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翌日、悠樹が目を覚ますと、すでに漣の姿はベッドにはなかった。
寝起きの頭がいつも以上に重く感じるのは、昨日、斉藤といろんな話をしたからだろうか。
話がつまらなかったわけでもないのに、とにかく疲れてしまった。
そのせいで、斉藤が気を悪くしていないだろうかということがまず気になった。
悠樹は頭を軽く振って部屋を出た。



リビングには斉藤と漣の姿もあった。
まだ二人が出発していなかったことに、とりあえず悠樹はホッとした。
「漣兄さん、今日は遅くてもいいの?」
「ああ……今日は斉藤を送ってから仕事に行く」
「そっか……斉藤さん今日帰っちゃうんですね。昨日は何だか眠くて……先に寝てしまってすみませんでした」
悠樹がそう言うと、斉藤は人好きのする笑みを浮かべた。
「いやいや、気にしなくていいよ。悠樹のおかげで退屈せずに済んだし」
「そんな……俺の話なんて退屈だったんじゃ……」
「日本の珍しい話なんかも聞けて楽しかったよ」
「それなら……良かったですけど……」
とりあえず斉藤が気を悪くしていない様子だったので、悠樹はちょっと安堵した。
「もう少し時間があったら、悠樹に東京を案内してもらったんだけど。残念だな」
「また来たときは俺、どこでも案内しますよ」
「うん、その時はぜひよろしく」
斉藤はそう言って、悠樹に手を差し出してきた。悠樹はその手を軽く握り返す。
こうして話をしていると、斉藤という人間は本当に温かくて気さくで、気持ちの良い人間だった。
昨日感じた居心地の悪さや息苦しさはいったい何だったのだろうと思う。
たまたま自分が疲れていただけなのかもしれない。
悠樹はそう思うことで自分を納得させた。
「じゃあ、そろそろ行くよ。飛行機に乗る前に用事を済ませて帰らないといけないからね」
「はい。またぜひ遊びに来てください」
漣が玄関の扉を開けると、すでに漣の会社から来た迎えの人間が待機していた。
そこにテツヤの姿が見えないのは、彼は今日悠樹を大学に送っていく必要があるからだろう。
二人の姿を玄関先まで見送って、悠樹も大学へ行く支度を始めた。



「それじゃ、また講義が終わったらここで」
テツヤに校門の前まで送ってもらい、悠樹は教室に向かう。
ちょっと歩き出したところで、淳平が待っていた。
「あ、おはよう」
「おはよ」
淳平は軽く手を上げて笑うと、悠樹と並んで歩き出した。
「どう?調子は」
「うーん……まだ解ってないみたい……」
「そうか……大変だな……」
「うん……」
気遣ってくれる淳平の気持ちが嬉しかった。
「会社が大きいと、いろんな利害が絡んでくるからなぁ。早く解決するといいな」
「うん、そうだね」
「とにかく今はちゃんと送り迎えしてもらえ」
「うん」
淳平の会社もかなりの規模だから、同じようなことがあったのかもしない。
そんなことを考えながら歩いていると、淳平が唐突に話を変えてきた。
「ところでさ、山国安泰保険公司って知ってる?」
その名前を聞いて、悠樹は心臓が跳ね上がりそうになった。
思わず足が止まった。
「聞いたこと……はあるけど……」
「最近日本の保険業界に参入してきた中国系の企業だけどさ」
「ああ……」
悠樹は思い出した。確か文礼の姿を見たニュースでその会社名を聞いたのだ。
グループの代表と紹介された架橋の後ろに、文礼の姿があった。
なぜそんな一瞬見ただけのニュースに出てきた会社名を覚えているのかはよく解らなかった。
ただ、何だかとても嫌な気分になってくる。
「どうした?」
「あ、う、ううん……その会社が……どうかしたの?」
「ちょっと気をつけたほうがいいって、従兄弟に伝えておいたほうがいいかも」
「え……どういう……?」
「妙な動きをしているみたいなんだ。どうもターゲットはお前の従兄弟が経営している会社らしい」
「M&Bカンパニー?」
そう聞いた悠樹の言葉に、淳平は頷いた。
「ただ、具体的にどうこうっていうほどの情報じゃない。妙な動きがあって、それがお前の従兄弟の会社に向いているかもしれないという、それだけの情報だ」
「どうしてそんなことを?」
淳平が知っているのだろう……?
不思議に思って尋ねると、淳平は困ったような笑みを浮かべた。
「俺なりに調べていたんだよ。心配だったからさ。余計なお世話かとも思ったけど」
「そ、そんなことないよ……すごく助かる」
「ちなみにその情報は、経団連のお偉いさんたちの間の酒の席でちょっと話題になった程度の情報だ。まあ、兄貴からの情報なんだが」
「お兄さんの……?」
「ちょうど俺が兄貴にも頼んで調べてもらっていた矢先の話だったから。M&Bカンパニーの名前に反応したんだろうな」
「そっか……」
「ただ、兄貴も親父の付き添いで出席した会合だったみたいだし。チラッと耳にしたという程度のものらしい」
「そっか……」
「出所がそういうものだから不確かだが、何かの糸口にでもなればと思ってさ……」
「そうか……ありがとう……」
「直接、従兄弟のほうに伝えても良かったんだが……連絡先も知らないからな。お前に託すよ。伝える伝えないもお前に任せる」
「うん……ちゃんと伝えておく」
「どうしたんだ?何だかものすごく顔色が悪いぞ……」
「う、うん……何でもない……」
そう答えながらも、目の前に靄がかかっているみたいだった。
貧血のときみたいに、周りの音や淳平の声が遠くなっていく。
バタバタと駆け寄ってくる足音が聞こえた。
テツヤみたいな声も聞こえた気がする。
悠樹が覚えていたのはそこまでだった。



「あ……れ……?」
目を覚ますと、悠樹は車の中にいた。
「ユウキ、大丈夫!?」
悠樹は車の後部座席に寝かされていて、その隣でテツヤが心配そうに顔を覗き込んでくる。
車の運転は違う人がしているようだった。
「大学で倒れたんだ。覚えてる?」
「そう……なんだ……」
何となくおぼろげに淳平が自分の名を何度も呼んでいたのを覚えている。
「淳平……は?」
「すごく心配そうにしてたよ。とりあえずユウキにまた電話すると伝えて欲しいって言ってた。僕も連絡先を聞いておいたので、後でちゃんと連絡しておくよ」
「そうか……心配……かけちゃったな……」
おまけにまた大学を休むはめになってしまった。
いい加減に出席率だってやばくなってきているだろう。
「まだ顔色が悪いよ。水飲む?」
テツヤが冷たい水を差し出してくれたので、それを少し飲んだ。
なぜ校門前で別れたはずのテツヤが悠樹が倒れたことに気づいたのか……いま車を運転しているのが誰なのか。
いろいろと不思議にも思うことはあったけど、今は口を開くのも億劫だった。
「朝から具合……悪かったの?」
「うーん……どうなのかな……よく解らない……」
「とりあえずレンには連絡しておいたけど。すぐには戻ってこれないみたい」
「うん……心配しないでって……伝えておいて……」
「了解。そう言っておく」
「あと……山国安泰保険公司って……知ってる?」
「ああ……架橋の汪グループの保険部門の会社だね」
「そう……なのかな……」
汪グループなどと言われても、そこまでは覚えていなかった。
ただ、テツヤの口からスラリと出てきたのなら、きっとそうなのだろう。
「それが何か?」
「漣兄さんを……襲ったりしたの……その会社かもしれない……」
「え……」
テツヤの表情が少し変わった。ひょっとすると、テツヤも知らない情報だったのかもしれない。
「淳平が教えてくれたんだ……経団連の会合で……ちょっとだけそういう話題が出たって……漣兄さんの会社に何か手出ししようとしているような……そんな素振りがあるって……」
苦しげに言葉を続けようとする悠樹を、テツヤは心配そうな顔で押しとどめた。
「解ったよ、ユウキ……そのことはちゃんとレンに伝えておく。大丈夫だから安心して」
「うん……お願い……」
「だから今はとにかく休んで。マンションに戻るから」
「うん……」
とても頭が熱くてぼうっとする。
熱が出てきたのかもしれないと思いながら、悠樹は目を閉じた。



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EDIT [2011/07/24 07:40] Breath <2> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/24 21:15] EDIT
>シークレットAさん

いつもコメントありがとうございます!
また、ランキングもチェックしてくださってありがとうございます♪
28位って本当にすごいし、ありがたいことだなぁと思いました。
一緒に喜んでくださるお気持ちが、本当にとても嬉しいです。ありがとうございます!

そんな喜ばしい中、悠樹の状態はどんどん悪くなっていて・・・。
確かに悠樹は何も悪いことは……と考えてみて、けっこう漣にさりげなく酷いことを言ったりはしていたなというのは思い出しました(笑)
それは悠樹のせいではないので、やっぱり悪いのは漣なんですけどね(笑)

物語もだんだん佳境に入ってきましたが、更新がんばっていきますのでまた読みに来ていただけると嬉しいです!
[2011/07/25 08:49] EDIT
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