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悠樹は大学から帰るなり、キッチンで前回の失敗以来初となる料理に挑戦していた。
悠樹の熱が下がり、漣は仕事に出かけるようになったが、帰りの時間は以前より早くなった。
タイムリミットが近づいているのに気づいて、悠樹は作業する手を急がせる。
今回は前回の失敗を活かし、誰でも簡単に出来ると記載してある料理の中からメニューを選んだ。
足りない材料は大学の帰りにスーパーによって自分で買ってきた。
冷蔵庫にある材料だけで料理をするなんてレベルの高いことは、前回の失敗があるだけに出来なかった。
今回、悠樹が選んだのは、誰でも簡単に出来る野菜のコンソメスープ、誰でも簡単に出来るトマトときゅうりのサラダ、誰にでも簡単に出来るチキンの照り焼き風。
確かに簡単なのだが、材料を切ったり仕込んだりするのにまず時間がかかった。
包丁なんてロクに握ったことがないだけに、基本通りの動作しか出来ず、普通の人の何倍もの時間がかかってしまうのだ。
現在の進行状況はだいたい75%といったところで、漣が帰ってくるまでに完成するかどうかは五分五分といったところだった。
「ええと、次はこれとこれがこうで……はぁ、誰でも簡単でこれじゃ、他の料理は作れそうにないな……」
ため息を作りながらも、何とか食事としての体裁を整えていく。
盛り付けも、漣がするとまるでお店で出してもらうみたいに綺麗なのだが、悠樹がやるとそうはいかない。
大して美味くもないはずの料理を、さらに輪をかけて不味そうに見せてしまう。
しかし、何とか料理を完成させることが先決なので、盛り付けにばかり時間をかけているわけには行かなかった。
「うん……味は悪くない……と思う」
少なくとも、口に入れることも出来ないということはなかった。何とか食べれる。美味しいといえば美味しいかもしれない。そんな微妙な味だったが。
「ええと……それから……」
ノートパソコンでウィンドウをたくさん立ち上げながら、悠樹はラストスパートの作業をこなしていく。



「おかえりなさい」
玄関まで悠樹が出迎えると、その異変に気づいたのか、漣が首をかしげる。
「何か作ってた?」
「あ、う、うん……いろいろ迷惑かけたし、そのお礼にと思って……」
先日、料理を作って待っていたときに、漣がとても喜んでくれたのを悠樹は覚えていた。
だから、料理を作れば漣が喜んでくれるのではないかと考えたのだ。
「ありがとう。大変だっただろう?」
「う、うん、まあね」
大変じゃなかったといえばうそになる。簡単に出来るはずの料理は結局4時間ぐらいかかったし、漣が帰ってくるまでには何とか間に合ったものの、まだテーブルに運ぶところまでは行ってない。
「じゃあ、準備するね。料理は出来てるんだけど、盛り付けとかぜんぜんまだだから」
そう言って背を向けた悠樹の体を、漣は背後から包み込むように抱きしめた。
「楽しみだな……」
「う、うん……適度に楽しみにしてて。期待のしすぎは駄目だよ」
「あぁ……で、忘れ物だ」
悠樹の首を自分のほうに向かせて、漣は唇を重ねてくる。
首筋や胸や背中をたっぷりと撫でられて、悠樹はようやく解放された。
「ごめん……料理で頭がいっぱいで忘れてた……」
帰ったらすぐにキスをするというのがいつもの日課だったはずなのに、それより頭の中は料理の手順のことでいっぱいだったのだった。
「いや……お前が料理をするのが大変だってことは解ってるつもりだ」
「ど、どういう意味だよ!?」
「それより手伝おうか?」
笑いながら聞いてくる漣に、悠樹は思わずぶんぶんと頭を振った。
「い、いい!今日は自分でちゃんとする!」
「そうか。じゃあ、待ってる」
もう一度唇を重ねるだけのキスをして、漣はリビングのほうに向かった。
悠樹はバタバタとキッチンに戻り、いくつかの皿やグラスを床に落としたり割ったりしながらも、何とか『夕食』を作り終え、ダイニングのテーブルへと運んだ。



「なかなか美味いじゃないか」
悠樹の料理を口に入れた漣はそう言った。
「そ、そう!?」
自分でも口に運んでみる。何度も味見をしてたので、美味しいかどうかがもう解らなくなっていたが、漣がそう言ってくれるのなら美味しいのだろうと思った。
「苦労の後が伺えるな」
「う、うん……」
それに関しては素直に頷くしかなかった。簡単に出来るはずだった料理は、悠樹にとってはかなりの苦労を伴うものだったのだ。
漣は悠樹が作った料理を次々に口に運ぶ。
とりあえず気分を悪くしたりしている様子はない。
悠樹は自分も料理を口に運びながら、なんだかとても嬉しい気持ちになっていた。
誰かのために何かをして喜んでもらえるということが、こんなに嬉しいことだとは初めて知ったかもしれない。
そもそも悠樹はしてもらうことが多くて、自分から何かをするという機会があまりなかったのだ。
だからこその新鮮な感動なのかもしれなかった。



漣がベッドに入ったので、悠樹もいつものようにその横にもぐりこむ。
以前なら、ベッドに入る前から漣は襲い掛かってきていたのに、今日も漣は何もせずに眠るような気配だ。
悠樹は思い切って、漣の首にしがみついてみた。
「どうした?」
「う、ううん……」
漣が何を思ったのかは解らないが、悠樹の背に手を回し、気持ちを落ち着かせるときにするように、トントンと背中を優しく叩いてきた。
なんだか胸苦しくなってくる。今日もこのまま、何もないままに朝を迎えてしまうのだろうか……。
「あ、あの……」
「ん?」
「今日も……しないの?」
悠樹の言葉に、漣は背中を叩く手を止めた。
それで悠樹は自分の言った言葉が、とんでもなく破廉恥なものだったことを自覚した。
昼間も淳平にとんでもないことを言ってしまったばかりだというのに。
「ご、ごめん、忘れて……おやすみなさい!」
そう言って悠樹は漣の首から手を離し、漣に背を向けた。
あまりにも恥ずかしすぎて、顔を向かい合わせながら眠ることなどできそうになかった。
「悠樹……」
背後から漣が強く抱きしめてくる。
「お前が誘ったんだから、今夜は眠れると思うなよ」
「漣……兄さん……」
思わず振り向いた悠樹の唇を、漣は荒々しく塞いできた。
「んっ……んっふッ……!!」
「体のことを気遣っていたつもりだったんだが……余計なお世話だったみたいだな」
笑いながらそう耳元で囁かれて、悠樹は改めて顔が熱くなってくるのを感じる。
「べ、別に……俺、誘ったつもりなんてないよ!」
「誘っただろ」
「さ、誘ってない……!」
「だったら、体に聞いてみるか」
「あっ……や、やだ……ッ……!!!」
体になんて聞かれたら、自分が考えもしないような答えを漣に与えてしまいそうだと思った。
「んんっ、漣……兄さん……ッ……あぁッ……!!」
漣の手が乱暴に悠樹のパジャマを脱がせていく。



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EDIT [2011/07/06 09:15] Breath <1> Comment:0
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