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「ん……ッ……」
ベッドの上で寝返りをうつ悠樹を、漣はもう30分以上も前から眺めていた。
こうして眠っているときに、悠樹はうなされているのだろうかと思うような表情をすることがある。
漣が必要以上に早く目覚めてしまったのも、「やめて……」という悠樹の声をはっきりと聞いてしまったからだった。
悠樹は文礼にされた仕打ちを記憶としては覚えていない。
しかし、体のどこかに、また心の奥底に記憶されているのかもしれない。
漣はそんな不安を抱いていた。
日ごろの悠樹は寝つきもよく、寝汗をかくこともほとんどない。
けれども本当にたまにこうして夢にうなされているときは、彼にしては珍しい寝汗をかくのだった。
漣はそっと手を伸ばし、汗で濡れてしまった悠樹の髪を撫でる。
文礼はかつて、悠樹と数年もの間、体を重ねて過ごしたことのある相手だ。
漣がアメリカに住んでいた頃、そういう関係になった。
お互いに恋愛感情抜きでというのがルールだった。
けれども、文礼はいつの間にかそのルールを越えてしまっていた。
漣はそれを止めることが出来ないまま、彼に別れを告げ、日本に戻ってくることになった。
文礼の復讐は、まさにその時から始まっていた。
悠樹の父が経営する藍澤興産の関連会社に対して工作を行ない、倒産寸前まで追い詰めた。
銀行からの融資もさせないようにした上で、漣が手を貸すしかない状態を作り上げていた。
その融資を請うために10年ぶりに再会した悠樹に対し、漣は融資と引き換えに自分の恋人になるように迫った。
悠樹はその条件を飲み、漣の恋人になった。
そんな始まりだったから、初めのうち悠樹は漣に対して心を開こうとはしなかった。
漣と会うことも寝ることも、すべて義務のようにこなしている悠樹の姿を悲しく思うと同時に、自業自得だと自分を責め続けた。
しかし、そんな卑怯な手を使ってでも、10年分の思いを遂げたいと思ったのだ。
悠樹を手に入れた漣の前に、文礼は唐突に現れた。
そしてある日、悠樹を奪い去っていった。
戻ってきた悠樹は、心身ともに文礼から手ひどい傷を受けてしまっていた。
彼の記憶にはないものの、数時間にもわたり、文礼から陵辱を受けてしまったのだ。
漣はその様子を後から映像で見せられた。
悠樹は何も覚えていないと思う……文礼はそう言ったが、やはり悠樹は覚えているのかもしれない。
また苦しげに吐息を吐き出した悠樹を見て、漣の不安は確信に変わりつつあった。
「あ……れ……?」
悠樹のまぶたがゆっくりと見開いた。
「もう……起きてたんだ……?」
「ああ、さっき起きた」
「もしかして……ずっと見てたの?」
「あ、ああ……まぁ……」
「何か……恥ずかしいな……」
そう言って顔を赤くしてしまった悠樹を、漣は抱きしめた。
「そんなこと言うから、我慢できなくなった」
「え……?ちょ、ちょっと漣兄さんッ……遅刻するよッ!」
悠樹はそう言って漣の体を振りほどこうとしたが、漣はもう止まらなかった。
「まだ時間は大丈夫だ」
「で、でも……昨日だってあんなに……ッ……」
そう……昨夜も漣は執拗なほどに悠樹の体を責めてきた。
そのおかげで、自分がいつ眠ったのかも覚えていないほどだった。
「漣……兄さ……ッ……駄目だってば……ッ……!」
「お前が悪い」
「えええッ!?ちょ、ちょっと……時間やば……ッ……んっ、あっ……ぁッ……!」
抵抗していた悠樹の体から力が抜け、吐息が熱く弾みだすまでにそれほど時間はかからなかった。



「もう……だから言ったのに……ッ……!」
ちゃっかり校門前まで漣に送ってもらいつつも、悠樹はぶつぶつと文句を言いながら走っていた。
とりあえずまだ講義は始まっていないけれど、教室までダッシュしなければ間に合わない。
そういえば……と、悠樹は全速力で駆けながら思う。
何か嫌な夢を見ていたような気がするけど、いったい何の夢だったのだろう……。
漣が朝からあんなことをするものだから、その夢のこともすっかり記憶がぶっ飛んでしまった。
もっとも、今もそんなことを思い出しているような場合ではないのだが。
「うわー、ギリギリだよ~ッ!」
「何だよ、お前も遅刻かっ!」
背後から猛スピードで追い上げてきたのは、小学校からの友人でもある淳平だった。
「まだ遅刻じゃないッ!」
「ここで諦めたら楽だろうなぁ……」
「諦めないッ!」
それでなくても、この数ヶ月の間の出席率はあまり良くないのだ。
この大学は出席率に関してけっこう厳しい。
遅刻も減点されてしまうから、何が何でも間に合わなければならなかった。
「あと3分……ッ……!」
「間に合うか……」
「間に合わせる……ッ!」
淳平に追い越されたり、また追い越したりしながら、悠樹は何とか講義が始まる前に教室に滑り込むことに成功した。



「なんかもう……朝から一日分働いた気分だよ……」
講義が無事に終わって、大学のカフェテラスでジュースを飲みながら悠樹はぼやいた。
「でも、悠樹が遅刻って珍しいよな」
「そ、そうかな……」
「テレビでも見ながら夜更かししてたのか?」
「ま、まぁ……そんなところ……」
悠樹は思わず口を濁した。
本当は漣が寝かせてくれなかったなんてことは、絶対に言えない。
淳平は悠樹と漣の関係について察しているようだけど、それに関しては特に何も言ってこない。
何を言えばいいのか解らない状態なのかもしれないけれど。
悠樹だって、数ヶ月前までは男が……しかも従兄弟が恋人になるなんて思いもしなかった。
最初のきっかけは、父親の経営する会社の危機だった。
その危機を乗り越えるためには漣の融資が必要で、その融資を受ける条件として、漣は自分の恋人になるということを提示してきた。
漣の融資が受けられなければ、父の会社は倒産する危険が十分にあったし、悠樹は漣の条件を受け入れることにした。
最初は融資のためにと我慢し続けてきたはずの漣との恋人関係も、最近では少しずつ違ったものに変化しつつあった。
つまり……より本物の恋人に近くなりつつあるのだ。
まるで男女の恋人のように、デートをしたり、傍にいないことを寂しく感じたり……抱きしめられると嬉しくなったり。
けれども悠樹はまだ、この気持ちが恋愛というものだという自覚がどうしても沸いて来なかった。
「またボーっとしてるな」
気がつくと、淳平が悠樹の顔を見て笑っていた。
「し、してない、大丈夫……ッ……」
慌ててそう言ったけど、顔が赤くなってるのは気づかれてたみたいだ。
意味ありげな笑みを浮かべ、明後日の方向を見ている。
いつか淳平にちゃんと言える日が来るのだろうか。
ふと、そんなことを考えた。
いつか……本当にいつかだけども、自分の恋人は漣なのだと言える自分になっているだろうか……。



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EDIT [2011/07/10 07:53] Breath <2> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/07/10 21:25] EDIT
>シークレットさん

二人の話が好きと言ってもらえて嬉しいです♪
ありがとうございます!

今後のことは不安な要素が山盛りですが、
それを登場人物がどうやって乗り越えていくのかをきちんと描けるといいなと思います。
障害が多いほど愛は育まれる……はずですから(笑)
また次回も頑張って更新していきますので、立ち寄っていただけると嬉しいです!
[2011/07/11 07:41] EDIT
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