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マンションのベッドに悠樹を寝かせると、テツヤは氷で冷やしたタオルを悠樹の額に乗せてくれる。
熱っぽさを感じていたから、すごく気持ちよかった。
実際に熱をはかってみると、38度を超えていて、悠樹もテツヤも驚いてしまった。
「ありがとう……冷たくて気持ちいい……」
「どういたしまして。ちょっと寝たほうがいいよ。車の中ではあまり寝れなかっただろうし」
「うん……」
「薬、飲んだ?」
「あ、今から飲む」
部屋の薬箱を漁って、テツヤが解熱剤を見つけてくれたので、それをミネラルウォーターで喉に流し込む。
「うん、これで大丈夫だね」
悠樹が薬を飲むのを見届けて、テツヤは満足げに頷いた。
「ユウキが眠っている間に、レンとジュンペイに電話しておくよ。もうちゃんとマンションについたから安心してって」
「本当に……ありがとう。迷惑かけちゃってごめんなさい……」
「こんなのは迷惑なんかじゃないよ。ユウキはちょっと気を使いすぎ」
「そう……かな……」
「もっとワガママでもいいと思うよ。僕に対してもそうだし、レンに対しても」
「ワガママか……難しいな……」
「ハイハイ、難しいことは考えずにもう寝なさい」
「はい……寝ます」
何だか母親みたいなテツヤとのやり取りにちょっと笑って、悠樹は目を閉じた。
まだ頭がくらくらする。
特に風邪をひいたような感じもなかったのに、なぜ急に熱なんか出たんだろう……。
ぼんやりとそんなことを考えたけれど、すぐに薬が効いてきて、まぶたが重くなってきた。



夢を見ていた。
不思議な家の中に自分はいて、そこに真っ黒な人影がいる。
何だか日本とは違うエキゾチックな雰囲気の家の中。
甘い不思議な香りが漂ってきて、その香りで頭がくらくらした。
ここはどこだろう……。
周りを見渡そうにも、自分の視界は驚くほど狭かった。
体を動かすことが出来ないのだと気づいたときに、誰かの声が聞こえたような気がした。
「あ……」
目を覚ますと、漣が顔を覗き込んでいた。
「大丈夫か?うなされていたみたいだったが……」
「夢……だったんだ……」
「夢?」
「嫌な……夢を見てたみたい……」
そう言って息を吐くと、漣が額に手を当ててきた。
「熱があるからだろう」
「うん……そうかも……」
「熱があるときは、嫌な夢をよく見る」
「うん……」
そう言われてみれば、いつも熱が出たときに見る夢は、恐ろしい夢ばかりだったような気がする。
「いま……何時?」
「夕方の5時ごろだな」
「仕事……大丈夫なの……?」
「テツヤにさっさと帰れと追い返された」
「ええ?」
「悠樹の看病をしろって」
「そんな……俺、大丈夫だよ。仕事が大変だったら、仕事に行ってきて……」
そう言いかけた悠樹の唇をふさぐように、漣は自分の唇を重ねた。
「ん……っ……んんっ、駄目……っ、風邪だったら……うつっちゃう……」
必死に漣を押しのけて、悠樹は言った。
「もしうつったら、俺が看病してもらうか」
「か、看病ぐらいするけど……でも、熱なんて出さないほうがいいよ……」
悠樹はうんざりしたように言う。
「大学だってまた休んだし……いい加減にいろいろやばそう……」
「とりあえず今はちゃんと体を直すことだけを考えろ」
そう言って、連は悠樹の頭を撫でる。
「でも、明日には熱も下がってると思うし……大丈夫だよ」
「明日は休んだほうが良くないか?」
「もうこれ以上休みたくない」
大学一年でこの状態だと、先が本当に思いやられてしまう。
もう大学は休まないと決めていた矢先に、今日も倒れてしまって……。
ノートは淳平に写させてもらうとしても、出席率だけはどうしようもない。
そんなことを考えてふと気がつくと、漣も何だか難しい顔をしていた。
「漣兄さん……どうしたの?」
「ああ、いや……とにかく今日はゆっくり休め」
「うん……あのね……」
悠樹はちょっと遠慮がちに漣を見つめる。
漣は顔を近づけてその言葉に耳を傾けた。
「寝るまで……一緒にいてもらっていい?」
「ああ……もちろん……」
漣はスーツの上着だけ脱ぐと、そのままベッドに入ってきた。
「スーツ……いいの?」
「どうせいつもクリーニングに出すし」
「でも……」
「明日は大学に行きたいんだろう?」
「うん……」
「だったら、早く寝ないと……」
「そうだね……ありがとう……」
悠樹がそう言うと、漣はその体を包み込むように抱きしめる。
漣の体温が、とても心強くて温かい。
熱が出て、弱気になっているからかもしれないけれど。
今はこの体温が悠樹にとっては必要だった。
テツヤにワガママになっていいと言われたけど。
ワガママってこういうことなのかな……などと考えているうちに、また眠気が襲ってきた。



悠樹が次に目を覚ましたのは、翌日の朝だった。
漣の姿はもうベッドにはなかった。
おそらく仕事に出かけたのだろう。
途中で起きずにずっと眠れたのは、漣が傍にいてくれたからかもしれない。
悠樹はベッドから起き上がろうとしたが、体がふらついて立ち上がることが出来なかった。
まだ少し熱があるようだった。
「うーん……どうしよう……」
熱が下がれば絶対に大学に行くつもりだったけど、この調子ではちょっと無理そうだ。
昨日漣にも行くと言い張った手前、行きたいのは山々なのだが、また大学で倒れてしまったりしたら、淳平にも重ねて心配をかけてしまうことになる。
体温計を取り出して熱を測ってみると、やはりまだ微熱が残っていた。
「はぁ……何でこんなに体が弱いんだろ……」
高校生ぐらいからは熱を出す回数は減ったが、それでも周りの同級生たちに比べると倍ぐらいは多かった。
うんざりとため息を吐いた瞬間、部屋の扉をノックする音がして、悠樹はちょっと驚いた。
「漣兄さん……?」
まだ漣は仕事に出かけていなかったのだろうか。
そう思って声をかけてみたのだが。
「ごめん、僕。具合はどう?」
声の主はテツヤだった。ちょっと遠慮がちに扉をあけて部屋をのぞきこんでくる。
「えっとね……今日はもう一日休もうと思って……熱が下がらないんだ……」
「そのほうがいいよ。レンもまだ熱が下がってないみたいだから、様子を見てやってくれって言ってて。それで来てみたんだ」
「そっか……ごめんね。なんか迷惑ばっかりかけて……」
「すぐに謝るのはユウキの悪い癖だよ。謝るのは本当に悪いことをしたときだけでいいんだからね!」
テツヤは冗談めかしてそう言ったが、やはり悪いと思う気持ちに変わりはなかった。
何だか自分の存在があるせいで、テツヤにも漣にも余計な負担をかけてしまっているような気持ちになる。
こんな後ろ向きな気持ちになってしまうのは、熱がまだ残っているせいなのだろうか……。
「タオル冷やしてくるよ!」
そう言って扉を閉め、テツヤはキッチンへ向かい、すぐに冷やしたタオルを持ってきてくれた。
それをありがたく受け取って額に乗せる。
「今日はレンから許可をもらっているから、リビングで待機してるよ。何かあったら、いつでも声かけて」
「うん……ありがとう……」
悠樹がそう答えると、テツヤは部屋を出て行った。
ベッドから起きることは諦めて、悠樹は再び天井を見つめる。
天井はとても高くて、外からさしこむ日差しも明るい。
とても開放的な部屋なのに、悠樹の気持ちはすごく閉ざされているような感じだった。
「そういえば昨日……淳平が何か言ってたっけ……」
少し熱が下がったので、昨日のことを思い出す余裕もできてくる。
思い出してみれば、とても重要なことを淳平は言っていた。
文礼と関わりのありそうな企業が、漣に手を出しているのではないかという話だった気がする。
「文礼……」
その名前を口にしたときに感じた嫌な感触は、以前にも同じように感じた。
いつの間にかそのこともすっかり忘れていたはずなのに、昨日の淳平の話で思い出したのだ。
もしも文礼が今回の件に関わっているのだとすれば……。
そう考えてみて、悠樹は眩暈がしそうになった。
「俺が……あの時ついていったから……?」
漣との約束を破って、文礼についていったことが今回のことに繋がっているのでとしたら。
いったいあの時に何があったのか、もう一度思い出そうとしてみたが、やはり思い出すことが出来なかった。
「一緒に車に乗って……どこへ行ったんだっけ?」
どこか家のようなところ……。そんな雰囲気は覚えている。
「それで……どうしたんだっけ……」
そこからがもう思い出せない。
記憶はいつも、そこで途切れてしまう。
「でも……思い出さないと……」
もしもあの時のことが原因で漣を危険な目に遭わせてしまっているのだとしたら。



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EDIT [2011/07/25 07:22] Breath <2> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/25 21:35] EDIT
>シークレットAさん

いつもコメントありがとうございます!

テツヤはあれですね……何となくお母さんっぽいイメージが(笑)
怒ったらすごく怖そうです(笑)

思い出せそうで思い出せないときが、一番つらいだろうなぁと思います。
思い出したら思い出したで、またさらに辛そうな気もしますが。
漣はいま、すごく複雑な気分でしょうね。
状況的には漣にとってオイシイ状況であることには違いないのですが、同時に辛い状況でもあるのは自業自得というかなんというか(笑)

物語なのでどこかで区切りはつけると思いますが、とりあえず第二部はまだ続くので安心してください(笑)

毎回コメントをいただいて本当にありがとうございます!
また次回も頑張って更新しますので、ぜひ読みに来ていただけると嬉しいです!
[2011/07/26 08:15] EDIT
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