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翌日、悠樹が目を覚ますと、もう漣の姿はなかった。
ベッドサイドにメモが置いてあって、先に仕事に行くということ、朝食は作ってあるのできちんと食べること。
そして、大学の授業に間に合うように迎えがくるので、ちゃんとその車に乗っていくようにと書いてあった。
まるで親か何かみたいだと苦笑しながら、悠樹は時計を見た。
今日の講義は午後からなので、まだ時間には余裕があった。
悠樹はベッドから起き上がってリビングに向かう。
キッチンには漣が作ってくれたサンドイッチが置いてあった。
それをかじりながら、悠樹は携帯のメールを確認する。
淳平からメールが届いていた。
ドキドキしながらメールを開いてみる。
『寝坊するなよ!』
それだけが書いてあって、あとはよくわからない可愛い絵文字が並んでいた。
「もう起きてるっての……」
サンドイッチを口の中に放り込みながらそう毒づいて、悠樹は笑った。
「っていうか、何でここに傘マークなんだよ……」
淳平のメールはたまに絵文字がよくわからない。
でも、このメールのおかげで、ちょっと気が楽になった。
昨日のことはもうお互いに忘れてしまって、普通通りに接することが出来そうだった。
たぶん淳平もそのつもりでこのメールをくれたのだろう。
そういう気遣いが、今はとても嬉しい。
あやふやな記憶のことは昨日漣に問い詰める予定だったのに、会社の話が出て結局それ以上問い詰めることが出来なかった。
漣だって大変なのだと思うと、自分のことで煩わせるのは悪い気がしたのだ。
大学の送り迎えも、結局漣を煩わせたくなかったから素直に売れいれた。
朝食を食べ終わってシャワーを浴びて、着替えを済ませると、頃合を見計らったみたいにインターホンがなった。
漣がよこした迎えの人だった。



「す、すみません、わざわざ……」
「いえいえ!さあ、行きましょうか!遅刻なんてしたら、僕クビになっちゃいます」
部屋まで迎えに来てくれたのは、どことなく淳平にも印象が似ている感じの男だった。
ただ、その髪の色は色素がとても薄く、目は鮮やかなブルーの色をしていた。
彼は日本人とアメリカ人のハーフで、今回漣と一緒に生まれて初めて日本にやって来たのだという。
名前をジョン・ピアースといった。いちおう日本風のミドルネームもあるらしく、それはテツヤという名前なのだという。
ジョンでもテツヤでもピアースでも、好きな名前で呼んでくださいと言ったその男は、ほとんど日本人みたいに日本語を喋る。
国籍もアメリカだし、日本人の母も英語しか喋らないので、日本語は大学で初めて学んだらしいのだが。
そうした彼の細やかなプロフィールを、悠樹は車の中で聞きながら、何となく彼に好感を持った。
会話が何しろ面白いし、人当たりもすごくいい。
いくら社長の命令とはいえ、大学生の送り迎えなんて申し訳ないと思ったのだが、嫌な顔ひとつせず、悠樹のことを気遣う様子さえ見せてくれる。
「テツヤ……さんは、普段はどんなお仕事をしてるんですか?」
「さん……はいらないですよ。テツヤでいいです」
「ああ、はい……」
「敬語もいらないです。そのほうが僕も気が楽です」
「は、はい……」
喋りにくい相手ではないのだけど、やっぱりアメリカ流にいきなり名前を呼び捨てにしたりするのは少し抵抗があった。
ただ、本人がそう希望するのだから、やはり呼び捨てて呼んだほうがいいのだろう。
「ええと、僕の普段の仕事の話でしたっけ?」
「あ、は、はい……」
巧みにハンドルを操作しながら、テツヤは話を続ける。
「うちはともかくスタッフの人数が少ないので、僕は営業もするし、システムの開発にもかかわるし、場合によっては経理もします」
「人数が少ないって……どれぐらい?」
「全社員で150人程度ですね」
「そう……なんだ……」
150人という人数は、想像していたよりもずっと少なかった。
アメリカだけでなく、日本でも、そして他のアジアの国にも取引先があると聞いていただけに。
「今回日本に来たのは、そのうちの10人程度です」
「10人のうちの一人がこんなことしてちゃ……会社は大変なんじゃないですか?」
思わずそんなことを聞いてしまった。
「いや……大変なのは最初の一ヶ月程度だったんで、僕は本当はアメリカに引き上げる予定だったんです」
「そうなんだ?」
「だから、運転手をしていても、何の問題もありません」
「そっか……」
そうとはいっても、本当ならアメリカに帰れるはずなのに、こうして日本に残されて運転手をさせられているというのは、何とも申し訳ない気がやはりしてしまう。
「あの……帰りは友達もいるし……わざわざ迎えに来てもらわなくても大丈夫かも……」
「それは駄目です。社長にしかられます。僕はクビ!わかりますか、クビ!?」
「あの……クビにしないようにって漣兄さんには言っておきますから」
「でも、駄目です。社長は鬼なので」
にこにこと笑いながら、テツヤはそんなことを言う。
「本当はクビとかそういうことを気にしてるわけじゃないですよ。こうして送り迎えをする理由はちゃんと聞いてますよね?」
「う、うん……いちおう……」
会社でいろいろとトラブルがあって、危険があるからだと漣は言っていたけれども。
それは悠樹までこうして社員の手を煩わせないといけないほどのものなのだろうか。
そんなことを考えていると、まるでそれを見透かしたみたいにテツヤは笑った。
「冗談抜きで本当に危ないんです。急激に成長した企業だから、これまでも狙われなかったわけではないんですが……今回はちょっと得たいが知れないので……」
「得たいが知れない?」
「はい。相手もはっきりとしないし、目的もよくわかっていません」
「そっか……そういえば、社員さんの自宅が荒らされたって……」
はい、と答えてテツヤはやや顔を曇らせた。
「平均並みのマンションですが、単なる空き巣が入ってこれるほどセキュリティレベルは低くなかったんですね。信頼のおけるセキュリティ会社に個別に依頼もしていたし。それがあっさりと侵入されていたらしいんです」
「そうなんだ……」
「だけど、盗られたものは何もない。ただ荒らされただけで」
「ええ?」
「ひょっとすると、欲しいものがなかっただけかもしれないですけど……まあ、そういう被害が2件ありまして。どちらも、何も盗られてません。一人は迂闊にも部屋に現金を残していたけど、これも手をつけられていませんでした」
「それは……確かに変かも……」
「会社のデータが欲しいならノートパソコンなりを持ち出せばいいはずなんですが、パソコン類もまったく手がつけられた様子がありませんでした」
確かにその状態では、得たいが知れないというしかないのだろう。
「だったらなおさら……俺じゃなくて会社のほうに詰めてたほうがいいんじゃ……」
悠樹がそう言うと、テツヤは怪訝そうに首を傾げてみせた。
「ひょっとしてユウキはレンが暴漢に襲われかけたことは聞かされていない?」
「え……」
一瞬、眩暈がしそうになった。
漣が襲われかけた?
「それ……どういう……?」



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EDIT [2011/07/17 07:13] Breath <2> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/17 10:49] EDIT
>シークレットAさん

コメントいつもありがとうございます!

連は必要以上のことを話さなかったけど、実はけっこうな危機だったみたいですよね(笑)
悠樹のことを考えると、連も言い出しにくかったのかもしれないですが。

PCも夏は不調になりがちですよね(汗)
私も扇風機をPCにあてるとかして、熱暴走しないように気を使いまくりです。
早く良くなるといいですね!
設定のやり直しは本当に大変です・・・何度か経験ありますが(汗)

携帯で最初から読み直してくれたんですね~。
本当にありがとうございます!
誰かが読んでくれているというのは緊張もしますが、がんばらなくては!という気持ちにもさせてもらえます。

また次回もがんばりますので、ぜひ読みに来ていただけるとうれしいです!
[2011/07/17 22:15] EDIT
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