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ご飯を食べ終えると、ショーンは体力(魔力かもしれないが)を消耗しないためにと、またうたた寝を始めた。
(そんなに消耗するんだったら……二つも願い事しなきゃ良かったな……)
弘海は食器を洗いながら思った。
弘海が余計な願い事……特に2つ目の寿司なんかを頼まなければ、ショーンの魔力にはもう少し余裕があったのかもしれない。
「ショーンも解ってるなら言ってくれたら良かったのに……」
弘海は思わず愚痴を言った。
ショーンは誰かに狙われているみたいだし、とりあえずそれが近くに来た時に黒猫に変身できる程度の魔力は残しておいてもらわないといけない。
通り魔だか使い魔だか知らないが、そんなものがこの部屋に上がりこんできたりなんかしたら困ってしまう。
弘海には当然、魔法は使えないし、そんな物騒なものが来ても対処のしようがない。
一番良い対処法は、ショーンが自分以外の伴侶を見つけて相思相愛になって魔力の補給がスムーズになることだと弘海は思う。
ショーンは今、弘海を伴侶だと決め付けてしまっているから、それも彼の視野を狭める理由になっているのではないだろうか……。
「ショーンが目を覚ましたら、ちゃんと話そう……」
ショーンのためにも、一度真面目に彼の今後について話しておいたほうが良いと弘海は改めて思った。



夕方を過ぎ、夕食を作り始める頃になって、ショーンは目を覚ました。
「あのさ、ちょっと話がある」
弘海は夕食を作る手を止めて、ショーンの前に座った。
「伴侶になるつもりもないのに無駄に魔力を使わせたのは悪いと思っているけれど……」
弘海が口を開くと、ショーンはおとなしくその話を聞いた。
「でも、俺は本当にショーンの伴侶にはなれないと思う。なるつもりもまったくないし。男を愛するなんてことは、俺の人生に絶対に起きることじゃないから……」
最大限の拒絶を伝えたつもりだったが、ショーンは特に表情を変える様子もなかった。
「だから……なるべく早めに新しい伴侶を探したほうがいいと思う……俺自身、まだショーンの話は半信半疑だけど……その……セックス……が魔力を補給するのに大切な行為なんだったら、なおさら俺以外の人間を探す努力をしたほうがいいと思うんだ」
弘海は出来るだけ丁寧に、そしてきっぱりと、自分の気持ちを伝えたつもりだった。
ショーンの表情は相変わらずあまり変わりがなく、弘海の気持ちが伝わったのかどうかわからない。
「あ、あの……まあ、俺の言いたいことはそういうことなんだけど……」
あまりにもショーンが何も言わないので、弘海は不安になって言葉を足した。
それなのに……。
「問題ない」
「え?」
ショーンの短く無機質な返事の意味がわからず、弘海は思わず首をかしげた。
「だから、問題ないと言っている」
「問題ないって……どういうこと?俺のことちゃんと諦めて、他の人を探してくれるってこと?」
「その逆だ。お前以外の伴侶を探すつもりはないから、そんな心配は必要ない」
「あの……俺の言ったこと……ちゃんと聞いてくれてましたか……?」
「聞いてた」
「だったら……俺にまったくその気がないのも、解ってくれましたよね!?」
「それは何とでもなる」
「なりませんから!!!」
「俺は欲しいものを逃したことはない」
「でも、そんなことしてるうちに敵に見つかって、その時に魔力がなくて倒されちゃったらどうするの? その前に別のもっと早く相思相愛になれそうな相手を探したほうが良くない?」
「俺はお前しかないと思っている」
「だから、その思い込みを何とかして欲しいんだって!! そうじゃないと俺は安心して仕事にも行けないよ……今日だってオーナーに迷惑をかけてしまったし……」
思わず言ってしまってから、弘海は少し後悔した。
今日のミスは完全に自分の気持ちの切り替えミスで、他人に責任を押し付けるようなことではなかったはずだ。
でも、ショーンが家に来なければ、弘海が仕事中にぼんやり考え事などをすることもなかったわけだし。
(少しはショーンにも責任があるよな……)
弘海は自分自身を納得させた。
「仕事で何かあったのか?」
気がつけば、ショーンが不思議そうに首をかしげている。
「だ、だから、ショーンのことを考えてたら、仕込みをミスって材料を無駄にしてしまったんだよ!!!」
「そんなに俺のことばかり考えていたのか。それは良い傾向だ」
「だから……っ!!!」
続きを言いかけて弘海は脱力した。
どうやら何を言っても無駄らしい。
「伴侶というのは……」
ショーンはそう言って弘海の頭に手を置いた。
「そう簡単に見つかるものではない。俺がお前を見つけることが出来たのは、言ってみれば奇跡に近い」
「でも……俺は……」
「弘海ほど俺の伴侶に相応しい人間は、もうどこの世界を探してもいないと思う」
「だから、俺は……」
「心を決めるのに時間がかかるというのなら、いつまでも待とう。俺はもう心を決めている」
「あの……」
「俺の心は変わらない」
綺麗な色の瞳で見つめながら言われると、弘海は何も言えなくなってしまった。
「また少し休む……」
「普通に回復するには一ヶ月かかるんだっけ?」
「そうだな……やつらが来たら猫になるのにまた魔力を使うから……もう少しかかるかもしれないな」
「そっか……二度目のお願いしなきゃ良かったね……ごめん……お寿司はすごく美味しかったけど……」
「いや……一度目にお前を悲しませてしまったから、俺がやりたかったんだ」
ショーンはそう言って目を閉じた。
魔力なんてものがない弘海には、魔力がなくなる状態というのがどういうものか解らない。
でも、一ヶ月も残りの魔力を気にしながら回復をさせるというのはけっこう大変なことだと思う。
(そうなることが解っていたのに……俺の願いを叶えてくれた……)
弘海はちょっとだけ胸がきゅっと締まるような感じがした。
それはこれまでにあまり感じたことのない感覚だった。
弘海はふと思いついてショーンの体を揺すった。
「あ、あの……ショーン起きてる?」
「ん?」
眠そうな目をショーンは弘海に向けてきた。
「た、たとえば……だけど。べ、別にセ……セック……スとかじゃなくて、キ……キス……とかでも回復したりする?」
「眠ったりするよりは、少し多めに回復するな」
「だ、だったら……キス……だけなら……いいよ……でも、それはお礼だから! 俺は伴侶になるつもりもないし……国でそういう役割の人がいたって言ってたじゃない? その役割を俺が少し受け持つってことにしてくれるなら……」
「解った。体から始まる愛というのもあるだろう」
「いや、だから、それはないから!!!」
「いいのか?」
ショーンは起き上がり、弘海の頬に手を添えてきた。
「だから……キス……だけなら……」
「ありがとう……」
そう耳元で囁くように言ったかと思うと、すぐにショーンの唇が触れてきた。
弘海はおとなしくショーンの唇を受け入れる。
ショーンは何度も何度も角度を変えて唇を重ねながら、まるで味わうように舌で弘海の唇に触れてくる。
「少し口開けて……」
その囁きに誘導されるように、弘海はぎゅっと閉じた唇を少し開いた。
そこからショーンの舌が入り込んでくる。
自分の体の中に誰かが入り込んでくる感覚というのは、何だか妙な感じだった。
(っていうか……気持ち……いい……?)
最初のキスのときにも感じたことだが、ショーンとのキスは何だかとても気持ちが良かった。
弘海がこれまでに感じたことのない快楽が、唇を中心に広がっていくのを感じる。
胸がドキドキして、吐息は知らないうちに弾んでいた。
いつの間にか自分がすっかり興奮してしまっていることに、弘海自身も気づいた。
(何で……キス……してるだけで……こんな……)
それはとても不思議な感覚だった。
まるで水のに浮かんでいるような、風に乗って空を浮遊しているような。
やがてゆっくりとショーンが唇を離した。
「あ……」
とろんとした目を弘海はショーンに向ける。
ショーンは優しい目で微笑んでいた。
「ありがとう。ちょっと回復した」
「う、ううん……それだったら良かった……じゃあ、後は寝て回復して……」
「ああ、そうさせてもらう」
ショーンは再び目を閉じ、気持ち良さそうに眠りに落ちていった。



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