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「ああ、やっぱり聞いてなかったんですね……」
「はい……」
悠樹は正直に答えた。
漣は昨夜、自分のことに関しては、ほとんど何も語らなかった。
語りにくい雰囲気を、ひょっとすると悠樹が作ってしまっていたのかも。
今さらながらにそんな後悔がこみ上げてくる。
「これはレンのミスです。そこをちゃんと言っておかないと、ユウキが状況を軽くみてしまうのも当然のことだ」
「でも……昨日は俺がちょっと言いにくくしていたかも……」
「たとえそうだとしても、やはり言わなかったのはレンのミスです。ちゃんと説明します。聞いてください」
「はい……」
次第に大学が近づいてくるのが解ったが、漣の話を聞かなければ、とても車を降りることは出来ないと思った。
テツヤは車を運転しながら、昨夜の出来事を語ってくれる。
スタッフの家が荒らされたこともあり、漣にはボディガードの役割を持つ社員が二名ほどついていたのだという。
その二名がしっかりとガードしていたにもかかわらず、襲い掛かってきた暴漢がいたらしい。
相手は日本人離れした体躯の男で、手にバッドのような棒を持っていたらしい。
アジア系の外国人ではないかと遭遇した者は話していたという。
相手はまるで威嚇するように手にした棒を振り回し、二人のボディガードが取り押さえようとするのをかいくぐり、逃げだしたらしい。
漣を襲おうとしたのは確かだが、そこまで積極的には襲ってこなかった。
ただの通りすがりの暴漢というには、あまりにも不自然だった。
意図的に漣を狙った暴漢であることは間違いない。
しかし、その意図はまったくよくわからないのだという。
「本気でレンをどうにかしようとするのなら、バッドのような中途半端なものを持ってきても意味がない。もっと違うものを持ってくるはずです」
「そう……なのかな……」
「レンはそこそこの相手なら自分の身を守ることが出来ます。本格的な刺客が襲ってきたら難しいですが」
確かに昨日、護身術は学んでいると漣が言っていたことを悠樹は思い出した。
「これは僕の想像ですが……相手の狙いはレン個人に対する嫌がらせのようなものではないかと……」
「漣への嫌がらせ……」
「はい。積極的にどうこうしようというのではなく、不快感を与える、もしくは不安を与える。そこに相手の狙いがあるように思います」
「どうしてそんな……」
「本当にごく個人的な感情のもつれなどであれば、可能性はあります。しかし、それにしてはスタッフのマンションのセキュリティをかいくぐっていたり……不可解な部分もあります」
「感情のもつれ……そんな心当たりあるのかな?」
ふと気になって聞いてみると、テツヤは肩をすくめた。
「感情のもつれというのは、レンに心当たりがなく、相手にだけ心当たりがあることもあります。相手の特定は難しい」
「確かに……」
テツヤの言葉には説得力があった。確かに、レンにまったく心当たりがなくても、相手が一方的に恨んでいることだってあるだろう。
漣が恨みを買うような人間には思えないが、思いもしないことで恨みを抱く人間だっているのだ。
「結論を出すのはまだ早いですが、これは会社に対する攻撃ではなく、レン個人に対する攻撃だと僕は思っています。その意図はまだよくわかりません。ただの嫌がらせなのか、それとも、もっと大きな被害を狙っているのか……」
明るいブルーの瞳が、何かを憂うように険しくなる。
「だから、ユウキも危ない。会社を狙ったものなら、ユウキが狙われる可能性は低いかもしれない。けれども、レン個人を狙ったものなら、ユウキが狙われる可能性は高い」
「そんな……」
「もうわかるね?レンを守るためにも、状況がはっきりと解るまでは、絶対に単独行動をしてはいけない。OK?」
「うん、わかりました……」
テツヤの強く促すような言葉に、悠樹は頷くしかなかった。
確かに、自分が勝手な行動をすれば、万が一にも漣を危険に晒してしまう可能性がある。
テツヤの話を聞いてしまった後では、それはもう疑いようがなかった。
「さ、大学に着きましたよ」
そう言って、テツヤは車を停めた。いつの間にかちょうど校門の前だった。
「ありがとう……あの……いろいろご迷惑かけます」
「いえいえ。講義が終わるのは?」
「16時には終わります」
「ではその5分前にはここで待機しています」
「はい、わかりました……」
悠樹が立ち去っていくのを見て、テツヤは校門前にさりげなく立つ男に視線を向けた。
男は心得たように頷いて、悠樹の後をつけていく。



ポンと後ろから肩を叩かれて、悠樹は弾かれたように振り返った。
「あ、おはよ……」
振り返ると、淳平がいつもの笑顔で立っていた。
「おはよってか、もう昼だな」
「うん……」
何とかがんばって笑顔を作ってみるが、引きつってそうなのは確実だった。
「なんか……顔色悪いけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫!今日は大丈夫!」
必死にそう言ったけど、大丈夫じゃないのはたぶんバレバレだ。
だけど、淳平は昨日のように深くは追求してこなかった。
悠樹は心の中でホッと息を吐くと同時に、明らかに大丈夫じゃないのにそっとしておいてくれる淳平の心遣いに感謝した。
「今日は車?」
「うん、漣兄さんの会社の人が送ってくれたんだ」
「へえ……」
何となく淳平が不審がっている気がしたので、悠樹は簡単に事情を説明することにした。
「たいしたことはないらしんだけど、ちょっと会社でトラブルがあったみたいで……」
「トラブル?」
「うん……会社の人の家が荒らされたりしたんだって。だから、念のために」
「なるほど……それなら、そのほうがいいかもな」
「うん」
この件に関しても、淳平はそれ以上深くは追求してこなかった。
もっと詳しく聞かれると思っていただけに、悠樹はちょっと拍子抜けしたが、同時にホッとしたのも事実だった。




講義が終わってテツヤの車に送ってもらい、マンションに戻る。
その車の中でテツヤは、行きとは打って変わって、陽気な話ばかりをした。
行きの話があまりにも重すぎたから、気を使ってくれたのだろうか。
そんなことを考えつつも、悠樹はすっかりテツヤのペースにはまっていた。
漣の仕事中の話も、いろいろと教えてくれた。
会社としての最終的な決断は漣が下すが、その他はほとんど社員にまかせっきりで、漣は自分の給料の額も知らなかったという。
そこで、エイプリルフールのイタズラをスタッフで考えて、経理の担当者が漣の給料を半分にすることを決済する書類を出してみたら、何の疑いもなくサインをしてしまったのだとか。
「普通……何で給料の額が変わるのかとか聞かないのかな?」
「まあ、レンの場合は給与がなくても、個人的な投資による利益も入ってくるから……あまり会社からの給料には頓着してないのかもしれないけど。それにしても、なぜ社員の側から給与変更の書類が差し出されたのか疑問に思わないのか、とは思いますね、さすがに」
「だよね……それが嘘だってわかったときの漣兄さんの反応ってどうだったの?」
「それが……期待通りの反応じゃなくて、せっかく一週間もかけて作戦を練った僕たちはがっかりしました」
その反応については、何となく想像がついた。
「ほとんど無反応?」
「正解です。仕方がないので、また新しい書類を作って、ちゃんと給与を元に戻す手続きはしましたけど」
「それは……騙しがいがなかったね」
「それ以来、エイプリルフールにレンを騙そうとする人はいなくなりましたね。騙しがいがないということが、とてもよくわかりましたから」
「そうだよね……」
そんな話をしているうちに、車はマンションの駐車場に着いた。
テツヤは車を降りてマンションの部屋まで送り届けてくれ、明日の迎えの時間を伝えて帰っていった。



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EDIT [2011/07/18 06:34] Breath <2> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/18 19:12] EDIT
>シークレットAさん

コメントいつもありがとうございます!

やはり血は争えないのかもしれません(笑)
漣の場合は興味のあることとないことに対する熱が違いすぎるのでしょうね。
天然の血もかなり影響していると思いますが(笑)

テツヤはホストにでもなったらナンバーワンになりそうなイメージですね(笑)
今後もちょくちょく登場すると思いますので、可愛がってやってくださいませ。

漣に手を出しているのは……アレですかね、どうなんでしょう(笑)
心配ですね、変態なだけに・・・

また次回も頑張って更新していきますので、ぜひ読みに来ていただけると嬉しいです!
[2011/07/19 07:27] EDIT
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