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翌日、三芳の言葉に甘えて休みをもらい、弘海はとりあえず体調を戻すことにつとめた。
ショーンは魔力を温存しているのか、猫の姿になることもなく、弘海の傍に付き添っていた。
「ご飯……作れなくてごめん……」
弘海が謝ると、ショーンは笑う。
「今日はゆっくり休め。俺が何か作ってみる」
「え? ショーン……料理できるの?」
「国では少しならやったことはあるが……」
「む、無理しなくていいよ!」
何となく不安を覚えて弘海は言った。
「材料もそんなに買いだめしてないし……俺、自分で作りやすいように小分けにして冷凍したりもしてるから……たぶん、他人がやると作りにくいと思う……」
「まあ、やってみる……」
ショーンは立ち上がってキッチンに向かった。
ごそごそと冷蔵庫や冷凍庫を開けて何かを取り出したり、キッチンの道具をいろいろと出したり、ガスをつけてみたり……。
いろんな音が聞こえてくるが、弘海の寝ているベッドからはその詳しい様子が見えない。
薬が効いて少しうとうとしてると、何か匂いが漂ってきた。
「あれ……焦げ臭い……?」
嫌な予感がした。
けれども、料理にわざと焦げ目をつけることだってあるから、焦げた匂いがしたぐらいで口を挟むのもどうかと思った。
せっかくショーンが料理をしてくれているのだし。
そう思って弘海はまたベッドでまぶたを閉じたが、焦げ臭い匂いは酷くなる一方だった。
「ショーン……何か焦げてない……?」
「…………」
「ショーン?」
返事がない。
しばらく様子を伺うようにしていた弘海だが、その匂いはさらに酷くなってきた。
「わ、や、やばい……部屋の中、煙だらけじゃん!」
気がつくと、部屋の中がまるで火事でも起こったみたいに煙だらけになった。
弘海は慌てて飛び起き、キッチンに駆け込んだ。
「わー、わー、駄目だよ、これ……火消して、火! それから換気扇つけて!」
いつもキッチンは綺麗に片付けている弘海だったから、これほど乱れたキッチンは初めて見たかもしれない。
いろんなものの残骸が、元の形を想像することも難しいような状態で散らばっていて、おまけにフライパンがこげている。
焦げたフライパンの中には、焦がした原因のものが入っていたが、それもほとんど原型を止めていなかった。
「あー……」
「いろいろと間違えてしまったみたいだ……すまない……」
何だか本当に申し訳なさそうな顔をするショーンを、弘海も怒る気にはなれなかった。
きっと真面目に料理を作ろうとして失敗しただけに違いないだろうし。
ショーンが住んでいた国とは料理の道具や方法がまるっきり違っていたという可能性だってある。
「と、とりあえず、片付けてしまうね」
弘海は言って、キッチンの後片付けを始めた。
ショーンが作ろうとしていた料理の残骸はすべてゴミ箱に捨て、とりあえずフライパンの焦げを落として、シンクに散らばった材料の残骸を片付ける。
キッチンが狭いおかげで、それほど酷い散らかり方になっていなかったのが不幸中の幸いだろう。
ひと通りキッチンを片付け終わると、ショーンが所在無さげに立ち尽くしていた。
ひょっとすると反省でもしているのかもしれない。
弘海はちょっとおかしくなった。
「ついでだから、何か作るよ。何が食べたい?」
「オムライス……」
「オムライスか……ええと、卵とハムはあるし……野菜も何とか残ってるから……余りもので作るオムライスで良かったら作るよ」
「それでいい」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
ショーンはおとなしく部屋のほうに戻った。
まだ体は少しフラフラしていたが、料理が作れないほどではなかった。
ショーンの食事を作るついでに、自分のものも冷凍のご飯を使って手早く雑炊もどきの料理を作った。
「はい、お待たせ」
「弘海はすごいな……」
「ええ? 別にこれぐらい……毎日やってたらショーンだって出来るようになるよ」
「毎日か……」
ショーンが呟いたので、弘海は慌てて口を挟んだ。
「あ、あの……基本的に料理は俺がやるから、ショーンはやらなくていいよ! 俺がいない時に勝手に料理を練習しようとしたりしなくていいからね!」
「弘海が作ってくれるのなら、俺が作る必要はないな」
「うん、ないよ、絶対に!」
ショーンも練習をすれば料理が作れるようになるかもしれなかったが、先ほどのキッチンの惨状を思い起こすと、それにはかなりの材料の犠牲と、キッチンの危険が伴うものだという気がした。
もっとも気になったのは、スパイスの恐ろしいほどの減り方だった。
いったいショーンは何を作ろうとしていたのだろう……。
「オムライス、おいしい?」
「ああ、美味い。弘海の作るものは何でも美味い」
「良かった……」
料理したものを美味しいと言って食べてもらえることは、弘海にとってはとても嬉しいことだった。
友達に家で料理を作るというような機会はほとんどないし、家族はいない。
でも、こうして家で一緒に食事をして、作った料理を美味しいと言ってくれる人がいるのは、何だか家族のような空気で温かかった。



食事を終えて再びベッドでうとうとしていると、来客を知らせるインターホンが鳴った。
「誰だろう……」
もう外は暗くなり始めているし、こんな時間に新聞の勧誘やセールスの可能性は少ないだろう。
弘海はそう思い、インターホンの受話器を取ってみた。
「はい?」
「あ、弘海……俺だけど……」
「橘さん!?」
「ちょっと見舞いに寄ってみたんだ。いいかな?」
「あ、は、はい……す、すぐ開けます!」
オートロックを解除した弘海は、慌ててショーンに言った。
「ショーン、猫になって!」
「魔力を温存しておきたい」
「いいから、猫になって!」
「昨日、店の者には俺が同居してることを伝えたんだろう?」
「つ、伝えたけど……起きてたら変なこと言うかもしれないじゃん!」
ショーンのことを家族のような同居人ということは確かに三芳に言った。
それはひょっとすると、三芳の口を通して橘にも伝わっているかもしれない。
ただ、ショーンが弘海のことを自分の伴侶だとか何だとか言い出したらややこしいことになりそうだったし、実際に言い出しそうな予感もした。
それに、橘は弘海が猫を飼っていることを知っているから、猫になってくれていたほうが何かと都合が良さそうだった。
「お願いだから猫になって!」
「魔力が……」
「魔力なら後で協力するから早く!」
「…………」
かなり不満そうな顔をしながらも、ショーンは猫になってくれた。
弘海が安堵した瞬間、ドアのインターホンが鳴った。
「はいはい、今、開けます」
扉を開けると、橘が立っていた。
「具合が悪いのに、ごめん。これ、お見舞い」
そう言って果物がたくさん入ったカゴを橘は差し出してきた。
「あ、ありがとうございます……本当にすみません。心配をかけてしまって……店も大変なのに……」
「いや、店のほうは宗助が手伝ってくれているから」
「あ、あの……立ち話もあれなんで、良かったら入ってください。狭いですけど……」
「いいよ。弘海は病人なんだから、ちゃんと寝ておかないと」
「でも……せめてお茶ぐらい入れますから……」
さすがにわざわざ見舞いに来てくれた橘をそのまま帰すのは申し訳ないと思った。
「じゃあ、お茶だけご馳走になって帰ろうかな」
「は、はい、ど、どうぞ……!」
弘海は橘を部屋に招きいれた。



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EDIT [2012/01/19 08:18] 猫目石のコンパス Comment:0
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