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翌日、宣言通りに祐一はバイトにやって来た。
別に祐一が悪いわけではないが、その顔を見た瞬間、弘海は気が重くなった。
(祐一と恋人のふりとか……)
けれども、橘や三芳にその役をお願いするよりも、いくらかはハードルが低くて気楽な感じがした。
きっとリュウスもそれを見越して祐一にしようと思いついたのだろうけれども。
問題は、弘海に恋人が出来たと言ってみたところで、ショーンが諦めて国に戻るのかどうかということだった。
さすがに恋人が出来れば、諦めてくれるような気はするが……。
リュウスは今朝は販売のほうを手伝って欲しいと言われ、さっそく祐一と一緒にレジに並ぶ客の相手をしている。
「弘海、少し休憩しようか?」
「あ、はい」
とりあえず朝一番に必要な商品の仕込みはひと段落したので、製造組は少しの間、ひと息つくことが出来る。
いつものように橘がコーヒーを入れてくれ、弘海に手渡してくれた。
「ありがとうございます」
「そういえば弘海……」
「は、はい?」
「弘海の部屋って今、三人で同居してるの?」
「そ、そうですね、はい……」
この数日間、橘は遠慮していたらしくショーンやリュウスのことに触れてこなかったのだが。
いつかは来ると思っていた話なので、弘海は覚悟を決めた。
「いろいろと複雑……だよな?」
「そ、そうですね、いろいろと……」
弘海は曖昧に答えて、曖昧に笑った。
三人で同居というだけでも大変なのに、その関係が実に複雑だということを、橘も知っている。
嘘をつくことも出来ないし、かといって洗いざらい本当の事情を話すわけにも行かない。
それが伝わるのだろうか……橘は弘海が何かを隠していると思ったようだった。
「リュウスくんとの仲は……特に気まずかったりはしないんだよね?」
「うーん……そうですね、はい……気まずくはないです。家の中で喧嘩をしたりとかもないし。話もちゃんとしますし」
「ショーンくんは……今の状態をどう思ってるのかな?」
「わかりません……」
弘海がそう答えると、橘はちょっと深刻そうな顔をした。
けれども、弘海はそう答えるしかなかった。
ショーンの態度は最初からハッキリしていて、それを変えたいと思っているのがリュウスと弘海であるということなどを説明し始めると、橘をますます心配させてしまいそうだった。
「弘海……大丈夫?」
「あ、は、はい……大丈夫です。ショーンもそのうちきっとリュウスと一緒に国に帰ると思うので……それまでの辛抱です」
「そうか……」
何とか橘は納得してくれたようだった。
二人とも日本ではない遠い国の人間だし、そのうちに二人がそろって国へ帰るということは、現実味のあることとして感じてもらえたのかもしれない。
「もし、今の状態があまりにも過酷だったら、俺のところに来るといいよ。たとえば、家の中の雰囲気が悪くなったりした時とか……同じ部屋じゃ、逃げ場もないだろうし……」
「は、はい……お気遣いありがとうございます」
「年末も弘海にしてはおかしなミスが多かったし、心配してたんだ。家の中がそんな複雑な状況になっているなんて、知らなかったしね。気がつかなくて悪かったな……」
「すみません、あれは……俺の責任なんで……誰のせいでもないです」
「そう考えるのは弘海の良いところだけど……でも、これからはもっと早く相談して、俺を頼って欲しいな」
「は、はい……ありがとうございます」



いったいどういう仕掛けがあったのかは解らないが、昼前にリュウスと祐一は二人で休憩に入った。
だいたい一人ずつ交代で行くことが多いのだが、今日は人がいつもより多かったため、二人で行くことになったらしい。
きっとリュウスは祐一に例の話をしているのだろうと思いながら、弘海は目の前の作業に集中する。
余計なことを考えていると、また失敗してしまいそうだった。
「弘海、バケットサンドが今日はちょっと多めに出ているようだから、追加で作ってもらっていいかな?」
「はい、わかりました!」
店をのぞいて戻ってきた橘の指示に、弘海は頷いて、手早く作業台の上を片付ける。
人気のある商品はだいたい決まっているが、計算どおりとは行かないことがほとんどだ。
だから橘はこまめに店頭の商品の動きを見ていて、追加で作るものの指示はその都度飛んでくる。
橘は橘で、別の商品の追加を作るための作業に取り掛かっていた。
今日から仕事始めの会社が多いこともあって、久しぶりに目が回りそうな忙しさだった。



「お先に失礼します」
結局、3時間ほど残業をして弘海はその日の仕事を終えた。
「残業ありがとう。お疲れさま」
橘にねぎらわれて店を出ると、先に仕事を終えたリュウスが待っていた。
「ごめん、待った? 先に帰ってくれていても良かったのに……」
「いえ。ちゃんと祐一さんに話をしましたよ。その報告がしたくて」
「ああ、そうか。祐一は? 大学にいったのかな?」
「午後から大学だって言ってました」
「そうか……」
弘海が歩き出すと、リュウスも一緒に歩き出した。
「例の件ですけど、祐一さんはOKだそうです」
その言葉を聞いたとたん、弘海は胸がドキンとした。
何か追い詰められたような、見つけられてしまったような……そんな感じだった。
「あ、そうなんだ? リュウスって話し上手だな……どうやって話したの?」
「それはもう、普通に……僕の許婚が弘海さんのことを好きになってしまって、困っているので助けて欲しいと……」
「祐一は何て?」
「弘海さんの気持ちはどうなのかって聞かれました」
「で、何て答えたの?」
「弘海さんは男性を相手にという選択肢はないので、とても困っている……と。それでよかったんですよね?」
「うん……その理由なら問題ないと思う」
「それで、一時的にで良いので、僕の許婚が諦めるまでの間、弘海さんと恋人のふりをして欲しいと言いました」
「そ、そっか……祐一は……その……大丈夫だった? 怒ったりしなかった?」
「いえ。状況を的確に納得していただいたようで、引き受けてくださると返事してくれました」
「…………」
そうか……祐一は引き受けたのか、と思うと同時に、弘海は逃げ場を完全に奪われてしまったような気持ちになった。
何故こんな気持ちになるのかは解らない。
すべては誰にとっても良い方向に向かおうとしているはずなのに、どうしてこんな気持ちになってしまうのだろう……。
「今度の定休日に、祐一さんにマンションへ来てもらうことになりました。その時には弘海さんもちゃんと恋人のふりをしてくださいね」
「ああ、解った……」
「ありがとうございます。これでたぶん……ショーンさまも諦めて国へ帰ってくれると思います……」
リュウスはそう言ってにっこりと微笑んだ。




体調不良で更新がちょっと不規則になってすみません。
徐々に元のペースに戻していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

日生桔梗



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