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カリカリを買って弘海が部屋に戻ると、ショーンは人間の姿に戻っていた。
思わずむっとして、弘海はショーンに詰め寄った。
「ちょっと……人がせっかくカリカリ買ってきたのに、何で元に戻ってるんだよ」
弘海の言葉に、ショーンはすました顔で答える。
「意外と魔力を消費したから、安全のために戻っておいた」
「え~……しばらくの間は猫のままでいるとか言ってたじゃん」
弘海はあからさまに不満そうな顔をした。
弘海はあんな恥ずかしいことだって我慢したのに、あまりにも燃費が悪すぎやしないだろうか。
「どうやら計算ミスをしていたようだった。こっちの世界での消費は、向こうに比べるとかなり多いらしい……」
「ってことは……今は魔力がまた尽きそうになってるってこと?」
「そこまで枯渇状態ではないが……まあ、変身は解いておいたほうが良い程度には減っている」
話を聞けば聞くほど、弘海は不安になってきた。
「それって大丈夫なの?」
「大丈夫とは?」
「ほら……ショーンを追いかけてるやつが来た時に、ちゃんと猫に変身できるのかってこと」
「まあ……それは大丈夫だろう。当面は」
「当面はって……危ないなぁ……」
ぶつぶつと言いながら弘海は買ってきたカリカリを戸棚の中に入れる。
「あ、でも……ここだと猫になったとき自分で出せないか……」
弘海はそう思い、戸棚の中をやめて戸棚の上に置いた。
「カリカリはここに置いておくから。猫になったときにお腹がすいたら、自分でちゃんと出して食べなよ」
「ほう……B社のカリカリか……」
いつの間にかショーンが背後に立っていたので、弘海は驚いた。
「そ、そうだよ。ショーンがこっちのほうがいいって言うから、駅の向こうのスーパーまで行って来たよ」
「それはそれは……俺のためにご苦労様」
「本当だよ……人間のショーンと猫のショーンと、両方の世話をするのってけっこう大変なんだよ!」
ショーンのためにカリカリを探して駅の向こうまでわざわざ行ったことが、今になって馬鹿らしくなってきた。
A社のカリカリで我慢させればよかったのかもしれない。
「悪いな……」
ふわりとショーンの大きな手が見えたかと思ったら、そのまま背後から抱きしめられる。
「ちょ、ちょっと……俺……触っていいなんて言ってないよ……」
「感謝の気持ちを表している」
「表さなくていいから!」
弘海は少し乱暴にショーンの腕を振り解いた。
放っておくとまたいつの間にかまたいやらしいことをされてしまいそうな気がしたからだ。
「じゃあ、夕飯は人間用のご飯でいいんだね!?」
苛立ちをぶつけるように聞くと、ショーンは頷きながら答えた。
「オムライスが食べたい」
「俺はオムライスの気分じゃない。俺が食べたいものを作る!」
「解った。弘海が食べたいものでいい」
一日の仕事と、カリカリの空回りとで、弘海はどっと疲れた気分だった。
少しイライラもしている。
とりあえずキッチンに立ち、弘海は手早く夕食を作った。
玉ねぎとベーコンとピーマンをさっと炒め、卵を加えてご飯を炒める。
「はい、今日は手抜きのチャーハン。手の込んだものを作る元気がなかったよ」
「弘海が作るものは何でも美味い」
「今日のは美味しいかどうかわからないよ」
弘海はそう言ったが、チャーハンを口に運んだショーンは嬉しそうに口元をほころばせた。
「美味い」
「そ、そう? だったら良かったけど……」
弘海もチャーハンを食べてみたが、それほど美味いとは思えなかった。
自分で手抜きしたのが解っているし、いつもはもっと美味しく作れることを解っているからかもしれない。
「ごめん……美味しくないよ、これ。今度はもっと美味しく作るよ」
弘海はそう言ったが、ショーンは美味しそうにパクパクとチャーハンを平らげた。



食事を終えると、ショーンは魔力を温存するためか、ソファにもたれてうとうととし始めたようだった。
(そういや……猫って一日十四時間は寝るんだっけ……)
一日の平均睡眠時間が6時間程度の弘海からしてみれば、贅沢な話だった。
少し腹を立てつつも、弘海はショーンの体に毛布をかける。
さすがにエアコンが効いているとはいえ、布団もかぶらずに寝ていたら風邪をひくだろう。
「それにしても、不思議がいっぱいなのに、なんか……いつの間にか受け入れちゃってるもんな……」
ショーンの寝顔を見ながら弘海は思った。
今はあの黒猫がショーンであるということを疑うことはないけれど、そもそも人間が猫になったり、猫が人間になったりすること自体、不思議なことなのだ。
そういう感覚が、ショーンと一緒にいるうちに薄れてきている気がする。
何かもっと不思議なことが起こっても、平然としてそうな自分が想像できてしまって嫌だった。



弘海が風呂から出てくると、ショーンは再び猫に戻っていた。
周りを警戒するように目を見開き、体全体が緊張している。
「どうしたの、ショーン?」
弘海の問いかけに、ショーンが答えるはずもなかったが、その様子から何か異変が起こっていることは想像が出来た。
弘海にはその異変を感じ取ることは出来なかったが、何だか落ち着かない気分になる。
ショーンはじっと玄関の外を見詰めている。
「外に……何かいるの?」
思わず玄関のほうに向かおうとした弘海を、ショーンはパジャマの裾に噛み付いて止めた。
「何……?」
弘海には何も感じることが出来ないから、余計に緊張してしまう。
いったいあのドアの向こうに何がいるのだろう……。
そう思っていると、突然、ドアの外でガサガサッと音がした。
弘海は身動きをすることも出来ず、ドアを見つめることしか出来なかった。
しばらくの間、ドアの外ではガサガサと音がしていたが、やがてそれが遠くに去っていくのが解った。
それと同時にショーンが緊張を解くのがわかったので、弘海もようやくホッとした。
「何だか……ちょっと怖かったよ……」
弘海は自分の膝の上に乗ってきた猫を撫でる。
「お前……あんな怖いものに追われてたんだな……」
ショーンの魔力が十分なら、あんな得たいの知れない相手でもやっつけてしまえるのだろうか……。
緊張を解いた黒猫は、そのまま居眠りを始めた。
おそらくしばらく人間の姿に戻ることは危険だと判断したのだろう。
「俺も寝ようかな……」
弘海は黒猫を抱いて布団にもぐりこんだ。



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