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「ここでいい?」
「は、はい……あの……本当にありがとうございました。俺一人じゃ運べなかったし……助かりました」
弘海は心から三芳に感謝した。
三芳は結局、ショーンを一緒に部屋まで運び、ベッドに寝かせるところまで手伝ってくれた。
その間にも、ショーンが目を覚ますことがなかったのが心配だ。
「あのさ……病院とか連れて行かなくて大丈夫?」
「大丈夫……と思います」
「本当は救急車とか呼んだほうがいい気がするような状態なんだけど……」
確かに三芳の言うとおりだった。
全身のあちこちが傷だらけだし、おまけに意識を失っている。
ひょっとすると、頭を打ってるとか、そんな可能性だってあるかもしれない。
それなら病院で検査を受けたり治療をしてもらう必要があるだろう。
けれどもショーンを外に出すことを弘海はためらっていた。
ショーンを追いかけている敵は、どうやら彼の気配で居場所を突き止めることが出来るらしい。
それならばあまり移動しないほうが良いような気がするのだ。
「しばらく俺が看病してみます。それでもし駄目だったら、病院に連れて行きます」
「無理にとは言わないけれど……俺はやっぱり病院に行ったほうがいいと思う。意識も失ってるし……何だったら車もあるし、俺が連れて行くけど」
「いえ……大丈夫です。けっこう頑丈だと思うので……」
「そうか……まあ、弘海のほうがよく知ってるんだろうけど……」
腑に落ちないような顔で三芳は言った。
怪しまれているのは解っていたが、本当の事情を話すわけにもいかない。
心配だけかけて事情を話さないのは非常識だと解ってはいるのだが。
「ひょっとして……彼は弘海の恋人?」
思いついたように聞いてきた三芳に、弘海はぶんぶんと首を横に振った。
「ち、違います! そういうのじゃないんです。あの……家族……っていうのが、一番近いと思います」
「そうか」
何故だか三芳は少し安堵したように微笑んだ。
「まあ、もし何かあったら俺の携帯に電話してきて」
「は、はい……すみません……」
「それと、明日は休んでいいよ。明後日ぐらいまでは何とかなるから」
「そ、それは……そういうわけには……橘さん一人だと負担がかかりすぎだし。昨日だって早退したばかりだし……」
「実は明日から販売経験のあるバイトが二人入るんだ。だから俺が製造のほうをサポートするよ。新しいバイトの子の面倒は祐一が見てくれるだろうし」
三芳の言葉に弘海は思わず目を見開いた。
「三芳さんも製造やってたんですか?」
「そりゃ最初は弘海もいなかったし、バイトを雇う余裕もそれほどなかったし。健介一人じゃ、とても製造は追いつかない状態だったから、俺は販売しながら製造も手伝ってたんだよ」
「そうなんだ……」
三芳の言葉に弘海は驚いた。
弘海がバイトで入ったときには、三芳は店長で、販売をしているか、バイトの面接をしているか、営業や配達に出ているかだった。
パンを作っているところなんて一度も見たことがなかっただけに、弘海は意外な事実を知った気分だった。
「ともかく……まあ二、三日なら何とかなるから。ちゃんと落ち着いてから出て来い。いいな?」
「……わかりました。本当にすみません」



三芳を玄関まで見送ると、弘海はショーンの手当てに取り掛かった。
家の救急箱には最低限の薬しか置いていないから、あまりにも傷の具合が酷ければ薬局に行かなければならないだろう。
とりあえず消毒液をガーゼにしみこませて、ひとつひとつの傷を消毒していく。
衣服もすべて脱がせて隅々まで丁寧に傷を手当てしてみたが、縫うほど酷い傷や、化膿している様子の傷はなさそうだった。
それなにの目を覚まさないのは、ひょっとするとやっぱり頭を打っているとか、見えないところを骨折してるとか、弘海では手に負えないような傷がどこかに隠されているのだろうか……。
「このまま目を覚まさなかったら、どうしよう……」
病院に行けば、目を覚まさない原因は解るだろうか?
何となく弘海は、病院では解決しないのではないかという気がする。
それよりも、むやみに移動をすることで、こんな状態のショーンが敵に見つかってしまうことのほうが心配だ。
「特に酷い怪我があったわけでもないのに……どうしてだろう……」
意識が戻らない理由を、弘海なりに考えてみる。
一般的には頭の打ち所が悪かったりすると、意識を失うことがあるという。
あとは熱があったり、体調が悪い時。
けれども、ショーンの体温は確かに少し高めではあるけれども、高熱があるというほどではなさそうだった。
「魔力が完全に尽きたから……?」
弘海はふと思いついて呟いた。
魔力が少なくても、人間の姿でいる分にはそれほど不自由を感じてはいないようだった。
けれども、完全に尽きてしまったらどうなるのだろう。
二日前にショーンは魔力が尽きたとは言っていたが、その後に本当にすべての魔力が体内からなくなってしまって、それが原因で目を覚まさないのだとしたら。
救急箱に薬をしまいながら、弘海は考える。
深く眠り続けるショーンの顔を見た。
ごく自然に、弘海はその唇に自分の唇を重ねてみた。
(こんなことで……どれぐらい回復するか解らないけど……)
半信半疑ながらも、何度も何度も唇を重ねた。
いったい何度、キスを繰り返しただろう。
弘海は何とかショーンが目覚めるようにと祈るような気持ちで口付けを続けた。
「……弘海?」
気がつくと、ショーンが目を開いていた。
「ショーン、良かった……目が覚めたんだ……」
「ああ……」
「やっぱりキスって……少しは効くのかな……」
「お前が……してくれたのか?」
「うん……ショーンが目を覚まさないのは、魔力が完全に尽きたからかなって思って……だったら、キスをすれば少しは戻るんじゃないかって……」
「なるほど、それは正解だ」
ショーンはそう言って笑った。
「もっとキスしたほうがいい?」
「そうだな……」
今度はショーンのほうが弘海の首に手を回し、顔を引き寄せた。
弘海は素直に促されるままに唇を重ねた。
すぐにショーンの舌が口腔に入り込んできたけれども、それも受け入れた。



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EDIT [2012/01/17 07:53] 猫目石のコンパス Comment:0
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