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「ひっ……そ、それやだっ……！」
全身がぞくぞくと粟立つのを感じて、弘海は恐怖にも似た気持ちを感じた。。
自分では見ることのない……そして排泄以外で使うことのないその場所にショーンが顔を埋め、そこに舌を這わせている……。
あまりにも信じられない状況だった。
「や、だって……駄……目……っ……」
自分の両足の合間から、ちゅくちゅくといやらしい音が響いている。
「ショーン……や、め……て……」
強く言えないのは、その部分から広がる未知の感覚が弘海の思考も動きもすべて封じてしまっているからだった。
ショーンを押しのけて行為をやめさせたいのに、体にまったく力がはいらない。
理性を必死に保とうとしても、次から次へと競りあがってくる感覚に邪魔をされて、気がつけば、ただ喘いでいるだけだった。
明確に『気持ちいい』という感覚ではなかった。
くすぐったいような、もどかしいような……。
それでも、ショーンの舌の動きをはっきりと感じることが出来るほどに、その感覚は鋭かった。
「ん……っ……ぁっ……あっ、ぁっ……」
いつの間にか弘海はショーンの舌がもたらしてくる感覚に夢中になっていた。
前も同時に弄られ、弘海は競りあがってくる快楽のようなものを必死に追いかけた。
「……ぅっ、あっ……ん……っ……あ、はっ……」
ショーンの長い舌がねじ込むようにその入り口に入ってくると、弘海はたまらずに腰を震わせた。
「……っあ、んんっ……んんぅっ……はぁ、はぁっ」
もはや弘海の中にあるのは、快楽の先にあるものをつかむことだけだった。
波のように強く快楽が押し寄せると、弘海はたまらずに声をあげて喘いだ。
「そ、それ……っ……んっ、あっ、あぁあっ！！」
強くなったり弱くなったりしながら高まり続けた快楽は、頂点が見えてきたようだった。
弘海は激しく吐息を喘がせながら、ショーンの愛撫に身をゆだねる。
「んぅ～っ……ぁっ、はぁっ……も、もうイキそう……っ！」
「いい……いつでも出せ」
弘海は頷いて、自分の足をつかむショーンの手を握り締めた。
ショーンの舌は弘海を追い詰めるために、さらに動きを激しくしてきた。
部屋の中をショーンが舌を使う濡れた音が響き続けている。
「うっ、ぅ……出るぅっ！」
弘海は声を絞り出すように言い、欲望を解き放った。
◇
ぐったりと横たわる弘海に対して、ショーンはおせっかいなぐらいに世話を焼いた。
体を綺麗に拭いてくれたり、着替えをさせてくれたり、喉が渇いたといえば水を持ってきてくれたり。
自分でしようと思えば出来ることも、他人に甘えてみると、何だか心地良かった。
「しばらく……大丈夫そう？」
「そうだな……たぶんしばらくは大丈夫だろう」
「たぶん……か……」
先ほどの行為も弘海にとってはいっぱいいっぱいのものだったが、それでも最後までする場合に比べると効果は薄いのかもしれない。
「ごめん……俺はさっきのぐらいが限界……それ以上はしてあげられない……」
「十分だ。それ以上のことは、お前がその気になったときでいい」
「いや……だから……」
その気になることはないと弘海は何度も言ってるのに、ショーンは相変わらず理解してくれないようだった。
弘海は諦めたようにため息をつく。
「ご飯作ってあげようと思ったけど……眠くなってきちゃった……」
仕事は早朝からだったし、先ほどの行為のせいもあって、睡魔が酷かった。
「気にしなくていい。もう寝ろ」
「ん……」
額を撫でるようにするショーンの大きな手の感触が気持ちよかった。
「明日も仕事なのか？」
「うん……明日も早出だから……朝……早い……」
「そうか、大変だな」
「でも、明後日は定休日……だから……」
（そういえば……橘さんの家に初めて行く日……だったな……）
弘海はそんなことを思い出しながら、気がつけば眠りに落ちていた。
◇
そして約束の定休日、弘海は朝からバタバタと出かける準備をしていた。
そこへ眠っていたショーンが起き出して来た。
「今日は仕事は休みじゃなかったか？」
「うん、仕事は休みだけど、橘さんの家に遊びに行くんだ」
「橘って、オーナーの？」
「うん。ご飯作ってくれるらしい。あ、ショーンのご飯はちゃんと作っていくよ。何が食べたい？」
「別に……何でもいい」
どことなくテンションが下がった様子のショーンに、弘海は首をかしげる。
「じゃあ……オムライス！ 作っておくから、レンジでチンして食べて」
弘海はキッチンに立ち、手早く野菜を切り刻み、フライパンでオムライスを作る。
自分だけ橘の作る美味しいご飯を食べるのも申し訳ない気がしたので、今日は手抜きをせずに特製のオムライスを作った。
ケチャップで猫の顔を描いてみたら意外にハマったので、付け合せの野菜を耳の形にそろえてみた。
子供が見たら喜びそうな猫型オムライスの完成だった。
「ほら、見て。猫型オムライス！ 我ながらちょっと頑張ったんだ」
弘海が誇らしげに猫型のオムライスを見せても、ショーンは乗ってこなかった。
「…………」
いかにも不機嫌そうに黙り込むショーンは、いつもと違う雰囲気で、弘海は何だか心配になった。
「なに？ どうかした？」
オムライスをテーブルにおいて、弘海はショーンの顔をのぞきこんでみる。
「も、もしかして……オムライスの猫型がマズかった？ 考えてみたら共食い状態になっちゃうよね……」
弘海がおそるおそる聞いてみると、ショーンは首を横に振った。
「そういうことじゃない」
「じゃ、なに？」
「たぶんその橘……お前のことが好きなんじゃないのか？」
「は？」
「家で二人きりになるのはやめたほうがいい」
「ちょ……橘さんをショーンと同じ人種にするのはやめろって！ あの人はそんな人じゃない」
「俺はそんな人で悪かったな」
ふてくされるように言うショーンに、弘海はため息をつく。
「だからもう、別にショーンを否定してるわけじゃなくて、男を好きになったりするような人じゃないってこと」
「いや、そいつは絶対にお前のことを好きなはずだ」
「もういい加減にしてよ。たとえいろんな間違いがあって、万が一にももしそうだとしても、ショーンには関係ないだろ。とにかく行ってくる」
気がつけば、もう約束の時間が近づいていた。
橘がマンションの下まで車で迎えに来てくれるのだ。
弘海は上着をはおり、マフラーを首にひっかけると、慌てて部屋を飛び出した。
◇
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