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それから数日の間は、漣も忙しいみたいだった。
電話やメールのやり取りだけで、会うことはなかった。
そのおかげで悠樹は引越しの荷造りに集中でき、週の半ばにはほとんどの準備が完了していた。
漣は一日でも早く引っ越して欲しいようだったが、悠樹は準備がまだ出来てないなどと言いつつ、週末まで粘るつもりだった。
漣とともに暮らす生活は、まだ実感として沸いてこなかったが、それでも週末には新しい生活を始めなければいけないのだ。
「悠樹、漣くんのところに行ったら、ちゃんと家事も分担してやらないと駄目だぞ」
「漣くんは一人暮らしが長いから、何でもできそうだものね」
「うん……確かに料理も上手そうだよ。部屋もいつも綺麗にしてるし」
「漣くんに呆れられないようにしないといけないわね」
「まあ、悠樹にとっても良い経験になりそうだな」
リビングで父親や母親が笑っている姿を眺めながら、これで良かったのだと悠樹は自分に言い聞かせる。
取引のことは口が裂けても言わない。
それでいいのだ。



「引越し、明日だっけ?」
「ああ、うん」
淳平に言われて、そういえばそうだったと思い出す。
もう明日が引越しという段階になっても、あまり実感は沸かなかった。
「荷物運ぶのとか手伝おうか?」
「いや、もうほとんどの荷物は送ってるから大丈夫」
悠樹がそう言うと、淳平は少し考えてから悠樹に聞いてくる。
「引っ越しても遊びに行ったりしていいか?」
「え……あ、そ、それは……」
淳平の言葉に、悠樹は思わず口ごもる。
漣のマンションには何十畳もあるリビングと、漣が仕事で使う書斎、そしてベッドルームだ。しかしベッドルームはひとつしかない。
悠樹の部屋などというものは存在しないのだ。
そこに遊びに来て、淳平は何を思うだろう。
一緒に寝ていることが解った時点で、まず不審に思われるに違いない。
それに、あんな淫らなことをしている空間に淳平を招き入れるのは、何だかとても抵抗があった。
「悠樹?」
「あ、ごめん……漣兄さん、家でも仕事してることが多いから……遊びに来るのはちょっと無理かも」
「そっか」
「でも、学校帰りに遊びに行ったりとかは今まで通りだから。外で遊べばいいだろ」
「まあ、そうだな」
どことなく納得していないような様子だったけど、とりあえず話を何とかかわすことが出来て、悠樹はホッと息を吐く。
「悠樹さ……俺に何か隠してない?」
「え?隠してなんかないよ」
「そうか、それならいいんだけど」
淳平はそう言ったが、悠樹は胸が痛んだ。隠していることだらけだと知ったら、淳平はきっと呆れて悠樹から離れていってしまうに違いない。
本当は洗いざらい全部話してしまいたいけれど、そんなことをしたらしたで軽蔑されるに決まっている。
「引越しが落ち着いたら、また淳平の家にも遊びに行くよ」
苦し紛れにそう言うと、淳平は意外なほど嬉しそうな顔をした。
「ああ、そうだな。悠樹が来ると姉貴がうるさいけどな」
「え、そうなのか」
「カワイイカワイイってさ。男にカワイイなんて、褒め言葉でもなんでもないのにな」
「本当だな」
遊びに行くたびに、いろんなお菓子やら飲み物を持ってきてくれる淳平の姉、凛香の顔が思い浮かんだ。
いろいろと落ち着いたら、本当に久しぶりに淳平の家に遊びに行ってみよう。悠樹はそう思った。



引越しの当日は、いちおう漣が家に挨拶に来た。
荷物のほとんどは宅急便ですでに送りつけてあったので、悠樹はバッグをひとつだけ抱えて漣の車に乗り込むだけだった。
「漣くん、本当に家のこととか何も出来ない子だけど、よろしくね」
母の千里は漣に気遣うように言う。言われた漣のほうは好感度バツグンの微笑を浮かべて答える。
「やらないといけなくなると、きっと出来るようになりますよ」
「本当にそうだといいんだけど……悠樹もあまり漣くんに迷惑をかけないようにね」
「わかってるよ。そんなに昨日から何度も同じことを言わなくても……」
千里の言葉に悠樹はうんざりとため息を吐く。
「それじゃ、そろそろ行くね」
そう言うと、千里は少し寂しそうな顔をしたが、笑顔を作って息子を見送ろうとする。
その笑顔に悠樹は少しだけ泣きそうになったけど、それは何とか堪えた。
先に車に乗り込んだ漣の後を追って、助手席に滑り込む。すぐに車は動き出した。
背後を振り返ると、母とお手伝いの篠原が車が見えなくなるまで手を振っていた。
「寂しいのか?」
そんなことを聞かれて、悠樹は思わず苦笑いする。
「この年になって寂しいも何もないよ。もう18だもん」
「ふーん……」
何もかも見透かしたように笑って、漣は車の運転に集中する。
本当は寂しかったし、泣きそうになったなんてことは、死んでも口にするまいと悠樹は思った。



「久しぶりだな……」
信号待ちの交差点で、漣の手が悠樹の太ももの辺りを撫でていた。
「ちょ……何やってるんだよ!」
「一週間ぶりだろ?」
「な、何が!?」
「セックスするのが」
「そ、そうだっけ……」
とぼけて答えている間にも、漣の手は悠樹のきわどい部分を撫でている。
Gパンの生地を通して伝わってくる漣の手の感触は、かえってもどかしくて、何だか妙な気分にさせられる。
「し、信号変わったよ」
悠樹がそう言うと、とりあえず手は離れていった。
けれどもまた信号に捕まると、まるで自分の手の感触を思い出させようとするかのように、執拗に悠樹の両足の合間に触れてくる。
「だから……車の中ではやめて……」
「別に外から見える位置でもないだろ」
「それでも……見えたらどうするんだよ?」
「見せ付けてやればいいさ」
「俺……そんな変態趣味ないよ」
「こんなふうになってるのに?」
漣の手は硬く盛り上がってしまったその部分の形をなぞるように蠢いていく。
確かに悠樹のモノは、まるで待っていたかのように、漣の手の動きに反応してしまっている。
「そ、それは生理的反応っていうやつでッ!」
「言葉なんかより、体のほうがずっと正直だな」
また信号が変わって車は動き出し、悠樹はとりあえず漣の手から解放される。
体のほうが正直……か。
悠樹はそう思いながら、いったい体と心と、どれが自分の本心なのだろうと思った。
もちろん、心に決まってる。すぐにそう思い直したのだけれど。
漣に中途半端に弄られた体が火照って苦しかった。
漣が触れていない間も、まるで焚き火がくすぶってるみたいに、チリチリと何かが燃えてるみたいな感じがする。
「部屋に着いたら、すぐに楽にしてやるよ」
漣はまるですべてを見透かしているかのように、悠樹の耳元でそう囁いた。
荷物を片付けたりするその前に、あの激しく熱い行為が行なわれるのかと思うと、悠樹はわけも解らずに胸が高鳴るのを感じた。



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EDIT [2011/06/30 09:31] Breath <1> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/06/30 21:48] EDIT
>シークレットさん

いつも感想ありがとうございます!
とっても励みになっております♪
どんな生活が待っているのでしょうね(笑)
部屋はたとえ余っていても、漣が与えない気がします(笑)
そんなドSな漣に負けず劣らず悠樹も隠れドSなので、今後の攻防が自分でも楽しみだったりします^^

また頑張って更新していきますので、ぜひ読みに来てもらえると嬉しいです♪
[2011/07/01 07:18] EDIT
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