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 部屋の中に入ると、中央のテーブルには豪華なご馳走が並んでいた。ちょうどラーメンを食べに行こうとしていたところだったことを思い出し、陸の腹はぐうううと音を鳴らした。
 その音が聞こえたのか、アマツは吹き出すように笑った。
「そこに座れ。何でも好きなものを食っていいぞ」
「う……いただきます……」
 落ち着いてみるとかなり腹ペコ状態だったので、陸はともかく腹ごしらえをすることにした。
 食べるために用意されていたのは、普通サイズよりは少し長いが箸だったので、陸は少しホッとする。ナイフやフォーク、さらには使ったことのないものを使わされたらどうしようと内心で心配していたのだが。
 料理は中華料理にも似ているが、近所の中華料理屋で出しているものとは素材も料理方法もまったく違うようだ。
 いったいどんな味がするのか想像もつかないので、見た目的に美味そうなものを選んで自分の皿にのせていく。
「ん? うまっ!? 美味いな、これ」
 油はあまり使われていないようなのに、どれもこれも味付けが素晴らしかった。腹ペコの虫に急かされるようにして、陸は次々に料理を口に運んでいく。
 気がつくと、にこにこと笑いながらアマツが陸のことを見つめていた。
「な、何だよ……?」
「どんどん食え。腹が減ってたんだな」
「ま、まあ……そうだけど」
 陸は料理を口に運びながら、そういえばそれどころではないということを思い出した。
 陸はおそらくこの食事が終わった後、国のためという大義名分でこの男に襲われるかもしれないのだ。
「あ、あのさ……」
 陸は箸を置いて、アマツを見た。
「さっき俺を連れてきた子に聞いたんだけど……」
「ああ、トミビコか?」
「そう、そのトミビコって子。あの子が言ってたんだけど、俺とあんたは交わらないといけないんだって?」
「そうだ。何か不都合でもあるのか?」
「いや……不都合だらけなんだけどさ……」
「ふむ……どんな不都合だ? 全部解決してやるから言え」
「い、いや、あの……とても解決しそうにはないと思うんですが……」
「なぜだ?」
「俺……男同士でそういうことをするのはちょっと……遠慮したいなぁと思ってるんで……」
「なぜだ?」
「なぜって言われても……俺の住んでる世界ではそういうのは普通じゃなかったんで。男と女がそういうことをするのは普通だけど、男同士っていうのは……」
「それは困ったな。相手が女では駄目らしいのだ。リクにはとりあえず我慢してもらわなくてはならない。だが、何でもお前の望むものは与えてやるぞ。欲しいものはなんだ? 着るものでも宮でも、好きなものを言うが良い」
「い、いやだから……俺はもう何もせずに元の世界に帰りたいんだけど……。そういう相手は、男同士でも問題ないってやつを見つけてやってくれれば……」
「そういうわけにはいかない。お前はこの四方の世界からただひとり、選ばれたのだ。俺にもっとも相応しい相手として」
「だったら……もう一回探し直してもらうとか……」
「探し直しても、結局はまたお前が呼ばれるだけだと思うぞ」
「う……」
「一晩ぐらい諦めてはどうだ?」
「あんたもあの子と同じことを言うんだな……」
 陸はげっそりとした気分でため息をついた。
「国の一大事だ。諦めてくれ」
「諦めろって言われても……」
「お前が諦めることで、死ななければならない人間が減るのだ」
「それって脅しに聞こえるけど……」
「脅しでも何でもない。事実を言っているだけだ。八岐大蛇はもう何度にもわたって村を襲撃している。次の襲撃もおそらくあるだろう。その前に倒してしまわねば」
「本当に……俺とヤッたらその八岐大蛇とかいうやつを倒せるのかよ?」
「倒せる」
「う……」
 陸は何も言えなくなってしまう。
 自分とセックスさえすれば、アマツは八岐大蛇を倒すことができるのだという。そうすれば、もう村が襲われることもなく、人が死ぬこともない。
 もしも陸がセックスを拒めば、また八岐大蛇が現れて村が襲われ、死人が出てしまうのだろう。
「…………」
 陸が元の世界に戻れば、この世界とはなんの関わりもなくなる。そうなれば罪悪感を感じなくて済むだろうが……。
(でも、後味が悪すぎるよな……)
 別に死ねと言われているわけではないし、たった一度、身を委ねるだけなら……。
 陸の心は揺れ動いていた。
「あんたは本当に国の人を救うために八岐大蛇を倒すんだな?」
「倒す。そのためにお前の力が必要だ」
 抵抗がなくなったわけでは、まったくない。今だって逃げ出せるものなら逃げ出したい。元の世界に返してもらえるなら、一秒でも早くこの奇妙な世界を脱出したい。
(一晩だけ……一度だけなら……)
 女の子とさえ経験したことのないことを、男と初めて経験するというのは、正直に言うと死ぬほど悔しいし恥ずかしい。
 でも、真摯に訴えてくるアマツの言葉に陸も心を動かされてしまった。自分の欲望のために陸を抱こうとしているのではないのは伝わってくる。
 陸は覚悟を決めたように頷いた。
「分かった。俺はそういうことは初めてでどうしていいか分からないから、全部あんたに任せる……」
 陸がそう言うと、アマツは立ち上がり、その大きな手で陸の頬を撫でた。



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EDIT [2012/10/04 18:33] 高天原で恋に落ちた Comment:0
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