万が一の事態にそなえて悠樹に以前プレゼントした腕時計に、最新型のGPS発信機を取り付けておいたのだが、途中まで上手く追跡していたその信号が途絶えたのだ。
おそらく誰かがGPSの電源を切断するなり壊すなりしたのだろう。
何か良くないことが起こった証だった。
携帯の電源は悠樹自身がGPSを警戒して切っていたようだが、時計に仕掛けたものについては、先ほどまでは気づいていなかったということだろう。
悠樹の足取りが途絶えたのは横浜方面だった。
その位置ははっきりと頭の中に叩き込み、追跡を避けるために携帯もGPSも両方切っておいた。
本来ならテツヤに合流し、その理由を話して一緒に向かうべきなのだろうが……。
相手を下手に刺激したくないという思いが、漣にはあった。
複数で行けば、必ず相手を刺激する。
そうなると、悠樹に対する危険のリスクも高まることになるのだ。
警察に訴えるというのは、この際論外だろう。
治外法権という理由でまともな捜査が行なわれないのは明らかだった。
漣は悠樹の行動が不可解で仕方がなかった。
あれほど思い出すことを恐れていた記憶に関わる文礼に、悠樹が自ら近づくことはないと思っていたのだが……。
おそらく悠樹は文礼に接触しようとしたに違いない。それも自分の意思で。
そういう確信めいた思いが、漣の中にはあった。
もしも悠樹が文礼に接触したとしたら……。
文礼があれ以上、悠樹に何もして来ないという保証はまったくなかった。
ひょっとすると、あの日の行為が文礼の所有者である汪に漏れたという可能性だってある。
漣を襲った相手について、汪の手の内のものではないかという話はテツヤから聞いていた。
そうなると、悠樹が狙われる可能性も出てきておかしくはなかった。
いずれにしても、厄介な相手に悠樹が捕まったであろうということは想像がついた。
信号待ちの交差点で、漣はため息を吐く。
無事でいて欲しい……。
一刻も早く悠樹の無事を確かめたい……。
それだけが今の漣の願いだった。



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EDIT [2011/07/28 07:11] Breath <2> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/28 22:14] EDIT
>シークレットAさん

コメントいつもありがとうございます!

取り乱すといっても、静かに取り乱すというか、そんな感じなのかな?
暴れて叫んでというようなものではないのかも?
私もちょっと想像がつきません(笑)

時計の件は発信機はあとでつけたんだと思います。
買ったときにはさすがにそんなことする余裕もなかっただろうし(笑)
私の想像では、たぶんお風呂入るときにはずしてるときとか??
そんなことに気づきそうな悠樹くんではなさそうですし(笑)
漣の気持ちとしてはたぶん、文礼のことなどもあったので、万が一に備えてというところではないでしょうか(笑)
ちょっと説明不足な感じもありましたね(汗)
機会があれば、書き加えておきたいと思います!

また次回も頑張って更新していきますので、ぜひ読みに来ていただけると嬉しいです!
[2011/07/29 08:00] EDIT
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