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どこか店にでも行こうと漣は提案してみたが、店などでできる話ではないでしょうと淳平は答えた。
とりあえずは何となくマンションを出て近くの公園まで歩いた。
結局そこで話をすることになった。
時間はもう夜中というよりは明け方に近いぐらいの時間で、淳平はいったい何時間待っていたのだろうと漣は思った。
今日は会社のほうでいくつかのトラブルがあり、その処理でいつもに増して遅くなってしまったのだ。
いつ帰るか解らない漣を待ち続けた淳平は、疲れた様子も見せず、淡々と語りだした。
「悠樹とあなたの関係は、何となく察しがついています。最初は少し驚きましたが……悠樹が幸せそうだったし……俺は賛成も反対もしませんでした」
言って、淳平は軽く息を吐く。
「あいつは見た目があんなふうだから、実を言うとこれまでも男に目をつけられてたことは何度かあったんです。全部、俺が未然に防いでましたけど」
どういう意味か解らずに漣が首をかしげると、淳平は苦笑いをした。
「悠樹はいつも俺と一緒だから、だいたい俺のほうに相談に来るんですよね。相手の男が。でも、悠樹にはそっちの気はないからって、本人にも聞かずに門前払いしてたんです」
「なるほど……」
「だからまさか……悠樹が本気で男と付き合うことになるなんて思わなかったけど……」
「…………」
「ただ……たまたま悠樹が好きになったのが男で……悠樹が幸せなんだったら、それは友達として認めようと思いました。でも……」
そう言って、淳平は漣を見据えてくる。
「最近の悠樹は何だかおかしい。心ここにあらずって感じで……大学の欠席も増えたし。それでなくても、うちは出席率には厳しいのに……」
それに……と淳平は言葉を続ける。
「ここ数日の悠樹はとても幸せそうには見えません。むしろ苦しそうに見える……俺は小学校のときからあいつのことを知っているけど、あんな顔……見たことがない……」
まるで自分が苦しいみたいに、淳平は息を喘がせた。
「あいつの実家の会社がやばかった時も、あんな顔をしたことなかった……」
漣は何も答えず、ただ黙って淳平の話に耳を傾けた。
「あなたのことは調べさせてもらいました。俺ができる限りですけど……あなたが経営する会社のことも、悠樹の会社に融資を行なったことも」
「確かにあなたは、男同士であるということを差し引いても、悠樹にふさわしい人だと思いますし、悠樹があなたを選んだのもわかる……だけど……」
「だけど?」
「最近の悠樹の様子は異常だ……これまでを知っているだけに、あり得ない。いったい何が悠樹にあんな表情をさせているのかが知りたい」
「…………」
「いったい何があったんですか?悠樹が幸せなら俺はあんたとの関係を認めるつもりだったけど……でも、そうじゃないなら……」
「そうじゃないなら?」
漣は淳平に問い返した。
問い返されたほうの淳平は、一瞬言葉に詰まった。
けれども、すぐに漣をにらみつける。
「そうじゃないなら……俺は友人として、あんたと悠樹を引き離す」
「なるほど……友人としてか……」
「それ以外の何があるっていうんだ?悠樹は俺にとって大切な……かけがえのない親友だ」
淳平はむっとしたようにそう言ってから、漣に詰め寄った。
「で、どうなんです?何があったんですか?」
「それは君に言う必要のあることなのか?」
そう言い返され、淳平は怒りを含んだ目で漣を見据える。
「あんたを悠樹にふさわしいかどうか見極める必要がある」
敬語を使うのが馬鹿馬鹿しくなったみたいに、淳平はそう言い放った。
「悠樹がそれを望むのなら言ってもいいが……おそらく望まないと思う」
容赦のない返事にも、淳平はひるむ様子を見せなかった。
「だったら、ひとつだけ聞かせろ。悠樹の様子がおかしいのは、あんたが原因か?」
「原因を作ったのは認める」
「認めるのかよ……認めるくせに、悠樹を手放してやらないのか?」
「今は手放せない……」
「それはあんたの都合か?」
「悠樹の都合もある。俺の気持ちとしては……今後も手放す気になることはない」
怒りをあらわにする淳平とは対照的に、漣はあくまでも冷静だった。
淳平は気持ちを落ち着けるように軽く息をはいてから、再び口を開いた。
「悠樹は今日……初めて俺に怒鳴ってきました。あいつが怒鳴ったんです、俺に……」
漣は思わず淳平を見た。複雑な表情をしていた。苦笑しているような、怒っているような……そして悲しんでいるような。
「自分でも……どうしようもないっていう感じで。今日はもう話しかけないで欲しいと言われました。些細な喧嘩は何度もしたことがあったけど、こんなことは初めてだった……」
「…………」
「もう八つ当たりをしたくないから……悠樹はそう言いました。その原因を、あなたは知っているんですか?」
漣は何も答えられなかった。
原因はおそらく文礼のあの件だろうが、その原因を作ったのは紛れもなく自分自身だった。
悠樹が親友でもある淳平に対して、何か非があるわけでもないのに怒鳴ったという事実は、悠樹の心がかなり不安定になっていることを表しているのだろう。
胸苦しさを淳平に悟られまいとするが、多少の動揺は伝わっているかもしれない。
「俺には悠樹がとても危険だという感じがしました。今にも壊れそうなほどに脆くなっていると。その危険がもしもあなたのせいなら、引き離す必要を感じます。いざとなったら、俺はそうします。もうこれ以上の傍観はできません」
確かに……と漣は思う。他人事なら、自分だってそう思うだろう。悠樹と漣を引き離してしまえば、悠樹の苦痛はすべて取り除かれる。そう考えるのは当然だ。
だが、漣にとってこれは他人事などではなかった。
ひょっとすると、自分が手放してやれば悠樹はこれ以上何の苦痛を味わうこともなく、幸せになれるのかもしれない。そう思うことはあっても、漣には悠樹を手放すという選択肢を選ぶつもりがそもそもなかった。
それをあえて淳平に言うつもりもなかったが。
「悠樹は俺に……あなたのせいじゃないと言い切りました」
その言葉に、漣は思わず淳平を見返した。
「あいつの気持ちをちゃんと受け止めてやってください。そして、あなたと一緒にいることで、あいつが不幸になっているのなら、別れてやってください。悠樹を解放してやってください」
淳平はそう言うと、漣に軽く頭を下げて背を向けた。
「話はそれだけです。お時間をとらせてすみませんでした」
淳平が立ち去っていく。
その様子を眺めながら、一刻も早く悠樹の元に帰らねばと思う。
帰ると伝えてあった時間をもう3時間も過ぎている。
夜中というよりは、もう明け方に近い時間だ。
普段ならとっくに悠樹は眠っている時間だが……。
淳平との間に諍いがあったのなら、まだ眠れずに時間をすごしているかもしれない。



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EDIT [2011/07/15 06:14] Breath <2> Comment:4
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/15 07:25] EDIT
>シークレットLさん

コメントありがとうございます!
なんか昼ドラみたいにどんどんドロドロしてきてて、これでいいのかとか思いつつ書いてます(笑)

文礼の復讐は今の時点ではみごとに成功してるといえるのでしょうね。
漣だけが苦しむパターンもありなのかなとも考えたのですが、
結果的に全員が苦しむパターンにいつの間にかなっていました(汗)

文礼の性格はものすごく複雑で、実際にこんな人がいたらかなり面倒くさいだろうなと思います(笑)
淳平くんは本当に理想的なお友達ですね~。
それだけで終わるのかどうかはまだ謎……かも、謎じゃないかもという感じです(笑)

また次回の更新もがんばっていきますので、ぜひ読みに来ていただけると嬉しいです!
[2011/07/15 10:22] EDIT
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/16 05:36] EDIT
>シークレットAさん

いつもコメントありがとうございます!
淳平個人は漣のことを「あいつ」とか言ってるぐらいなので、今の時点ではアレな感じなのでしょうね(笑)
今後はどうなるかはまだ解らないですが……(笑)
二人のやり取り、好きですか?ありがとうございます♪嬉しいです♪

悠樹の状態はとても心配ですよね。
そこは漣も何とか頑張るはず……です!

また次回も頑張って更新しますので、ぜひ読みに来ていただけると嬉しいです♪
[2011/07/16 07:48] EDIT
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