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何のためらいもなく……というのは無理だろう。もう永遠に。
ただそれは、悠樹に対して嫌悪を抱いたりするものではなく、自分自身に対して嫌悪を抱くものだ。
おそらく、悠樹を抱くたびに思い出す。
そして、自分自身に対して怒りを感じるだろう。
気がつくと、文礼が漣を見て寂しそうに微笑んでいた。
「これが僕の復讐だよ」
「復讐……」
その言葉の意味が理解できなくて、漣は思わず文礼の顔を見る。
「僕を本気にさせてしまったことへの復讐」
「…………」
漣は言葉を返すことが出来なかった。自分は確かに、文礼が本気になりつつあることに気づいていたのかもしれない。日本へ帰ろうと思ったのは、その文礼との関係を終わらせたかったからなのかも。
けれども、日本に帰るということはずっと考えていたような気もするし、文礼の気持ちにはやはり気づいていないといえば気づいていなかったかもしれない。
今になってみると、自分があの頃何を考えていたのか、よく解らなかった。
手にしたDVDプレイヤーからは、悠樹の悩ましげな吐息が聞こえ続けている。
その表情や声のトーンで、もう逝きそうになっていることが解った。
目をそらしたくても、そらすことが出来なかった。
その息遣いが次第に荒く激しくなっていき、二人の体が熱くなっているのをただ眺めているしかなかった。
『……んぁぁッ……!!』
悠樹は意識のない体を大きく跳ねさせ、達した。
それを追いかけるように、文礼が悠樹の体内に精を放ったのが解る。
漣はたまらずに、DVDプレイヤーを止めようとした。
「駄目だよ。それはあと一時間ほど残っている」
かまわずに止めようとする漣の手を、文礼は再び止めた。
「これは最後まで見ないと消去できないように仕掛けてある」
「お前……ッ……」
「これが罰だよ、漣」
そう言って笑う文礼を、漣はにらみつけた。
「殺してやりたい気分だ」
「漣に殺されるなら本望だな。もうこれ以上苦しまなくて済む」
こいつは死にたがっているのかと思った途端、漣は自分の熱が少し冷めていくのを感じた。
「さぁ、一時間の上映会だよ。本当はこの3倍ぐらいあるんだけど、特別に一時間で許してあげる」



映像をすべて見終えると、さすがの漣も堪えたようだった。
たった一時間の間に悠樹は文礼のモノによって何度も逝かされ、そのたびに悩ましげに喘いでいた。実際にはこの3倍はあったという行為の中で、悠樹はいったい何度達したのだろうか……。
そういうことを考えた頭で、薬によって強制的な快楽を数時間にわたって与えられ続けた悠樹の体の負担を心配する。
漣の頭の中ではめまぐるしくさまざまな感情が交錯していた。
「感想は……聞けるような状態じゃなさそうだね」
漣の顔色は悪く、滅多に表情を変えない男が苦悩の表情を浮かべている。
それを見て、文礼は満足げに微笑んだ。
「もう消せるよ。コピーは存在しない」
「……本当だな?」
確認するように問う漣に、文礼は頷いてみせる。
Deleteのボタンを押すと、映像がすみやかに消えていく。
完全にプレイヤーの中から映像が消えたのを確認して、漣は文礼にプレイヤーを手渡した。
「これで気が済んだのか?」
「済むわけないじゃない」
文礼の返事は即答だった。
「まだ何かするつもりか?」
漣の言葉に、文礼は皮肉めいた微笑を浮かべる。
「もう僕が何かをしなくても、復讐は開始される。漣は悠樹を抱くたびに僕を思い出す。そして苦しむ。それを考えるだけでぞくぞくするよ」
「お前……」
「僕を抱きながら悠樹を思い出していたあの時みたいに、今度は悠樹を抱きながら僕を思い出すんだ」
「…………」
「そして僕はあの頃の悠樹になる。ずっと悠樹になりたかったんだ……結ばれることが出来ないのなら、どんな形でもずっと忘れられないほうがいい……」
海の向こうの空が明るくなり始めていた。
いつの間にか、黒いスーツを着た男たちが文礼の周りを取り囲んでいた。
「そろそろお時間ですが」
「ああ、わかってる。もう済んだよ」
男たちにそう告げて、文礼は漣に背を向けた。



すっかり日が昇り、文礼の車が去っていった後も、漣はしばらくそこを動くことが出来なかった。
酷い呪いをかけられた……そんな気分だった。
文礼を殴ってやりたい気分にもなったが、結局それをしなかったのは、漣の中にも罪悪感があることを認めざるを得なかったからだ。
文礼の気持ちに気づいていたかもしれないという罪悪感。そうなる前に、なぜ関係を終わらせなかったのかという罪悪感。
そして、そんな彼の思いに応えることをせず、悠樹のいる日本へと何のためらいもなく戻ってしまった罪悪感。
殺してやりたい気分になったのも事実だった。
けれども、たとえもう一度文礼に会うことがあったとしても、漣はそれだけはしないだろうという確信に似た思いがあった。
自分の中の罪悪感も、沸いて来た殺意もすべて認めてしまうと、気持ちが少しずつ落ち着いてきた。
気持ちが落ち着いてくると、無性に悠樹に会いたくなった。
目が覚めたときの悠樹に会うのは少し怖い気もするが、それもすべては自業自得だろう。
漣は車のドアを開け、エンジンをかける。
帰ろうと決めた瞬間から、悠樹の顔ばかりが頭に浮かんだ。
文礼が言ったように、これから悠樹を抱くたびに文礼のことを思い出すだろう。
そして間違いなく苦しむに違いない。
文礼の復讐はみごとに成功する。年月が経っても、その復讐は終わらないだろう。
だけど、それは悠樹には関係のないことだ。
自分の胸に秘めた罪悪感や、文礼が悠樹に対して行なったことのすべてを悟られてはいけない。
二度と悠樹を危険な目にあわせないためにも、漣はせいぜい文礼が喜ぶように苦しんでやろうと思った。



マンションに戻ると、漣はすぐにベッドルームに足を向ける。
予想通り、そこに悠樹が寝かされていた。
顔色がひどく悪いものの、他に外傷などはないようだったので、ひとまずはホッと息を吐いた。
ベッドの上で眠る悠樹の頬に手を当ててみる。
微かな温もりが感じられて、漣はまた少しホッとした。
体を重ねる以前よりも、悠樹は漣にとって大きな存在となっていた。
10年間温め続けた思いは、体が繋がりあうことによって、さらにもっと大きな思いへと変化していたのだ。
気がつくと、漣は自分の目から熱いものがあふれていることに気づいた。
無事でよかった……。
改めてそう思うと同時に、彼を傷つけてしまったことに対する張り裂けそうなほどの罪悪感に苛まれる。
幸せと苦悩とが一緒になって頭の中を支配し、冷静というスイッチが切れてしまったのだろう。
瞳からあふれる涙は、漣がおそらく生まれて初めて心と体のバランスを完全に失ってしまったことの証なのかもしれなかった。
「漣……さ……?」
気がつくと、悠樹がうっすらと目を開けていた。



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EDIT [2011/07/05 06:49] Breath <1> Comment:0
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